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#359 若い牝④

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「な、なんのことか、さっぱり…」
 はぐらかそうとしたが、情けないことに、声が震えてしまった。
 凄まじい羞恥で、顔が熱く火照ってならなかった。
 きっと頬が真っ赤になっているに違いない。
 まずい、と思う。
 これでは梨乃の疑念を私自ら肯定しているようなものだ。
 それにしても、なんて鋭い娘なのだろう。
 見かけの清楚な雰囲気にだまされていたが、本当はけっこう闇の深い性格なのかもしれない。
 だって、そもそもこの子、あの仁美さんの妹なんだから…。
「あくまでもしらを切り通すつもりなんですかあ?」
 梨乃はふっと腰を上げると、何を思ったのか、テーブルを回ってきて、琴子の隣の椅子に腰かけ直した。
「うそついたって、もうわかっちゃってるんですよ。琴子さんが、さっきまでここで何をしてたのか」
「うそだなんて、私は、べ、別に、何も…」
 どぎまぎしながら言い返す琴子。
 と、不意に梨乃が琴子の右手を取り、両手で握ってきた。
「じゃあ、ちょっと手を見せてくれません?」
「ちょ、ちょっと、な、何を…?」
 琴子の人差し指に、やおら鼻を近づける梨乃。
 くんくんくん。
 口に出してそう言いながら鼻を動かしていたがすぐに、
「ああー! やっぱり!」
 勝ち誇ったように明るい声で叫んだ。
「や、やっぱりって…?」
 戸惑う琴子を正面からじっと見つめると、梨乃はにっと意味ありげに微笑んで、
「これ、愛液の匂いですよね。淫汁って呼んだほうがいいかしら。梨乃もよく知ってる匂いです。だって梨乃、オナニー大好きですから」
「や、やめて」
 とっさに顔を背ける琴子。
 その耳は熟したように赤い。
 バレてた。
 穴があったら入りたい思いだった。
 こんな初対面の女子大生に、開口一番、いきなりオナニーの痕跡を言い当てられてしまうだなんて。
「隠さないでもいいんですよ。琴子さん、さっきまでここで、自分の手で自分を慰めてたんですよね。だから、お部屋の中がこんなにも牝臭くなっちゃって…。それにしても、どうしちゃったんですか? こんなまっ昼間から。あ、わかった! もしかして、仁美姉さんと会えなくなって、欲求不満が溜まっちゃってるとか?」
「ち、ちがい、ます」
 首を振る力がだんだん弱くなる。
 これも、うそ。
 この子、私の秘密を、どこまで見抜けば気が済むのだろう。
 そんな恥ずかしげな琴子の様子を、梨乃は見事に発達した胸乳をテーブルに押し付けるようにして、にやにやと愉しげに眺めているのだった。
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