上 下
171 / 471
第1章 覚醒

#63 再起⑧

しおりを挟む
「そうですか…。でも、そうですよね。ルビイさまのお気持ちも考えず、失礼いたしました」
 
 サトは殊勝に身を縮こまらせると、それ以来無口になり、ルビイに性的な遊戯を仕掛けてくることもなかった。

 乾いた布にくるまれ、サトの押す車椅子で2階に戻ると、煌々と明かりのついた部屋で作務衣姿の正一が待っていた。

「約束の義手と義足だ。すぐにはめるが、それでいいか?」

 サイドテーブルに置かれた4本の手足を顎で示して、不愛想な口調でそう言った。

「お願いするわ。もうこのだるま状態にはうんざりだから」

 サトがルビイを抱え上げ、ベッドに仰向けに横たえた。
 
 右腕のパーツを手に取り、正一が脇に立つ。

 ルビイの右肩の切り株の内側を指で押さえると、断面の中央から白い骨が飛び出してきた。

 義手の断面に開いた穴をその骨の先端に合わせると、ぴったり重ね合わせて軽くひねった。

 かすかな音がして、何かがつながった気配が伝わってきた。

 その調子で、左腕、右脚、左脚と、順にはめていく。

 四肢がそろうのに、10分とかからなかった。

「神経が完全に復元するのに数時間は必要だ。今晩はこのまま朝まで安静にしていることだな。明日になれば、文字通り、この手足は自分のものとして自由自在に動かせる」

 一歩下がって自分の作業の出来栄えを眺めながら、正一が言う。

「ありがとう。恩に着るわ」

 ルビイは首だけ動かして、改めて己の裸身に目をやった。

 美しくたくましい手足をそろえたその身体は、夢にまで見た美しさだった。

 測ってみないとわからないが、ルリの肉体は20年前のルビイのものより均整が取れ、背も高く、手足も長いようだ。

 が、それ以上にうれしいのは、この手足の存在感だった。

 幻肢ではなく、指先にまでじわじわと広がっていくこの生の感覚の心地よさといったら…。

「五体満足になったら、今度はルビイさまが、サトを調教する番ですね」

 うっとりとそんな思いに浸っていると、それまで黙って作業の様子を見ていたサトが、唐突に奇妙なことを言い出した。

「調教?」

 あっけに取られ、傍らのサトに目をやるルビイ。

「ご自分の味わった快感を、他人に与える方法を実践するのです。いつでもお相手しますから、その気になったらおっしゃってくださいな」

 言うだけ言ってサトが出ていくと、

「仕事熱心もいいが、俺は別にラブドールのパーツをつくってるわけじゃないんだぞ」

 苦虫を噛み潰したような仏頂面で、正一がつぶやいた。

「確かにそのくらいの作業はわけないが…この義手義足の本領は、むしろ最新鋭の兵器だというのに」

 
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...