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#131 狂った夫⑦

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 半ば予想していた通りだった。
 正一のペニスは、和夫の逞しい肉棒と極太ティルドに慣れた琴子には、細すぎてまるで手応えがなかった。
 ただ淫汁の溜まった膣の中を、空しく攪拌するだけなのだ。
 長さも足りないため、膣の奥のローターにすら届かないありさまだ。
 上にのしかかって必死で腰を動かす正一を下から見上げているうちに、琴子は心底嫌になってきた。
 汗を垂らし、目を半眼にして唸り声を上げている正一が哀れでならない。
 鼻孔をふくらませているその顔は、まるきり知性の欠如した類人猿のようだ。
 中年太りで体重の増えている正一は、予想以上に重かった。
 膝で押さえられた両腕が、痺れるように痛い。
 射精まで我慢しようと思ったが、どうやら琴子の認識はあ甘すぎたらしい。
 琴子が全く感じていないことに気づいたのか、正一はムキになるばかりでいっこうに達しようとしないのだ。
 いい加減、忍耐の限界だった。
 しまった、と思った時には、すでに冷ややかな声を発した後だった。
「もう、やめて」
 琴子の拒絶のひと言に、正一のつたないピストン運動が止まった。
「これ以上しても無駄。私はあなたではイケない。それがよくわかったわ」
 正一を撥ね退けるようにして、身を起こす。
「ど、どういうことだ?」
 琴子の中にペニスを入れたまま、正一が訊いてきた。
 あまりに意外な言葉を投げつけられて、かなり混乱しているようだ。
「あなたに比べたら、アダルトグッズや和夫のほうがずっとマシ。よくもまあ、その粗チンと未熟なテクニックで浮気ができたものね。ほんと、こんなので満足する相手の女の顔を見てみたい」
 こうなれば、もうヤケクソだった。
 琴子は歯に衣着せず、胸に溜まったもやもやを一気に吐き出した。
「こ、琴子…」
 正一があんぐりと口を開け、琴子を見た。
 己の性技を否定されたことと浮気を暴露されたことのWショックで、まともに口もきけぬらしい。
「息子よりセックスの下手な夫なんて」
 琴子は気だるげに長い髪をかき上げると、ふんと鼻を鳴らして正一をねめつけた。
「存在価値なんてない。ね、そうは思わない?」
「琴子…」
 正一は皿のように見開いた眼を充血させ、痴呆のように絶句したままだ。
「いつまで入れてるつもりなの? あなたのその、仮性包茎の臭いペニス」
 琴子は無造作に正一を押しのけ、ペニスを抜いてベッドから滑り降りた。
「今度一緒にお風呂に入って見せてもらいなさい。和夫のは立派に剥けててあなたのそれの倍は太くて長いから」
「や、やめろ…」
 正一の顔が、厚紙を丸めたみたいに、ふいにくしゃくしゃに歪んだ。
「お、お願いだ…そ、それ以上…言わないでくれ…」
 この時、琴子は結婚以来初めて、自分が夫より優位に立ったことを確信した。 

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