魔王にレイプされてゴミのように棄てられた女戦士は、悪役令嬢に生まれ変わって復讐します

第2章 地獄の底を這いまわれ

♯17 地獄からの使者⑨

　ショックで顔から血の気が引いていくのが分かった。

　スナフが…優しかったあのスナフが、私を売ろうとしている…？

　頬を熱いものが伝う。

　悔し涙だった。

　少しでもスナフに心を許しかけていた自分が腹立たしかった。

　やはり、信じるべきではなかったのだ。

　私は、全世界の期待を裏切った身。

　そんな女に、好意を寄せる者がいるはずない。

　今や、世界中が、私の敵なのだから…。

　逃げなければ。

　ルビイはベッドから身体を起そうとした。

　が、手足はおろか、指一本、動かせない。

　筋肉という筋肉が弛緩して、力が入らない…。

　その間にも、会話は続いている。

「だが、くれぐれも扱いには気をつけろよ。ああ見えて、ルビイはネオ・ガイア切っての戦士だ。怒らせたら、あんたたちの力じゃ、止められないぞ」

「わかってるよ。だから食事に薬を仕込んだんじゃないか。今の彼女は、毒が全身に回って、赤ん坊ほどの力も出せないさ」

「さすが魔窟の女主人だけのことはあるな。アネモネさんよ」

　陰湿な笑い声が重なり合ってこだました。

　毒…。

　ルビイは、ここへ来てすぐ出された食事の数々を思い出した。

　うかつだった。

　あれは、私の自由を奪うための、罠だったのだ…。

「最後に挨拶だけしておくか」

　スナフが言った。

　扉の開く気配がして、ルビイはかすかに身を震わせた。