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#357 若い牝②

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「とにかく、上がって」
 この娘が仁美の妹だとすると、むげに追い返すこともできない。
 琴子はとりあえず、彼女を家の中に通すことにした。
「ここで待ってて。今、飲み物をお持ちするわ」
 居間に導き、ソファに座らせてから、一瞬、ドキッとなった。
 窓が開けてあるとはいえ、ここの空気には琴子の残り香がまだ色濃く漂っている。
 なんせ、つい数分前まで、仁美たちとのプレイを反芻して激しい自慰に耽っていたところだったのだ。
 琴子の穿いているビキニタイプのショーツ自体、まだ愛液で濡れたままというありさまである。
 梨乃と名乗るこの娘に、そのことを気取られたらどうしよう?
 が、幸い、梨乃は特に何かに気づいた様子もなく、琴子がテーブルに置いた麦茶のグラスを手に取ると、
「ありがとうございます」
 とはにかむように微笑んで軽く頭を下げた。
「お姉さま、仁美さんは、どうなさったの? 最近、お見掛けしないけど」
 共通の話題といえば、これしかない。
 琴子はそこから切り込むことにした。
「淳一君の具合が悪くって、入院することになったんです」
 目を伏せるようにして、梨乃が答えた。
「なんでも、手術の必要があるとかで、それで姉も付き添いに…」
「そうだったの」
 そもそも、琴子は仁美の家で子供の姿を見たことがない。
 仁美も滅多に話題にすることがないので、彼女がシングルマザーだということもすっかり忘れていたほどなのだ。
「姉はああいう性格ですから、実は淳一君、ついこの前まで、元旦那さんだった方の元に預けられていたんです。いえ、淳一君の親権は一応姉が持ってるんですけど、元旦那さんがとてもいい方で、離婚後も姉のことをいろいろ援助してくださっているんです」
 ああいう性格、というのが何を指すのか、琴子には今一つわからない。
 ただ仁美が母親向きでないことは、短い付き合いながらもよくわかる。
 彼女は生れついての牝なのだ。
 母性本能より、性欲を優先するタイプであることは間違いない。
「じゃあ、お子さんの手術が終わるまで、仁美さんは…」
「ええ。病院は元旦那さんの家の近くですから、そこからしばらく淳一君の病室に通うんだと思います。帰るまで、最低一か月はかかるかと…」
 一か月も。
 琴子は眉をひそめた。
 目の前の娘がインターホン越しに告げた言葉を思い出したのだ。
「梨乃さん、とおっしゃいましたね」
「あ、はい」
 目をぱちくりさせる梨乃。
 近くで改めて見ると、梨乃は肉感的なボデイに童顔を乗せたひどくアンバランスな魅力を持った少女だった。
 アニメオタク好みの美少女キャラが現実化したような、とでも言おうか。
 十代前半の少女の顔に成人女性の肉体を融合したかのような、そんな危うい官能美を醸し出しているのである。
「仁美さんの事情はよくわかりました。今度は、あなたの要件というのを、詳しく聞かせていただけないかしら」
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