気まぐれシネマレビュー

戸影絵麻

文字の大きさ
上 下
28 / 211

#27 罪は消えない? ~友罪~

しおりを挟む
 酒鬼薔薇聖斗事件をモチーフにした、とにかく重い映画です。
 ある町工場に、ふたりの青年が試採用されます。
 雑誌記者をリタイヤした増田君(生田斗真)と、寡黙で謎めいた青年、鈴木君(瑛太)のふたりです。
 近所で子どもの惨殺事件が発生したことから、増田君は鈴木君に疑いの目を向け始め…。
 というのがメインのお話で、そこに息子の交通事故で一家離散の憂き目にあったタクシー運転手(佐藤浩市)、彼の息子で若い頃無免許運転で3人の子供の命を奪いながら、最近彼女ができ、結婚しようとしている青年、高卒で東京に出てきて、恋人にだまされてAVの世界に足をつっこんだクレーム処理係の若い女(夏帆)、過去に鈴木君を更生させようとした挙句、実の娘をないがしろにしてしまい、今も恨まれている養護施設職員の女性(富田靖子)、増田君の元カノで小学生殺人事件を追う女性雑誌ライター(山本美月)などが絡み、事態はカオスの様相を呈していくのですが…。
 結論を言えば、登場人物たちは誰もが過去に罪を背負い、今もそれに苦しめられていること。
 そして、その罪はいつか許される時がくるのかどうかということ。
 その重い判断を、見る者に投げかけてくる作品だということです。
 鈴木君は、過去に何人もの子供の命を奪った快楽殺人者ですが、現在はその罪の意識に苛まれ、なんとかまっとうに生きようともがいています。
 一方の増田君は、中学生の頃、いじめられっ子の友人を土壇場で突き放し、自殺に追い込んだという経験がトラウマとなり、今もその友人の家に通いながら懺悔をするという毎日です。
 最終的に増田君は、自分のミスで正体がバレ、行方をくらました鈴木君を探すべく旅に出ます。
「今度こそ友人を死なせたくないから」とつぶやきながら。

 さて、問題は、ここからです。
 何人もの子供の命を自分の快楽のため奪ったという鈴木君の過去の罪。
 たとえそれが思春期の気まぐれから行われた一過性の殺人だとしても、それは赦すことのできるものなのかどうかということ。
 増田君は許すほうに舵を取るわけですが、そしてそれがこの映画のラストにおける唯一の光明に見えるのですが、でもそれってどうなのでしょうか?

 全編を通してむかつく映画ですが、ちなみに私がいちばん腹が立ったのは、増田君のスマホから鈴木君の動画を勝手にメールに貼りつけて編集部に送っていた元カノの山本美月。
「あんた、可愛い顔してそれは人間としてどうなの?」
 と思わず言いたくなりました。
 半面、哀れでならないのは鈴木君に一時好意を抱き、正体を知って逃げ出す夏帆演じるところの女の子。自業自得の面もあるでしょうけど、この子の人生、もう少しなんとかならなかったのでしょうかね。
 
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...