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第4章 洞窟都市グロッタ
#4 出陣④
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「帰ったら、また遊んでやらないとね」
スロットルを吹かしながら、ルビイは言った。
マリウスを弄るのは、面白い。
執政官として公で見せる顏と、真夜中の寝室で見せる顔のギャップがたまらないのだ。
マリウスは着痩せするたちで、裸になると意外に逞しい身体つきをしている。
その筋肉質の身体にサトの鞭が入った時の、苦悶と恍惚の表情を浮かべた顔がルビイは好きだ。
いずれはあの男とセックスする時がくるかもしれない。
子宮の奥にくすぶる熾火に気づいて、ルビイは思う。
20年前、魔王から受けた辱めのせいで、ルビイは男が信用できなくなっている。
ならばこの思いこそが私の愛。
堕落させた男と最後に交わすセックスは、さぞかし気持ちのいいものに違いないー。
そんな思いに囚われて、しばし我を忘れていた時だった。
「ルビイさま、止めてください」
妙に緊迫した声音で、サトが言った。
「前方に、障害物を発見しました」
「障害物?」
はっと顔を上げたルビイは、そこで思わず息を呑みこんだ。
かなり先のほうに、行く手を遮るように黒い壁が東西に伸びている。
目を凝らすと、見えてきた。
壁などではない。
百騎にも及ぼうかという、大規模な騎馬部隊だ。
砂埃を立てて、先頭の二騎がこちらに向かってくる。
片手に盾を持ち、羽飾りのついた青い兜をかぶっている。
轟天号を停車させると、ルビイは鉄馬のシートから下りた。
短い胴着に短い下履きを穿いただけのルビイは、手も足も剥き出しで、一見無防備に見える。
が、背中には大剣を、両手には鋼鉄のナックルを嵌めている。
「怪しいやつだな。なんだ、その見たこともない乗り物は。きさま、名を名乗れ」
すぐ前まで来ると、馬上から髭もじゃの男が横柄に声をかけてきた。
「私はルビイ=スナフキン。ミネルヴァの特殊部隊を率いている。そういう貴殿こそ、何者なのだ?」
ルビイの返事に、髭男がせせら笑うように鼻を鳴らした。
「ミネルヴァは知っておるが、特殊部隊なぞ、聞いたこともない。だいたい、よく見れば、貴様、女じゃないか。ミネルヴァでは、女などに舞台を任せるというのか」
「そういう貴殿は誰かと聞いている」
ルビイは腰を低め、右足を蹴り出すと素早く身体を反転させた。
くるぶしの横から刃が現れ、旋回した長い脚が馬の前脚を叩き切る。
「ぐああっ!」
転倒した馬から転げ落ちた髭男の腹を、ブーツの底で踏みつけた。
「きさまあっ! よくも!」
叫びながら、もうひとりの男が馬の上から槍を突き出してきた。
が、いともた易く、逆手に持った大剣で跳ね返す。
「どうしたんだよ、ルビイ。もう着いたのか?」
と、そこに間延びしたアニムスの声がして、残りのメンバーたちが客車からぞろぞろ降りてきた。
「みんな、ちょうどいい。この無礼者たちに、私たちの力を見せてやれ」
全員出そろうと、もう一度ギリっと男の脂肪でたるんだ腹を踏みつけて、冷ややかな声でルビイは言った。
スロットルを吹かしながら、ルビイは言った。
マリウスを弄るのは、面白い。
執政官として公で見せる顏と、真夜中の寝室で見せる顔のギャップがたまらないのだ。
マリウスは着痩せするたちで、裸になると意外に逞しい身体つきをしている。
その筋肉質の身体にサトの鞭が入った時の、苦悶と恍惚の表情を浮かべた顔がルビイは好きだ。
いずれはあの男とセックスする時がくるかもしれない。
子宮の奥にくすぶる熾火に気づいて、ルビイは思う。
20年前、魔王から受けた辱めのせいで、ルビイは男が信用できなくなっている。
ならばこの思いこそが私の愛。
堕落させた男と最後に交わすセックスは、さぞかし気持ちのいいものに違いないー。
そんな思いに囚われて、しばし我を忘れていた時だった。
「ルビイさま、止めてください」
妙に緊迫した声音で、サトが言った。
「前方に、障害物を発見しました」
「障害物?」
はっと顔を上げたルビイは、そこで思わず息を呑みこんだ。
かなり先のほうに、行く手を遮るように黒い壁が東西に伸びている。
目を凝らすと、見えてきた。
壁などではない。
百騎にも及ぼうかという、大規模な騎馬部隊だ。
砂埃を立てて、先頭の二騎がこちらに向かってくる。
片手に盾を持ち、羽飾りのついた青い兜をかぶっている。
轟天号を停車させると、ルビイは鉄馬のシートから下りた。
短い胴着に短い下履きを穿いただけのルビイは、手も足も剥き出しで、一見無防備に見える。
が、背中には大剣を、両手には鋼鉄のナックルを嵌めている。
「怪しいやつだな。なんだ、その見たこともない乗り物は。きさま、名を名乗れ」
すぐ前まで来ると、馬上から髭もじゃの男が横柄に声をかけてきた。
「私はルビイ=スナフキン。ミネルヴァの特殊部隊を率いている。そういう貴殿こそ、何者なのだ?」
ルビイの返事に、髭男がせせら笑うように鼻を鳴らした。
「ミネルヴァは知っておるが、特殊部隊なぞ、聞いたこともない。だいたい、よく見れば、貴様、女じゃないか。ミネルヴァでは、女などに舞台を任せるというのか」
「そういう貴殿は誰かと聞いている」
ルビイは腰を低め、右足を蹴り出すと素早く身体を反転させた。
くるぶしの横から刃が現れ、旋回した長い脚が馬の前脚を叩き切る。
「ぐああっ!」
転倒した馬から転げ落ちた髭男の腹を、ブーツの底で踏みつけた。
「きさまあっ! よくも!」
叫びながら、もうひとりの男が馬の上から槍を突き出してきた。
が、いともた易く、逆手に持った大剣で跳ね返す。
「どうしたんだよ、ルビイ。もう着いたのか?」
と、そこに間延びしたアニムスの声がして、残りのメンバーたちが客車からぞろぞろ降りてきた。
「みんな、ちょうどいい。この無礼者たちに、私たちの力を見せてやれ」
全員出そろうと、もう一度ギリっと男の脂肪でたるんだ腹を踏みつけて、冷ややかな声でルビイは言った。
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