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第2章 跪いて足をお舐め

#20 魔王の落とし子⑤

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 外に出ると、寒気が肌を刺した。

 初夏といえども、山が近いせいか、このあたりは夜の気温が低いのだ。

 数メートル先に、ぼんやりと幅の広い背中が見えた。

 カイルだ。

 見張り番は男たちが交替で務めることになっている。

 今はカイルの番ということなのだろう。

「眠れないのか?」

 気配に気づいたのか、振り向きもせず、肩越しにカイルが訊いた。

「今の光は? ろくに月も出ていないみたいだけど」

「見ていろ。また光る」

 カイルが山肌のほうに太い腕を伸ばした。

 その言葉が終わらぬうちだった。

 右から2番目の坑道の入口が、ふいにまばゆい光を放ち、そして消えた。

 スナフが持っている懐中電灯とやらの光を、何十倍にも強めたような明るさだった。

 その残像に、しばらくの間、目がくらんだ。

「何なの?」

「わからん。さっきから、順番に光ってる。もしかしたら、もう手遅れなのかもしれないな」

「デスワームが、活動し始めたってこと?」

「ああ。しかし、あんな現象は初めてだ。嫌な予感がする…。ところで、武器は?」

「持ってきたわ」

 ボウガンとナックルの入った背嚢を、ルビイはガチャリと足元に下ろした。

 レイピアは鞘に入れて腰に提げている。

「さすがに用意がいいな」

 闇に慣れてきた目に、カイルが苦笑するのがわかった。

「最悪、ふたりで行くしかないな」

「そうね」

 右手に鋼鉄のナックルをはめ、左手の甲に携帯型ボウガンを装着する。

「それで、なんとかできるといいけれど」

「火薬はすぐそこの納屋の中だ。今のうちに取って来るとしよう」

 カイルが足を踏み出そうとした、その瞬間だった。

 だしぬけに、地面が揺れた。

 そして、ふいに周囲が昼間のように明るくなった。
 
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