気まぐれシネマレビュー

戸影絵麻

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#3 そこは削らないでほしかった ~来る~

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 ホラー大賞の「ぼぎわんが来る」の映画化です。

 前半はけっこう原作に忠実に話が進みます。

 田舎の宴会で年寄りたちが妖怪について語り合う場面など、リアルで非常にいい雰囲気です。

 自然体で妻を追い詰めていくイクメンパパも、追い詰められておかしくなっていく妻も、ぼぎわんにけなげに立ち向かっていく風俗嬢兼霊媒師の女の子も、その姉で日本最強の霊能者である琴子も、みんな原作のイメージに近く、かなり期待がもてる滑り出しだったのですが…ある部分がすっぽり抜け落ちているため、きわめて残念な結果に終わってしまった気がします。

 この原作で一番の読みどころは、「ぼぎわん」とは何か、です。ネーミングの由来もさることながら、ミステリの手法でその謎の答えにたどり着く、その過程が面白かったはず。なのに、映画には、そこが一切描かれない。これは「リング」の映画化の時にも感じたこと。「リング」のだいご味のひとつは、「謎のビデオに時折入るブラックアウトは何を意味するのか」という疑問から、「これはひょっとしたら”まばたき”で、映像自体が能力者の目から見た光景をテープに念写したものではないか」なる結論に到達するところです。でも、映画ではそこはカットされてました。「アナザヘブン」もそう。後半の「水槽はなぜ割られていたのか」というダイイングメッセージは、あっさり無視。それこそが犯人の正体を暗示する重要な手がかりだったのに…。

 ホラーだから、論理なんて無駄なもの。そんな意見もあるかもしれませんが、どれもミステリの手法をうまく生かした傑作ばかりなだけに、尚更残念な気がします。

 なお、この「来る」にも、「全然怖くない」という意見が殺到していましたが、その人たちが「怖い」と感じるホラー映画って何なのか、一度訊いてみたい気がします。
 まさか、白塗りのパンツ一丁の子どもが出てくるアレだなんて言わないですよね。


 
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