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第2章 跪いて足をお舐め
#65 愛と性のファシズム⑥
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場内は、相変わらず墓場のように静まり返っている。
すり鉢型の観客席を締めているのは、正装に着飾った貴族階級の者がほとんどだ。
その誰もが今や半ば腰を浮かし、上体を乗り出してルリたちのほうを見下ろしているのだ。
まるで時間が止まってしまったかのようだった。
「よかったのですか? これで」
温かいものが腰に触れ、振り返るとすぐ後ろにメイド服姿のサトが佇んでいた。
「サト…。どうしたの?」
驚いて、ルビイは目を見開いた。
「審判長が言ってましたよね。おまえ、殺されるぞって」
ほとんど口を動かさず、サトが言った。
「ならば、いっそのこと、サトも冥土にお供しようかと」
「なに言ってるの」
ルビイは笑い飛ばした。
「私がそんなに簡単につかまると思う?」
油断なく、コロシアムのふたつの出入り口に目を配る。
処刑人はおそらく王宮直属の近衛兵団だろう。
副団長のアギを倒されたからには、ルビイに対する憎しみの度合いは相当なものに違いない。
何人までなら倒せるだろうか。
軽く足を屈伸させながら、ルビイは考える。
いざとなったらマリウスの剣を奪い、正面突破をはかるだけ。
サトが出てきたのは計算外だけど、彼女を助け出す手間が省けてかえって好都合かもしれない。
やがて出入口に影が差し、わらわらと鎧で身を固めた集団が現れた。
予想通りだった。
純白の鎧は、近衛兵団のトレードマークである。
30人、いや、40人はくだらない。
二重にリングを取り囲むと、兵たちが申し合わせたようにルビイめがけて一斉に長槍を突き出した。
統制の取れた一分の隙も無い動きだった。
ルビイはかすかに形のいい眉をひそめた。
思ったより、手ごわそうだ。
双方無傷でとは、どうもいきそうもない。
「仕方ないわね」
ルビイはため息をついた。
「サト、あなたはここにいて。マリウス、悪いけど、ちょっと剣を借りるわよ」
ナックルを嵌めたままの右手を、マリウスのほうに伸ばした時だった。
「それには及ばない」
むっくりとマリウスが身を起こした。
そして、マットの上にすっくと立ちあがると、居並ぶ兵士たちに向かって叫んだ。
「貴様ら、何を考えている? 勝者は、このルリ=スナフキンなのだぞ。勝者に槍を向けるとは、気でも狂ったのか? 騎士ともあろうものが、無礼にもほどがある!」
すり鉢型の観客席を締めているのは、正装に着飾った貴族階級の者がほとんどだ。
その誰もが今や半ば腰を浮かし、上体を乗り出してルリたちのほうを見下ろしているのだ。
まるで時間が止まってしまったかのようだった。
「よかったのですか? これで」
温かいものが腰に触れ、振り返るとすぐ後ろにメイド服姿のサトが佇んでいた。
「サト…。どうしたの?」
驚いて、ルビイは目を見開いた。
「審判長が言ってましたよね。おまえ、殺されるぞって」
ほとんど口を動かさず、サトが言った。
「ならば、いっそのこと、サトも冥土にお供しようかと」
「なに言ってるの」
ルビイは笑い飛ばした。
「私がそんなに簡単につかまると思う?」
油断なく、コロシアムのふたつの出入り口に目を配る。
処刑人はおそらく王宮直属の近衛兵団だろう。
副団長のアギを倒されたからには、ルビイに対する憎しみの度合いは相当なものに違いない。
何人までなら倒せるだろうか。
軽く足を屈伸させながら、ルビイは考える。
いざとなったらマリウスの剣を奪い、正面突破をはかるだけ。
サトが出てきたのは計算外だけど、彼女を助け出す手間が省けてかえって好都合かもしれない。
やがて出入口に影が差し、わらわらと鎧で身を固めた集団が現れた。
予想通りだった。
純白の鎧は、近衛兵団のトレードマークである。
30人、いや、40人はくだらない。
二重にリングを取り囲むと、兵たちが申し合わせたようにルビイめがけて一斉に長槍を突き出した。
統制の取れた一分の隙も無い動きだった。
ルビイはかすかに形のいい眉をひそめた。
思ったより、手ごわそうだ。
双方無傷でとは、どうもいきそうもない。
「仕方ないわね」
ルビイはため息をついた。
「サト、あなたはここにいて。マリウス、悪いけど、ちょっと剣を借りるわよ」
ナックルを嵌めたままの右手を、マリウスのほうに伸ばした時だった。
「それには及ばない」
むっくりとマリウスが身を起こした。
そして、マットの上にすっくと立ちあがると、居並ぶ兵士たちに向かって叫んだ。
「貴様ら、何を考えている? 勝者は、このルリ=スナフキンなのだぞ。勝者に槍を向けるとは、気でも狂ったのか? 騎士ともあろうものが、無礼にもほどがある!」
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