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第1章 覚醒
#27 王都ミネルヴァ⑰
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ラフな服装に着替えたマリウスは、飾らない気さくな青年に見えた。
その後ろにたたずむターニャはそれが学校の制服なのか、白地に水色のラインが入ったセーラー服に着替えている。
いかにも仲のよさそうな兄妹だ。
ふたりのまなざしはルビイに対する敬意にあふれている。
が、マリウスの次のひと言は、ルビイの中の警戒心のレベルを一気に引き上げた。
「ささやかながら、昼食をと思って今準備中なのだが、その前に王がそなたに会いたいそうだ。1対1の水入らずでね。そなたがあのいくさ乙女ルビイの娘と知ってたいそう驚いたようだったから、きっと昔話でもしたいのではないかな。疲れているところを悪いが、少しばかり老人のわがままにつきあってもらえないか」
「ディオニス王が、私に…?」
王は当然、ルビイの顔を知っている。
それどころか、あの忌まわしい幻像をもたぶん目撃していることだろう。
何も知らないマリウスは口元に笑みをたたえているが、これがよい知らせとはとても思えない。
「ぜひに、ということだ。私とターニャには席をはずせとの仰せだよ」
「王のご意志とあらば」
仕方なく、ルビイは腰を上げた。
「こちらです」
ターニャに手を取られて、廊下に出る。
階段を上がるとそこは3階で、登り口の正面に大きな両開きの扉があるだけだった。
ここが王の部屋ということなのだろう。
「お連れしました」
獅子の顔をかたどったノッカーで扉を叩いて、マリウスが呼びかけた。
「入ってもらえ」
打てば響くように、しわがれた声が返ってきた。
その後ろにたたずむターニャはそれが学校の制服なのか、白地に水色のラインが入ったセーラー服に着替えている。
いかにも仲のよさそうな兄妹だ。
ふたりのまなざしはルビイに対する敬意にあふれている。
が、マリウスの次のひと言は、ルビイの中の警戒心のレベルを一気に引き上げた。
「ささやかながら、昼食をと思って今準備中なのだが、その前に王がそなたに会いたいそうだ。1対1の水入らずでね。そなたがあのいくさ乙女ルビイの娘と知ってたいそう驚いたようだったから、きっと昔話でもしたいのではないかな。疲れているところを悪いが、少しばかり老人のわがままにつきあってもらえないか」
「ディオニス王が、私に…?」
王は当然、ルビイの顔を知っている。
それどころか、あの忌まわしい幻像をもたぶん目撃していることだろう。
何も知らないマリウスは口元に笑みをたたえているが、これがよい知らせとはとても思えない。
「ぜひに、ということだ。私とターニャには席をはずせとの仰せだよ」
「王のご意志とあらば」
仕方なく、ルビイは腰を上げた。
「こちらです」
ターニャに手を取られて、廊下に出る。
階段を上がるとそこは3階で、登り口の正面に大きな両開きの扉があるだけだった。
ここが王の部屋ということなのだろう。
「お連れしました」
獅子の顔をかたどったノッカーで扉を叩いて、マリウスが呼びかけた。
「入ってもらえ」
打てば響くように、しわがれた声が返ってきた。
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