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#116 嫉妬仮面①

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 どうやら『ピンキッシュ』は休憩時間に入るらしかった。
 開店から午後5時まで営業して、1時間店を閉め、また6時から再開するのだという。
 フラフラの躰でシャワーを浴び、琴子は仁美が買ってきた真新しい下着に着換えさせられた。
 それはブラもパンティもレース地で、肌が透けて見えるほど薄いものだった。
「ほかにも色々見繕ってきたんですのよ。琴子さんに似合いそうなセクシーな下着をね」
 着替えの済んだ琴子にランジェリーショップの袋を持たせて、仁美は微笑んだ。
 
 琴子が自分の中のローターの存在を思い出したのは、帰りのタクシーの中だった。
 疲れ切っていてすっかり忘れていたけど、そういえば、あれ、まだ中に入ったままだったわ・・・。
 幸い、ワイヤレス・リモコンのスイッチは切られているようで、今のところ振動は感じられない。
 タンポンを長時間入れている時のような違和感が、膣の奥に残っているだけである。
「ローターなら、琴子さんに差し上げますわ。そのブラウスとスカートも一緒に」
 タクシーの後部座席で身を摺り寄せるようにして隣に座っていた仁美が、居心地悪そうにごそごそし始めた琴子を見るなり、リモコンを差し出して、ぎゅっと手のひらに押しつけてきた。
「もしここで取り出しておきたいなら、手伝いますけど」
 淫蕩に微笑んで、琴子のむき出しの太腿に手を滑らせ、タイトスカートの中に入れてくる。
「あ、今はまだ、いいです」
 初老の運転手がバックミラー越しにスカートの中を覗こうとしているのに気づいて、琴子はかぶりを振った。
 家に帰って、落ち着いたら自分で取り出そう。
 こんなところで仁美の手を借りたら、またどんな悪戯をしかけられるか、わかったものではない。

 マンションに着き、エレベーターで5階に上がると、琴子の部屋の前で仁美が言った。
「きょうは楽しかった! またお声をおかけしますわ。どんなシチュエーションがいいか、よく考えておきますから。その時は、わたくしの差し上げた下着、ぜひつけてきてくださいね」
 曖昧な返事を返して、よろめくように部屋に入った。
 ソファに身を投げ出し、棚の上の置時計を見ると、もう夕方の6時を過ぎている。
 いけない。
 琴子は青くなった。
 夕食の準備をしなきゃ。
 夫が返ってくるのはまだ数時間後だが、先に和夫に何か食べさせなければ・・・。
 キッチンに立とうとしたところで、ふと魔が差した。
 裸で・・・エプロンだけつけて調理というのは、どうだろうか?
 今日は、夜になっても、蒸し暑い。
 せっかく新しい下着も買ってもらったのだし・・・。
 全裸でなければ、そのくらいのこと、許されるんじゃないかしら・・・?
 琴子の目は、テーブルに置いたリモコンに釘づけだった。
 裸エプロン姿で、あのスイッチを・・・。
 ああ、どうしよう。
 火照る頬を、思わず両手で挟んだ。
 私ったら、次から次へと妄想が湧いてきて、もう、止まらない・・・。

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