上 下
419 / 471
第6章 ネオ・チャイナの野望

#13 鬼岩城⑧

しおりを挟む
 戦いは始まっていた。

 急に寡黙になった二体の鬼が、じりじりと間合いを詰めてくる。

 先に動いたのは、前鬼だった。

 地面を蹴ると、長い右腕を伸ばしてルビイにつかみかかったのだ。

 女が相手ということで、無意識のうちに隙が生じたのかもしれなかった。

 無造作に伸ばされた腕の下で、わき腹はがら空きになる。

 一歩踏み込むと、ルビイは姿勢を低くして、素早く腰をひねった。

 地面すれすれの位置から右足が旋回し、強力な回し蹴りを前鬼の腹部に叩き込む。

「ぐえっ」

 唾を飛ばして、前鬼がうめいた。

 が、さすが、首領の側近だけのことはある。

 増殖したナノマシンで強化されたルビイの回し蹴りをまともに喰らっても、前鬼は倒れない。 

 逆に、引き戻そうとしたルビイの右足を抱え込むと、そのまま床にねじり伏せようと全体重をかけてきた。

 足元に引きずり込まれたルビイの躰がひねられ、うつぶせになる。

 そのくびれた腰を踏みつけようと前鬼が足を上げた瞬間、垂直に繰り出したルビイの前蹴りが巨人の鼻っ柱にヒットした。

「ぐおっ」

 鼻血を噴き出し、顏を押さえてのけぞる前鬼。

 チャンスだった。

 流れるような動作で跳ね起きると、ルビイは前鬼の背後に回った。

 大きくジャンプすると、太い首筋を右の肘で強打する。

 更に高く右足を振り上げると、振り子の要領で前のめりになった前鬼の頭頂部に渾身の踵落としを叩き込んだ。

 血反吐を吐いて、前鬼が床に崩れ落ちる。

「なかなかやるな」

 ニヤニヤ笑いを顔に貼りつけ、後鬼が言った。

「人間の女のくせに、おもしれえ」

「残りはあなたひとり。どこからでもかかってきなさいよ」

 形のいい乳房を上下させて、ルビイは言い返した。

 これなら勝てる。

 まったく負ける気がしない。

 新しい手足は絶好調だった。

 義主義足の数倍スピードが出るし、破壊力もけた違いだ。

 が、数秒で赤鬼を屠ったことで、ルビイは少し有頂天になりすぎていたようだ。

「まだ終わっちゃいねえよ」

 思いもよらぬ方向から声がしたかと思うと、両足首を万力のような手でつかまれた。

「手加減してりゃ、いい気になりやがって」

 前鬼だった。

 床に伸びたはずの前鬼が、いつのまにかルビイの足元にまで這い進み、だしぬけに足首をつかんだのだ。

「くそ、もう頭にきたぜ。このアマ、今に見てやがれ! 気が狂うまで犯しまくって、足腰の立たねえようにしてやるからな」

 怪力にものを言わせてルビイを床にひきずり倒すと、むっくりと身体を起こして、ぎりぎりと歯軋りしながら前鬼が言った。
 
 

しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...