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#39 謎の美少女転校生 ~まく子~
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【あらすじ】
小さな温泉街(四万温泉ー群馬県か?)に住む小学生5年生のサトシは、子どもから大人への成長期。女にだらしなく、現に浮気もしている父(草彅剛)に反発している。だから、大人に近づく自分の身体の変化に時に苛立ったりするのだが…そこにある日、コズエ(新音)という不思議な少女が転校してくる。サトシよりずっと背が高く、美人で大人びたコズエは、母親とともにサトシの母の経営する温泉旅館に住みこむことになる。ところが、彼女にはとんでもない秘密があった……。
ちなみにタイトルの「まく子」とは、なんでも撒きたがるヒロイン、コズエのこと。コズエは「撒かれたものは、落ちるから楽しい」と言います。どうやらこれは、「生きること」はその先に「死」があってこそ楽しいのだ、という寓意を込めた言葉のようですが…(ただし、劇中では「まく子」なるニックネームは出てきません)。
西加奈子原作の児童文学の映画化です。原作未読。
いわゆる美少女転校生もののひとつでしょうか。
事実、モデル出身という新音演じるコズエの存在感は破壊的。小学校に突如として美人女子高生が転校してきたようなもので、そのエキゾチックな風貌といい、伸びやかな肢体といい、主人公のサトシのみならず、とにかく周囲の子どもたちとのギャップが半端ない。
自分は土星の近くにある星から来た宇宙人で、”死”を観察するために地球にやってきたのだと真面目に話す彼女は、実は本当に地球外生命体。学校の図工の時間に立体自画像をつくる課題が出され、コズエが作る作品は妙にリアルで笑えるし、彼女の口から語られる不死の種族の物語はなかなか興味深いものであったりします。
ただ、なんというか、全体的になんとも中途半端な印象は否めません。ジュブナイルならではの冒険もカタルシスもなく、かといって父やその愛人にからんだ人間ドラマが描かれるわけでもない。いじめっぽいエピソードも少し出てはくるものの、それが特にコズエにからむこともなく、盛り上がりに欠けるまま淡々とドラマは進んでいきます。主人公のサトシが夢精をするシーンなどもありますが、その時見るコズエの夢が特にエロチックなものでもなんでもないので、いまいちリアリティに欠けるというか…。だいたい、地球外生命体であるコズエは、地球に「死」を観察するためにやってきたはずなのに、劇中、じいさんばあさんはおろか、猫の子一匹死なないのはどういうことなのか…。
そういうわけなので、ラストでコズエ母子が自分の星に帰るシーンも、町中の人々を呼び集めた割には特別に何の癒しにもなっておらず(そもそも、その前に苦悩や痛みが描かれていなければ、癒しなど存在しようがない)、『誰もが癒される』というあのキャッチコピーはいったいなんだったのだろうと最後まで謎でした。
私の好きなジュブナイルに、山中恒の『ぼくがぼくであること』というのがあります。教育ママに嫌気がさして家出した主人公の少年が、路駐していた軽トラックの荷台に隠れているうちに眠ってしまい、気がつくと車は走行中、しかも、運転席からは殺人の計画が聞こえてきて…。あわててトラックから逃げ出すと、そこは山の中。そこで少年は、同じ年頃のおとなびた少女夏代と出会い、彼女と彼女の祖父の住む家に泊めてもらうことになり…。
夏代の家で暮らすうちに、主人公は戦国武将の秘宝をめぐる波乱万丈の事件に巻き込まれ、物語はお決まりの成長物語へと向かっていくわけですが、せめてこの『まく子』にも、そんなハラハラドキドキの要素があったらなあと思います。
ヒロイン役の新音と、ダメ親父役の草彅剛が素晴らしいだけに、本当に残念。
『ペンギンハイウェイ』もそうだったけど、途中までは面白く、雰囲気もいいのに、後半なぜかグダグダに…というのが最近多いな、というのが正直な感想です。
