魔王にレイプされてゴミのように棄てられた女戦士は、悪役令嬢に生まれ変わって復讐します

第2章 地獄の底を這いまわれ

#34 淫売窟⑯

　10日以上…？

　ルビイはつかの間、抵抗するのを忘れてしまっていた。

　そんな…。

　魔王に犯され、気を失ってから、せいぜい2、3日しか経っていないと思っていたのに…。

　火の山のふもとで目覚め、その後、砂漠を1日歩き回り、アクシスの村にたどりついた。

　そこでスナフに助けられ、あの鉄の馬でこのネオ・ホンコンまで更に1日かかった。

　それが昨日のことである。

　その間、かかったのはせいぜい3日。

　ということは、魔王に失神させられ、その後、火の山のふもとで目覚めるまでに、1週間ほど日にちが経過していることになる…。

　その間、私はどこで何をしていたのだろう…？

　ひょっとして、記憶にないだけで、その間も魔王が私の身体を…？

　想像したくないことだった。

　アネモネの言うように、その間に私の子宮の中で魔王の仔が着実に育っていたとしたら…。

　魔王の仔の成長が人間の子よりずっと早く、すでに胎児のかたちを成しつつあるとしたら…。

「ちょっと痛むよ。でも、すぐだからね。ちゃんと痛み止めも用意してある」

　アネモネの声に、ルビイはハッと我に返った。

　見ると、金属板の上に伸ばした右腕を、手首のところで小人のひとりがぐっと押さえつけている。

　小人の腕は、その短躯に不釣り合いなほど太く、筋肉が盛り上がっている。

「抵抗しても無駄だよ。この子たちは、肉体労働専用に創り出されたホムンクルスなんだ。頭の中は空っぽだけど、腕力じゃ誰もかないはしないのさ。おとなしくしてることだね」

　アネモネが、そう警告した瞬間だった。

　右手首を両手でつかんだ小人が、ルビイの腕に力任せにひねりを加えた。

　右腕が無造作に半回転して、肩のあたりで鈍い音が響いた。

　激痛が肩から脳天へと突き抜けた。

　声にならぬ悲鳴を上げ、ルビイは跳ねた。

　あまりの痛みに膀胱がゆるみ、尿が漏れたのがわかった。

　何が起こったのか、確かめるまでもなかった。

　人形の腕をもぎ取るように、小人がルビイの右肩の関節を外したのだった。