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第4章 洞窟都市グロッタ
#9 呪われた土地④
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アニマが引っ込むと、ルビイの背に身を寄せていたサトが、薄闇に眼を凝らしながら小声で言った。
「確かに、岩と岩の間を黒い影みたいなものが・・・だんだん間を縮めてくるようです」
「魔狼か・・・。20年前の討伐戦でも何度か戦ったけど、面倒な相手に絡まれたわね」
魔狼は、狼族にふさわしく、巨体の割に敏捷である。
しかも群れで行動するため、一度周囲を囲まれると、よほどの僥倖がない限り、脱出が難しい。
敵の攻撃が速すぎて、弓にしろ長槍にしろ、こちらの武器が当たらないのだ。
「それにしても、速度を落とせだなんて、アニムスは何を考えているのでしょう?」
不安そうなサトに、ルビイは言った。
「信じてみましょう。仲間の腕を」
スロットルを緩め、地面を這うような低速走行に切り替えた。
こちらが速度を落としたことに気づいたのか、影たちの動きが大胆になってきた。
岩場から姿を現し、複数の魔狼が轟天号に迫ってくる。
両側を並走すると見せかけながら、徐々に近づいてくるのだ。
風に運ばれた獣の匂いが鼻をつく。
長い針でできたようなたてがみの中で、瞳孔のない真っ白な眼が光る。
耳まで裂けた口からよだれを垂らし、魔狼が轟天号の本体すれすれを走っている。
轟天号の装甲は鋼鉄製だからすぐにどうこうということはないだろうが、下にもぐりこまれると厄介だ。
床には木製の部分もあり、そこを突き破られたら中の者たちはただでは済まないだろう。
魔狼の体当たりを受け、車体が揺らいだ。
サトが小さく悲鳴を上げて、ルビイの背にしがみつく。
ここで車体をひっくり返されたらー。
そう思うと、さすがのルビイも落ち着いてはいられない。
アニムス、どうするの?
心の中で、思わずそう問いかけた時だった。
「死にやがれ!」
当のアニムスの声が響き渡ったかと思うと、意外なことが起こった。
ドスッ。
轟天号の脇腹からだしぬけに左右4本ずつの槍が突き出し、並走する魔狼たちを一息に串刺しにしたのである。
鋭い槍に首を貫通され、血反吐を吐いて倒れ込む魔獣たち。
「隊長、止めてくれ」
今度はマグナのドスの効いた声がした。
「あとはうちらで始末する」
「確かに、岩と岩の間を黒い影みたいなものが・・・だんだん間を縮めてくるようです」
「魔狼か・・・。20年前の討伐戦でも何度か戦ったけど、面倒な相手に絡まれたわね」
魔狼は、狼族にふさわしく、巨体の割に敏捷である。
しかも群れで行動するため、一度周囲を囲まれると、よほどの僥倖がない限り、脱出が難しい。
敵の攻撃が速すぎて、弓にしろ長槍にしろ、こちらの武器が当たらないのだ。
「それにしても、速度を落とせだなんて、アニムスは何を考えているのでしょう?」
不安そうなサトに、ルビイは言った。
「信じてみましょう。仲間の腕を」
スロットルを緩め、地面を這うような低速走行に切り替えた。
こちらが速度を落としたことに気づいたのか、影たちの動きが大胆になってきた。
岩場から姿を現し、複数の魔狼が轟天号に迫ってくる。
両側を並走すると見せかけながら、徐々に近づいてくるのだ。
風に運ばれた獣の匂いが鼻をつく。
長い針でできたようなたてがみの中で、瞳孔のない真っ白な眼が光る。
耳まで裂けた口からよだれを垂らし、魔狼が轟天号の本体すれすれを走っている。
轟天号の装甲は鋼鉄製だからすぐにどうこうということはないだろうが、下にもぐりこまれると厄介だ。
床には木製の部分もあり、そこを突き破られたら中の者たちはただでは済まないだろう。
魔狼の体当たりを受け、車体が揺らいだ。
サトが小さく悲鳴を上げて、ルビイの背にしがみつく。
ここで車体をひっくり返されたらー。
そう思うと、さすがのルビイも落ち着いてはいられない。
アニムス、どうするの?
心の中で、思わずそう問いかけた時だった。
「死にやがれ!」
当のアニムスの声が響き渡ったかと思うと、意外なことが起こった。
ドスッ。
轟天号の脇腹からだしぬけに左右4本ずつの槍が突き出し、並走する魔狼たちを一息に串刺しにしたのである。
鋭い槍に首を貫通され、血反吐を吐いて倒れ込む魔獣たち。
「隊長、止めてくれ」
今度はマグナのドスの効いた声がした。
「あとはうちらで始末する」
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