ちょっとミステリアスでわくわくした気分になれる、そんなすっきり爽快な少年少女ものが見たいです。
小さな温泉街(四万温泉ー群馬県か?)に住む小学生5年生のサトシは、子どもから大人への成長期。女にだらしなく、現に浮気もしている父(草彅剛)に反発している。だから、大人に近づく自分の身体の変化に時に苛立ったりするのだが…そこにある日、コズエ(新音)という不思議な少女が転校してくる。サトシよりずっと背が高く、美人で大人びたコズエは、母親とともにサトシの母の経営する温泉旅館に住みこむことになる。ところが、彼女にはとんでもない秘密があった……。
ちなみにタイトルの「まく子」とは、なんでも撒きたがるヒロイン、コズエのこと。コズエは「撒かれたものは、落ちるから楽しい」と言います。どうやらこれは、「生きること」はその先に「死」があってこそ楽しいのだ、という寓意を込めた言葉のようですが…(ただし、劇中では「まく子」なるニックネームは出てきません)。
西加奈子原作の児童文学の映画化です。原作未読。
いわゆる美少女転校生もののひとつでしょうか。
事実、モデル出身という新音演じるコズエの存在感は破壊的。小学校に突如として美人女子高生が転校してきたようなもので、そのエキゾチックな風貌といい、伸びやかな肢体といい、主人公のサトシのみならず、とにかく周囲の子どもたちとのギャップが半端ない。
自分は土星の近くにある星から来た宇宙人で、”死”を観察するために地球にやってきたのだと真面目に話す彼女は、実は本当に地球外生命体。学校の図工の時間に立体自画像をつくる課題が出され、コズエが作る作品は妙にリアルで笑えるし、彼女の口から語られる不死の種族の物語はなかなか興味深いものであったりします。
ただ、なんというか、全体的になんとも中途半端な印象は否めません。ジュブナイルならではの冒険もカタルシスもなく、かといって父やその愛人にからんだ人間ドラマが描かれるわけでもない。いじめっぽいエピソードも少し出てはくるものの、それが特にコズエにからむこともなく、盛り上がりに欠けるまま淡々とドラマは進んでいきます。主人公のサトシが夢精をするシーンなどもありますが、その時見るコズエの夢が特にエロチックなものでもなんでもないので、いまいちリアリティに欠けるというか…。だいたい、地球外生命体であるコズエは、地球に「死」を観察するためにやってきたはずなのに、劇中、じいさんばあさんはおろか、猫の子一匹死なないのはどういうことなのか…。
そういうわけなので、ラストでコズエ母子が自分の星に帰るシーンも、町中の人々を呼び集めた割には特別に何の癒しにもなっておらず(そもそも、その前に苦悩や痛みが描かれていなければ、癒しなど存在しようがない)、『誰もが癒される』というあのキャッチコピーはいったいなんだったのだろうと最後まで謎でした。
私の好きなジュブナイルに、山中恒の『ぼくがぼくであること』というのがあります。教育ママに嫌気がさして家出した主人公の少年が、路駐していた軽トラックの荷台に隠れているうちに眠ってしまい、気がつくと車は走行中、しかも、運転席からは殺人の計画が聞こえてきて…。あわててトラックから逃げ出すと、そこは山の中。そこで少年は、同じ年頃のおとなびた少女夏代と出会い、彼女と彼女の祖父の住む家に泊めてもらうことになり…。
夏代の家で暮らすうちに、主人公は戦国武将の秘宝をめぐる波乱万丈の事件に巻き込まれ、物語はお決まりの成長物語へと向かっていくわけですが、せめてこの『まく子』にも、そんなハラハラドキドキの要素があったらなあと思います。
ヒロイン役の新音と、ダメ親父役の草彅剛が素晴らしいだけに、本当に残念。
『ペンギンハイウェイ』もそうだったけど、途中までは面白く、雰囲気もいいのに、後半なぜかグダグダに…というのが最近多いな、というのが正直な感想です。
ちょっとミステリアスでわくわくした気分になれる、そんなすっきり爽快な少年少女ものが見たいです。
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