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第1章 覚醒

#4 再会③

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「信じられない…ゆうべまでそのベッドに寝ていたのは、二度と目覚めないはずの、ルリだったのに…」

 スナフは震えながら立ち尽くしたままだ。

 ルビイは滑るように部屋を横切ると、その前に立った。

 心持ち猫背になったスナフより、今はルビイのほうが少し背が高い。

「その、ルリというのは、誰?」

 スナフの揺れる瞳を正面から見据えて、ルビイは訊いた。

「おまえの子どもだよ」

 つぶやくように、スナフが答えた。

「あの時、おまえの腹の中にいた…」

 今度はルビイが動揺する番だった。

「うそ。私をここに転生させた”神”は言ったわ。子どもも私と一緒に死んだって」

「転生…? そうか。そういうことだったのか」

 スナフの口元に、往年のあの皮肉っぽい微笑が浮かんだ。

「俺を召喚しただけでは飽き足らず、今度はルビイの転生か…。しかも、脳死したわが子の肉体に」

「脳死?」

「そうだ。神はあながち、間違ってはいないのさ。俺が駆けつけた時、おまえの腹から引きずり出されたルリは、脳に致命的な損傷を追っていて、完全な植物人間状態に陥っていた。脳が死んでしまったら、それはもう、人間として生きてることにはならないだろう? 神が死んだと表現したのも無理はない」

 転生した先が、脳死状態のわが子…?

 ルビイは愕然とした。

 喜んでいいのか、悲しむべきなのか、頭が混乱してよくわからなかった。

「確かにな。生まれた時から脳死状態で、そもそも自我というものを持たないルリの大脳は、いわばからっぽのハードみたいなものだ。そこにおまえの意識をダウンロードするのは、神としても非常にやりやすかったんじゃないか? まあ、若干手抜きの感は否めないがね」

 ハードだのダウンロードだの、相変わらずスナフの語彙には謎めいた単語が混じる。

「この身体が私の子供のものだとして…ルリという名は、あなたがつけてくれたの?」

「ああ、どうしても和風の名前しか思いつかなくてね。なるべく母親の名に似せたつもりだったんだが…。お気に召さないか?」

「いいえ。そんなことないわ。ただ…お礼を言いたかっただけ」

 ルビイはいとおしげに自分の二の腕を撫でた。

 これが私の子ども、ルリの身体…。 

 なんて、なんて素敵な巡り合わせなのだろう…。

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