128 / 471
第1章 覚醒
#20 王都ミネルヴァ⑨
しおりを挟む
ガラガラと積み重なった柱が崩れ、ぬねぬめした胴が伸び上がる。
身をくねらせて立ち上がったのは、およそこの世のものとは思えないほど、異形の生き物だった。
体長3メートルはありそうな、筒状の胴。
その先端がイソギンチャクの口のように開き、そこから無数の触手が生えている。
身体はタールを塗りたくったように真っ黒で、臭い匂いのする粘液でべっとり濡れていた。
「くうっ、だからいわんこっちゃない! ターニャさま、魔物です!」
ノックスがわめいた。
「この村には魔王の残滓が染みついておる。そいつが実体化したに違いありませぬ!」
お供の兵士たちが飛び出し、ターニャを守るように囲んだ。
「ここはお任せを!」
リーダーと思しき体格のいい男が、腰の剣を抜いて魔物に切りかかる。
と、魔物が動いた。
太いチューブのような胴を旋回させて、頭で突進する兵士を吹き飛ばしたのだ。
そして全身を蠢動させながら直立すると、てっぺんに開いた口からおびただしい数の触手を一斉に吐き出した。
襲い来る細く長い触手の群れに巻きつかれ、残ったふたりの兵士が宙づりになる。
硬いものが割れる音がして、ひしゃげた甲冑の間から真っ赤な血潮が飛び散った。
「ターニャさま、逃げるのです!」
ノックスがよたよたとターニャの許に寄っていく。
ターニャは両手で口をふさいだまま、恐怖に目をいっぱいに見開き、金縛りに遭ったように動かない。
兵士の死体を頂上の口で食べ終えると、おもむろに魔物がターニャのほうを振り向いた。
身をくねらせて立ち上がったのは、およそこの世のものとは思えないほど、異形の生き物だった。
体長3メートルはありそうな、筒状の胴。
その先端がイソギンチャクの口のように開き、そこから無数の触手が生えている。
身体はタールを塗りたくったように真っ黒で、臭い匂いのする粘液でべっとり濡れていた。
「くうっ、だからいわんこっちゃない! ターニャさま、魔物です!」
ノックスがわめいた。
「この村には魔王の残滓が染みついておる。そいつが実体化したに違いありませぬ!」
お供の兵士たちが飛び出し、ターニャを守るように囲んだ。
「ここはお任せを!」
リーダーと思しき体格のいい男が、腰の剣を抜いて魔物に切りかかる。
と、魔物が動いた。
太いチューブのような胴を旋回させて、頭で突進する兵士を吹き飛ばしたのだ。
そして全身を蠢動させながら直立すると、てっぺんに開いた口からおびただしい数の触手を一斉に吐き出した。
襲い来る細く長い触手の群れに巻きつかれ、残ったふたりの兵士が宙づりになる。
硬いものが割れる音がして、ひしゃげた甲冑の間から真っ赤な血潮が飛び散った。
「ターニャさま、逃げるのです!」
ノックスがよたよたとターニャの許に寄っていく。
ターニャは両手で口をふさいだまま、恐怖に目をいっぱいに見開き、金縛りに遭ったように動かない。
兵士の死体を頂上の口で食べ終えると、おもむろに魔物がターニャのほうを振り向いた。
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる