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第4章 洞窟都市グロッタ
#49 黄金都市の秘密⑳
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終焉は、何の前触れもなく、突然やってきた。
エリスの起こす津波に何度押し流されても立ち上がり、蟻の大群のように押し寄せてきていた機械人形たちー。
その群れが、いちどきにぱたりと動きを止めたのだ。
「どうなってるんだ?」
額の汗を手甲で拭って、アニムスはつぶやいた。
眼下の路上では、さまざまなポーズをとった住民たちが、あちらこちらでマネキン人形よろしく固まっている。
アニムス自身、階段を登ってきたオークの機械人形と短剣で切り結んでいる最中だった。
アニムスの攻撃をその鋼鉄の外殻で跳ね返し、力で押してきていたそのオークも同様である。
獰猛な牙を剥き、長い両腕を頭上に振り上げた状態で、凍りついたように動かなくなってしまっているのだ。
「ルビイか。ルビイがアダムとイブを、倒したのか?」
ホールの入口のほうを振り仰いで、マグナが言った。
「助かりましたあ」
へなへなとその場に坐り込んだのは、エリスである。
「もう、魔力はゼロですし、おっぱいは腫れちゃうしで、エリス、どうしようかと…」
「ごめんなさい。ちょっと長い時間、揉み過ぎました」
サトがエリスを助け起こした。
「行ってみましょう。ルビイさまの身が心配です」
アニマの手を引いて、階段を上がった。
アニマも彼女なりに機械人形たちと戦ったせいで、かなり憔悴しているようだ。
階段を登る足取りが、いつになくたどたどしい。
市政庁のホールに入ると、やはり中でも機械人形たちはすべて動作を停止していた。
ルビイが予想したように、このグロッタの住民は皆、アダムかイブに遠隔操作されていたということなのか。
その中枢の2体をルビイが倒したため、指令が届かなくなってしまったと、そういうことなのだろう。
豪奢なホールの中央部には、吹き抜けの2階に上がる階段があった。
その突き当りの扉が開いているところから見て、ルビイはここを上がってあの部屋を目指したらしい。
「ルビイ、大丈夫か? 助けに来てやったぞ! ありがたく思え!」
軽口を叩きながら部屋に飛び込もうとしたアニムスだったが、あることに気づいて入口でギクッと足を止めた。
「なんだ、この匂い…?」
錆びた鉄のような、それでいて、妙に生臭い…。
こ、これは…?
「ルビイ、みんな来たよ!」
脇をすり抜けて中に駆けこもうとしたアニマを、アニムスはとっさに引き留めた。
「ダメだ! 入るんじゃない!」
「な、何すんだよ!」
勢い余って通廊に転がったアニマが、甲高い声でアニムスに噛みついた。
「いいからガキはそこで待ってろ!」
「兄貴だって、十分ガキじゃない!」
「どうした?」
そこに、マグナとエリスに肩を貸したサトが追いついてきた。
「中の様子が変だ。おいら、すっげえ嫌な予感がする」
「なるほど」
巨大な鷲鼻の鼻孔をふくらませて、マグナがひとりごちた。
「この匂い…間違いなく、血だ」
エリスの起こす津波に何度押し流されても立ち上がり、蟻の大群のように押し寄せてきていた機械人形たちー。
その群れが、いちどきにぱたりと動きを止めたのだ。
「どうなってるんだ?」
額の汗を手甲で拭って、アニムスはつぶやいた。
眼下の路上では、さまざまなポーズをとった住民たちが、あちらこちらでマネキン人形よろしく固まっている。
アニムス自身、階段を登ってきたオークの機械人形と短剣で切り結んでいる最中だった。
アニムスの攻撃をその鋼鉄の外殻で跳ね返し、力で押してきていたそのオークも同様である。
獰猛な牙を剥き、長い両腕を頭上に振り上げた状態で、凍りついたように動かなくなってしまっているのだ。
「ルビイか。ルビイがアダムとイブを、倒したのか?」
ホールの入口のほうを振り仰いで、マグナが言った。
「助かりましたあ」
へなへなとその場に坐り込んだのは、エリスである。
「もう、魔力はゼロですし、おっぱいは腫れちゃうしで、エリス、どうしようかと…」
「ごめんなさい。ちょっと長い時間、揉み過ぎました」
サトがエリスを助け起こした。
「行ってみましょう。ルビイさまの身が心配です」
アニマの手を引いて、階段を上がった。
アニマも彼女なりに機械人形たちと戦ったせいで、かなり憔悴しているようだ。
階段を登る足取りが、いつになくたどたどしい。
市政庁のホールに入ると、やはり中でも機械人形たちはすべて動作を停止していた。
ルビイが予想したように、このグロッタの住民は皆、アダムかイブに遠隔操作されていたということなのか。
その中枢の2体をルビイが倒したため、指令が届かなくなってしまったと、そういうことなのだろう。
豪奢なホールの中央部には、吹き抜けの2階に上がる階段があった。
その突き当りの扉が開いているところから見て、ルビイはここを上がってあの部屋を目指したらしい。
「ルビイ、大丈夫か? 助けに来てやったぞ! ありがたく思え!」
軽口を叩きながら部屋に飛び込もうとしたアニムスだったが、あることに気づいて入口でギクッと足を止めた。
「なんだ、この匂い…?」
錆びた鉄のような、それでいて、妙に生臭い…。
こ、これは…?
「ルビイ、みんな来たよ!」
脇をすり抜けて中に駆けこもうとしたアニマを、アニムスはとっさに引き留めた。
「ダメだ! 入るんじゃない!」
「な、何すんだよ!」
勢い余って通廊に転がったアニマが、甲高い声でアニムスに噛みついた。
「いいからガキはそこで待ってろ!」
「兄貴だって、十分ガキじゃない!」
「どうした?」
そこに、マグナとエリスに肩を貸したサトが追いついてきた。
「中の様子が変だ。おいら、すっげえ嫌な予感がする」
「なるほど」
巨大な鷲鼻の鼻孔をふくらませて、マグナがひとりごちた。
「この匂い…間違いなく、血だ」
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