211 / 471
第2章 跪いて足をお舐め
#40 悪役令嬢⑩
しおりを挟む
パーティは、はっきり言って退屈だった。
男爵になったということで、スナフのところには、祝いに駆け付ける者がたくさんやってきた。
中には白い眼で遠目に見る者もいないではなかったが、貴族たちの中にもスナフキン商会の取引先は多いのだろう、スナフの周りには着飾った男女が、ワイングラスを片手に輪をつくって集まった。
最初こそ、長い病いから回復した養女と紹介されたものの、ルビイは始終顔を見られないように俯いていた。
長い髪を複雑に編んで束ね、髪型を大幅に変えてあるから、ぱっと見20年前のいくさ乙女とはわからない自信はある。
だが、いつ誰に気づかれるかわからないのだ。
ここは一刻も早く、退散したほうがよさそうだった。
相好を崩して談笑するスナフから離れると、人混みを塗ってルビイは足早に歩き出した。
「どちらへ?」
目ざとく気づいてサトがついてきた。
「決まってるじゃない。武闘会よ」
周囲をじっくり見渡してみたが、ターニャもマリウスも見当たらない。
王とアグネスは王宮のバルコニーに出て民の祝福を受けているが、そこにもふたりの姿はなかった。
ならば、尚更このパーティー会場である中央広場に用はない。
「サトもご一緒してもよいですか?」
遅れじとついて歩きながら、サトが訊く。
「あなたはスナフの世話を」
「旦那さまには正一さまがついていらっしゃいます」
「サトは残酷な見せ物が好きなのね」
「はい。こう見えてもインキュバスの血を引く者ですから」
東広場のゲートに近づくと、悲鳴や歓声、そして怒号が爆発した。
「始まってるわ」
黒山の人だかりに目を据えて、ルビイはつぶやいた。
男爵になったということで、スナフのところには、祝いに駆け付ける者がたくさんやってきた。
中には白い眼で遠目に見る者もいないではなかったが、貴族たちの中にもスナフキン商会の取引先は多いのだろう、スナフの周りには着飾った男女が、ワイングラスを片手に輪をつくって集まった。
最初こそ、長い病いから回復した養女と紹介されたものの、ルビイは始終顔を見られないように俯いていた。
長い髪を複雑に編んで束ね、髪型を大幅に変えてあるから、ぱっと見20年前のいくさ乙女とはわからない自信はある。
だが、いつ誰に気づかれるかわからないのだ。
ここは一刻も早く、退散したほうがよさそうだった。
相好を崩して談笑するスナフから離れると、人混みを塗ってルビイは足早に歩き出した。
「どちらへ?」
目ざとく気づいてサトがついてきた。
「決まってるじゃない。武闘会よ」
周囲をじっくり見渡してみたが、ターニャもマリウスも見当たらない。
王とアグネスは王宮のバルコニーに出て民の祝福を受けているが、そこにもふたりの姿はなかった。
ならば、尚更このパーティー会場である中央広場に用はない。
「サトもご一緒してもよいですか?」
遅れじとついて歩きながら、サトが訊く。
「あなたはスナフの世話を」
「旦那さまには正一さまがついていらっしゃいます」
「サトは残酷な見せ物が好きなのね」
「はい。こう見えてもインキュバスの血を引く者ですから」
東広場のゲートに近づくと、悲鳴や歓声、そして怒号が爆発した。
「始まってるわ」
黒山の人だかりに目を据えて、ルビイはつぶやいた。
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる