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第2章 跪いて足をお舐め
#35 悪役令嬢⑤
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「え? ルリさんも武闘会に?」
ターニャのエメラルドグリーンの瞳が、またまん丸に見開かれる。
よく驚く娘だ、とルビイは思う。
でも、その素直なところがなんとも愛らしい。
「ええ。身体もよくなったことだし、ちょっと腕試しにと思ってね」
「あのう…やっぱり、本当なんですね。父上が言ってた、あのこと…」
ターニャが言いにくそうに口ごもった。
「私がいくさ乙女ルビイと、魔王との間に生まれた子だってこと?」
もうバレているのだから、今更隠しても仕方がない。
あっさりルビイが先を越すと、
「ううん、だからって、私にはそんなことどうでもいいんです」
一瞬の逡巡の後、ターニャがかぶりを振った。
「ルリさんはルリさんですし、私はあなたを信じてますから」
そう口にしてから、ぽっと頬を赤らめる。
「でも、できればお手柔らかに…あ、これはお兄様のことですけど」
「武闘会では手加減はしないよ」
ルビイは苦笑した。
「それでは皇子のためにならないもの。そうでしょう?」
「ですよね」
ペロッと可愛らしく舌を出し、ターニャが肩をすくめた時である。
「ターニャさま! またこんなところにおひとりで!」
あの執事とお供の兵たちが駆けてきた。
「ああん、見つかっちゃった」
ターニャは悔しげにつぶやくと、ルビイを振り向いてウィンクした。
「じゃ、また会ってくれますよね。王宮の外なら、父上の命に背いたことにはならないし」
ターニャと別れると、いつのまにそこにいたのか、サトがすっとすり寄ってきた。
「第三皇女ターニャさまですか。さすが、可愛らしい方ですね」
意味ありげなまなざしで、ルビイを見上げた。
「何が言いたいの?」
その含みのある言い方にひっかかるものを覚えて、ルビイはたずねた。
「いえ、ちょっと思ったものですから。マリウスさまを落とす前に、妹を手中に収めるのもありかなと」
口元に妖しい笑みを浮かべて、サトが言った。
ターニャのエメラルドグリーンの瞳が、またまん丸に見開かれる。
よく驚く娘だ、とルビイは思う。
でも、その素直なところがなんとも愛らしい。
「ええ。身体もよくなったことだし、ちょっと腕試しにと思ってね」
「あのう…やっぱり、本当なんですね。父上が言ってた、あのこと…」
ターニャが言いにくそうに口ごもった。
「私がいくさ乙女ルビイと、魔王との間に生まれた子だってこと?」
もうバレているのだから、今更隠しても仕方がない。
あっさりルビイが先を越すと、
「ううん、だからって、私にはそんなことどうでもいいんです」
一瞬の逡巡の後、ターニャがかぶりを振った。
「ルリさんはルリさんですし、私はあなたを信じてますから」
そう口にしてから、ぽっと頬を赤らめる。
「でも、できればお手柔らかに…あ、これはお兄様のことですけど」
「武闘会では手加減はしないよ」
ルビイは苦笑した。
「それでは皇子のためにならないもの。そうでしょう?」
「ですよね」
ペロッと可愛らしく舌を出し、ターニャが肩をすくめた時である。
「ターニャさま! またこんなところにおひとりで!」
あの執事とお供の兵たちが駆けてきた。
「ああん、見つかっちゃった」
ターニャは悔しげにつぶやくと、ルビイを振り向いてウィンクした。
「じゃ、また会ってくれますよね。王宮の外なら、父上の命に背いたことにはならないし」
ターニャと別れると、いつのまにそこにいたのか、サトがすっとすり寄ってきた。
「第三皇女ターニャさまですか。さすが、可愛らしい方ですね」
意味ありげなまなざしで、ルビイを見上げた。
「何が言いたいの?」
その含みのある言い方にひっかかるものを覚えて、ルビイはたずねた。
「いえ、ちょっと思ったものですから。マリウスさまを落とす前に、妹を手中に収めるのもありかなと」
口元に妖しい笑みを浮かべて、サトが言った。
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