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#124 嫉妬仮面⑨

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 バイブを放り出し、和夫がベッドの上に上がってきた。
 物も言わずに琴子の太腿に手をかけると、乱暴に押し開く。
 二段になった琴子の腹に、勃起した和夫のペニスが当たった。
 和夫が更に力を入れ、琴子の股間が上を向くよう、躰の位置を調整する。
「い、入れて…」
 身体を折り曲げ、腰を垂直に立てた姿勢で、琴子はねだった。
 白いデスマスクが、なぜかひどく魅力的なものに思えてくる。
 まるで、怪人に凌辱されかけている銀幕のヒロインにでもなった気分だった。
「す、好きだ・・・」
 上ずった声で、和夫がささやいた。
「愛してる…ずっと前から…」
「私もよ…」
 琴子の口から、思ってもいない言葉が漏れた。
 ふいに、これまでの和夫との思い出がよみがえってきて、泣きそうになる。
 生まれたばかりの頃から、和夫は病弱で神経質な子どもだった。
 その和夫を、琴子は懸命に守り、愛し、ここまで育て上げてきたのだ。
 ある意味、和夫は琴子の愛の結晶だった。
 その和夫が、今、性交が可能なほど大人になって、母親の琴子を愛してくれている…。
 世間の目というタブーを取り払ってしまえば、母親にとってこれほど幸せなことはないのではないか、と琴子は思った。
 男の子を持つ世の母親たちは、実のところ、潜在意識の奥底で、息子との交接を夢見ているのではないか。
 そんな気さえするほどだ。
 思い返してみれば、琴子のママ友たちもそうだった。
 女の子を持つ母親と違い、男の子を持つ母親たちの溺愛ぶりは、時に異常に見えるほどだ。
 -息子は私好みの男に育てるのよー
 -結婚するまでに、私がいかに最高の女であるかを息子にわからせてやるの。若い女に奪られる前にねー
 中にはそんな大胆な発言をする者もいたほどだ。
 だが、和夫と一戦を越えてしまった今になると、琴子にも彼女たちの気持ちがよくわかった。
 特に和夫は顔にやけどを負い、おそらく今後、琴子以外の女生徒の性生活は無理だろう。
 ならば私が、最後までこの身を捧げるまで…。
 そう、一匹の性の奴隷として…。
 和夫に押しつけられ、ずっと不快だったその役割に、琴子は理解を示し始めていた。
 デスマスクに慣れ、和夫への愛が戻ってきたからかもしれない。
 あるいは単に、和夫とのセックスが夫のそれよりずっとよかったという、至極動物的な理由からかもしれない。
 どちらにせよ、理由などどうでもいいことだった。
 私は和夫の性奴隷になることを、自ら志願したようなものなのだ。
 だから、和夫、早く入れて…。
 ママのここは、あなたを思ってもうこんなに濡れてるの。
 全部あげるから、お願い、ママを、滅茶苦茶にして…。
 和夫の熱い亀頭が琴子の小陰唇に触れた時だった。
「おまえら、何やってるんだ!」
 ふいに怒声が響き渡り、琴子は反射的に和夫を抱きしめた。
 いつの間にか、寝室のドアが開いている。
 そして、そこに、あろうことか、ゆるんだネクタイを首からぶら下げた、夫の正一が立っていた。


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