208 / 471
第2章 跪いて足をお舐め
#37 悪役令嬢⑦
しおりを挟む
園遊パーティーというのは、ここ王都ミネルヴァで毎年初夏に催される、年に一度の大イベントである。
王宮の前の中央広場を中心に、東西南北の広場すべてを使って行われ、この日ばかりは貴族も平民も隔たりなく酒を酌み交わし、踊りや催し物に興じることが可能になる。
もちろんその分警備はいつもの数倍厳重で、ルビイが知る限りでは大きな事件が起こったということは聞いていない。
さすがにライダースーツにハーレーで乗り込むわけにもいかず、ルビイは大人しくスナフが雇った馬車に、昨日買ったドレスを身にまとって乗りこんだ。
屋敷の管理は使用人たちに任せ、スナフ、正一、ルビイ、サトの4人が参加することになっていた。
馬車は緑に包まれた街道をゆっくりと走っていく。
ハーレーの速さと轟音に慣れたルビイには、それがまだるっこしくて仕方がない。
「武闘会、ルールは昔と同じかしら?」
あくびを噛み殺しながら、ルビイは隣のスナフにたずねた。
前世では、見るだけで結局一度も出場しなかった。
その頃にはルビイ自身、すでに近衛兵に取り立てられていたという事情もあった。
当日王都の警護に就く近衛兵は、職務の都合上、試合に出ることができなかったのである。
「ああ。東西南北の広場で予選がそれぞれ行われ、最後は中央広場で決勝だ。予選は飛び入り自由。特に予約の必要はない。体力を温存したいなら、後のほうから飛び入り参加するのが賢いだろうな」
「別に体力的な不安はないけれど、無駄な戦いは確かに疲れるわね」
変装というほどではないが、念のために髪型を変えてきた。
親子だからある程度当たり前だが、ルリは20年前のルビイに瓜二つなのだ。
年配の者が見れば、余計な疑いを抱きかねないからである。
「今年は近衛兵団からも代表が出場するらしい。当日非番を取らせてまで兵を出すということは、何か裏がある気がしないでもないが」
いつも無口な正一が珍しく口を挟むと、スナフがにやりと笑って言った。
「わからないか? 王はルビイの参加を警戒してるのさ。たとえルビイが出場しても、絶対に優勝させないようにって魂胆なんだろう」
「なるほどな」
正一が感心したようにうなずいた。
「20年前みたいに、また聖なるいくさ乙女が生まれちゃ困るもんな」
「そういうことさ。だからきっと、王都最強の者が選出されているはずだ。ルビイ、くれぐれも気をつけろ」
「いいね」
ルビイの返事はそっけない。
「そうじゃなきゃ、こっちも燃えてこないしね」
王宮の前の中央広場を中心に、東西南北の広場すべてを使って行われ、この日ばかりは貴族も平民も隔たりなく酒を酌み交わし、踊りや催し物に興じることが可能になる。
もちろんその分警備はいつもの数倍厳重で、ルビイが知る限りでは大きな事件が起こったということは聞いていない。
さすがにライダースーツにハーレーで乗り込むわけにもいかず、ルビイは大人しくスナフが雇った馬車に、昨日買ったドレスを身にまとって乗りこんだ。
屋敷の管理は使用人たちに任せ、スナフ、正一、ルビイ、サトの4人が参加することになっていた。
馬車は緑に包まれた街道をゆっくりと走っていく。
ハーレーの速さと轟音に慣れたルビイには、それがまだるっこしくて仕方がない。
「武闘会、ルールは昔と同じかしら?」
あくびを噛み殺しながら、ルビイは隣のスナフにたずねた。
前世では、見るだけで結局一度も出場しなかった。
その頃にはルビイ自身、すでに近衛兵に取り立てられていたという事情もあった。
当日王都の警護に就く近衛兵は、職務の都合上、試合に出ることができなかったのである。
「ああ。東西南北の広場で予選がそれぞれ行われ、最後は中央広場で決勝だ。予選は飛び入り自由。特に予約の必要はない。体力を温存したいなら、後のほうから飛び入り参加するのが賢いだろうな」
「別に体力的な不安はないけれど、無駄な戦いは確かに疲れるわね」
変装というほどではないが、念のために髪型を変えてきた。
親子だからある程度当たり前だが、ルリは20年前のルビイに瓜二つなのだ。
年配の者が見れば、余計な疑いを抱きかねないからである。
「今年は近衛兵団からも代表が出場するらしい。当日非番を取らせてまで兵を出すということは、何か裏がある気がしないでもないが」
いつも無口な正一が珍しく口を挟むと、スナフがにやりと笑って言った。
「わからないか? 王はルビイの参加を警戒してるのさ。たとえルビイが出場しても、絶対に優勝させないようにって魂胆なんだろう」
「なるほどな」
正一が感心したようにうなずいた。
「20年前みたいに、また聖なるいくさ乙女が生まれちゃ困るもんな」
「そういうことさ。だからきっと、王都最強の者が選出されているはずだ。ルビイ、くれぐれも気をつけろ」
「いいね」
ルビイの返事はそっけない。
「そうじゃなきゃ、こっちも燃えてこないしね」
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる