気まぐれシネマレビュー

戸影絵麻

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#40 【ドラマ部門】 フルーツ宅配便

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【あらすじ】
 就職した会社が倒産し、故郷に帰ってきた咲田(濱田岳)は、ひょんなことからデリバリーヘルス『フルーツ宅配便』で店長見習いとして働くことになり、そこでさまざまな事情を抱えて生きるデリヘル嬢たちと出会うことになるー。
 というお話。

 全12話に登場する12人の女性たちの源氏名は、みな果物の名前。ところがその生活たるや、元DV夫の残した2000万円の借金を返すため風俗で働かざるをえなくなったなど、どれも悲惨なもの。幼い子供を育てるシングルマザーも多く、登場人物のひとりが、新しいマンションに転居しようとして、「風俗だからだめ」と断られ、「私たち、そんなに悪いことしてるのかなあ」とつぶやくシーンなど、リアルで重いストーリーばかりです。
 ただ、救いなのは、主人公咲田をはじめとする、フルーツ宅配便のメンバー達の温かさ。
 非力ながら聞き上手の咲田、ふだんはおにぎりばかり食べていてなんでここにいるのか不明なヌボーっとした大男だけれども、いざ女の子たちが危険な目に遭うと、現場に駆けつけて超常的な強さを発揮するマサカネ(荒川良々)、なんだかんだといいながら、警察にもツテがあり、元巨人軍の元木とも仲良しで、最後にはとっても頼りになる経営者ミスジ(松尾スズキ)の面々。こんな風俗なら働いてもいいかなあ、と女性視聴者が勘違いしそうなほど、いい職場です。

 個人的にツボにはまったのが、源氏名レモンこと北原里英。この子だけ、唯一恋人を見つけて寿退社となるわけですが、そのキャラクター造形が面白かった。視力0.05と0.06というド近眼のため、いつも分厚い眼鏡をかけている一見文学少女タイプで、趣味は『カラマーゾフの兄弟』の上巻を繰り返し読むこと。仲間たちが整形の話で盛り上がっている時、「私も整形したい」と言い出し、「どこを?」と訊かれると、「額に3番目の眼をつけたい」などと謎のようなことを口走る。初の公園デートでは、滑り台のてっぺんでひとりカラマーゾフの兄弟を演じ、子連れのお父さんから拍手をもらう、等々、辛い話が多いなか、唯一浮世離れしていて微笑ましかったです。
 この人、元AKBだかNGTだかの有名なアイドルだそうですが、アイドルらしからぬ三つ編みメガネっ子オタク少女を好演していて、いい役者さんになれるんじゃないかと感心した次第。
 
 派手派手しく宣伝しているゴールデンタイムのドラマより、こうした深夜ドラマやNHKドラマのほうに良作が多い気がするのは、私だけではないと思います。
  
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