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#27 肉欲の疼き⑩
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どうやら風呂から出て、バスタオルを身体に巻いたまま、ソファで眠ってしまったようだ。
起きると、身体の隅々が痛んだ。
身を起こして、周りを見回してみる。
レースのカーテンから差し込む朝陽が、テーブルに幾何学模様を描いていた。
しばらく耳を澄ませてみたが、正一の気配はなかった。
どうやら、ソファでだらしなく眠る妻を放置して、会社に出かけて行ってしまったらしい。
みじめだった。
あの人には、私なんて、居ても居なくても同じなのだ。
浮気された上に、声もかけられず、こんなふうに放置されて…。
風邪を引いたのか、頭の芯がかすかに痛む。
のろのろと起き上がり、もう一度シャワーを浴びようとした時だった。
テーブルの上で、スマホが鳴った。
手に取ると、ラインのメッセージが入っていた。
和夫からである。
ー病室は、C棟の1412号室。
-待ってるよ。
琴子は液晶画面をじっと見つめた。
ただそれだけのメッセージだったが、少し救われた気がした。
少なくとも、私には、まだ待ってくれている人がいるー。
たとえ、その目的がどんなによこしまなものでも、無視され、邪魔にされるよりは、ずっといい…。
気持ちを切り替えることにした。
とりあえず、正一はもう出かけて家にいないのだ。
浮気の事実を問い質すにしても、それは彼が帰ってきてからでいい。
ならば、今日私にできることは、和夫の欲求を満たしてやることだけ。
ラインメッセージにある通り、和夫は個室から一般病棟に移ったはずである。
自由の効かない相部屋で、今度はいったい何をさせる気なのか、若干の興味がないわけではない。
シャワーを浴び、濡れた髪をドライヤーで乾かすと、簡単な朝食を摂った。
多少元気が出たところで、寝室に入った。
正一の腋臭の匂いに混じってまだかすかに甘い女の匂いが漂っているようで、琴子は窓を大きく開けた。
カーテンの隙間から吹き込む涼やかな夏の朝の風を火照った素肌に感じながら、化粧箪笥の前に立つ。
一番下の引き出しが、琴子の下着類の収納場所になっている。
悩んだ末、先日買った新しいインナーを試してみることにした。
レオタードタイプの、身体にフィットしたオフホワイトのボディスーツである。
背中は腰まで開き、後ろは紐状のTバック。
襟ぐりが大きいため、胸の谷間を強調するにはもってこいだ。
更に裏地が一切ないせいで、身に着けたが最後、乳首や陰部のスリットまで克明に浮き出てしまうに違いない。
きのうの下着に比べて露出度は低いが、身体のラインがすべて浮き彫りになってしまうだけに、こちらのほうがずっとエロチックな気がする。
意を決して、着てみることにした。
太っているわけではないが、身体を入れるのにはかなりの苦労が必要だった。
なんとか装着し、鏡の前に立ってみる。
「まあ…」
鏡面に映った己の全身像をひと目見るなり、琴子は思わず口元を手で押さえていた。
予想通り、いや、それ以上だった。
生地があまりに薄いため、乳首はおろか、乳輪から臍まで、しっかり透けてしまっている。
股の間も例外ではなかった。
恥丘の隆起はおろか、淡い陰毛の茂みも、その下の筋までもがくっきり浮き出てしまっている。
まるで別人にでもなったかのような気分だった。
激しい胸の高鳴りを感じながら、そのまま鏡台の前の椅子に座ると、更なる別人に変身すべく、琴子は念入りに化粧をし始めた。
起きると、身体の隅々が痛んだ。
身を起こして、周りを見回してみる。
レースのカーテンから差し込む朝陽が、テーブルに幾何学模様を描いていた。
しばらく耳を澄ませてみたが、正一の気配はなかった。
どうやら、ソファでだらしなく眠る妻を放置して、会社に出かけて行ってしまったらしい。
みじめだった。
あの人には、私なんて、居ても居なくても同じなのだ。
浮気された上に、声もかけられず、こんなふうに放置されて…。
風邪を引いたのか、頭の芯がかすかに痛む。
のろのろと起き上がり、もう一度シャワーを浴びようとした時だった。
テーブルの上で、スマホが鳴った。
手に取ると、ラインのメッセージが入っていた。
和夫からである。
ー病室は、C棟の1412号室。
-待ってるよ。
琴子は液晶画面をじっと見つめた。
ただそれだけのメッセージだったが、少し救われた気がした。
少なくとも、私には、まだ待ってくれている人がいるー。
たとえ、その目的がどんなによこしまなものでも、無視され、邪魔にされるよりは、ずっといい…。
気持ちを切り替えることにした。
とりあえず、正一はもう出かけて家にいないのだ。
浮気の事実を問い質すにしても、それは彼が帰ってきてからでいい。
ならば、今日私にできることは、和夫の欲求を満たしてやることだけ。
ラインメッセージにある通り、和夫は個室から一般病棟に移ったはずである。
自由の効かない相部屋で、今度はいったい何をさせる気なのか、若干の興味がないわけではない。
シャワーを浴び、濡れた髪をドライヤーで乾かすと、簡単な朝食を摂った。
多少元気が出たところで、寝室に入った。
正一の腋臭の匂いに混じってまだかすかに甘い女の匂いが漂っているようで、琴子は窓を大きく開けた。
カーテンの隙間から吹き込む涼やかな夏の朝の風を火照った素肌に感じながら、化粧箪笥の前に立つ。
一番下の引き出しが、琴子の下着類の収納場所になっている。
悩んだ末、先日買った新しいインナーを試してみることにした。
レオタードタイプの、身体にフィットしたオフホワイトのボディスーツである。
背中は腰まで開き、後ろは紐状のTバック。
襟ぐりが大きいため、胸の谷間を強調するにはもってこいだ。
更に裏地が一切ないせいで、身に着けたが最後、乳首や陰部のスリットまで克明に浮き出てしまうに違いない。
きのうの下着に比べて露出度は低いが、身体のラインがすべて浮き彫りになってしまうだけに、こちらのほうがずっとエロチックな気がする。
意を決して、着てみることにした。
太っているわけではないが、身体を入れるのにはかなりの苦労が必要だった。
なんとか装着し、鏡の前に立ってみる。
「まあ…」
鏡面に映った己の全身像をひと目見るなり、琴子は思わず口元を手で押さえていた。
予想通り、いや、それ以上だった。
生地があまりに薄いため、乳首はおろか、乳輪から臍まで、しっかり透けてしまっている。
股の間も例外ではなかった。
恥丘の隆起はおろか、淡い陰毛の茂みも、その下の筋までもがくっきり浮き出てしまっている。
まるで別人にでもなったかのような気分だった。
激しい胸の高鳴りを感じながら、そのまま鏡台の前の椅子に座ると、更なる別人に変身すべく、琴子は念入りに化粧をし始めた。
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