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第2章 跪いて足をお舐め
#34 悪役令嬢④
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「驚きましたわ。こんなところでお会いできるなんて」
スケッチブックを閉じると、それを小脇に抱え、ターニャが立ちあがる。
「それはこっちの台詞よ。いいの? 皇女ともあろうお人が、お供も連れずひとりでスケッチなんて」
周囲を見回してみる。
やはり護衛の姿はない。
この娘、あの時のようにまた王宮を勝手に抜け出してきたようだ。
「いいんです。私の本分は学生なんですから。これは美術の授業の課題なんです。今週中に仕上げないと」
「マリウス皇子は?」
それとなく訊いてみた。
マリウスを落とせ。
ミネルヴァを牛耳るための足掛かりとして まずマリウスの愛人になれ。
スナフはそう言った。
そのためには、まず本人と接触する機会をつくらないことには話にならない。
「お兄さまは、王宮で武術の稽古かと。なんでも明日の武闘会に出るとかで、張り切っているんです」
「武闘会に? マリウス皇子が?」
ルビイは片方の眉を吊り上げた。
意外といえば意外である。
マリウスは見た感じ、妹同様華奢な体つきをしていて、とても武術の心得があるようには見えないのだ。
「お兄様ったらかわいそうに、父から耳にタコができるほど言われてるんです。王位を継承するなら、本ばかり読んでないで、もっと剣の腕を磨けって。婚約者のアグネスさまも、強い男がお好きとかで、武闘会に出るよう、お兄様をけしかけて…。私は、今のままのお兄様が好きなのですけれど…」
兄の身を真剣に案じているのだろう。
ターニャの優しげな顔に、憂いの翳りがさしている。
「そうなの。でも、楽しみだわ。武闘会の会場で、彼に会えるなんて」
「え? それはどういうことですか?」
目を丸くしたターニャに向かって、ルビイはいたずらっぽい口調で言った。
「なぜって、私も出場するつもりだから。その武闘会に」
スケッチブックを閉じると、それを小脇に抱え、ターニャが立ちあがる。
「それはこっちの台詞よ。いいの? 皇女ともあろうお人が、お供も連れずひとりでスケッチなんて」
周囲を見回してみる。
やはり護衛の姿はない。
この娘、あの時のようにまた王宮を勝手に抜け出してきたようだ。
「いいんです。私の本分は学生なんですから。これは美術の授業の課題なんです。今週中に仕上げないと」
「マリウス皇子は?」
それとなく訊いてみた。
マリウスを落とせ。
ミネルヴァを牛耳るための足掛かりとして まずマリウスの愛人になれ。
スナフはそう言った。
そのためには、まず本人と接触する機会をつくらないことには話にならない。
「お兄さまは、王宮で武術の稽古かと。なんでも明日の武闘会に出るとかで、張り切っているんです」
「武闘会に? マリウス皇子が?」
ルビイは片方の眉を吊り上げた。
意外といえば意外である。
マリウスは見た感じ、妹同様華奢な体つきをしていて、とても武術の心得があるようには見えないのだ。
「お兄様ったらかわいそうに、父から耳にタコができるほど言われてるんです。王位を継承するなら、本ばかり読んでないで、もっと剣の腕を磨けって。婚約者のアグネスさまも、強い男がお好きとかで、武闘会に出るよう、お兄様をけしかけて…。私は、今のままのお兄様が好きなのですけれど…」
兄の身を真剣に案じているのだろう。
ターニャの優しげな顔に、憂いの翳りがさしている。
「そうなの。でも、楽しみだわ。武闘会の会場で、彼に会えるなんて」
「え? それはどういうことですか?」
目を丸くしたターニャに向かって、ルビイはいたずらっぽい口調で言った。
「なぜって、私も出場するつもりだから。その武闘会に」
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