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#22 決断
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「え?」
僕はポカンと口を開けて氷室基子の横顔を見た。
凛々しいその横顔は地下伽藍の謎めいた微光に照らされて美しく輝いている。
あんなに拒否ってたのに、突然何を?
カエルくんも同じ思いらしく、茫然とした表情で地面から基子を見上げている。
「あれよあれ」
基子が指さしたのは、四神獣の中でもひときわ黒々と立ちはだかる巨岩のような影だった。
「玄武、ですか…?」
基子の視線を追ったカエルくんの大きな目に、次第に理解の色が浮かび上がった。
「なるほど、そうか…。玄武は亀だ。あの炭素カーボン製の甲羅なら、鉄の数十倍固いから、トウテツのドリル攻撃にもびくともしない。しかも、玄武のくちばしはダイヤモンドですらかみ砕く強度とパワーを秘めている。うん! 言われてみればそうだ。この場合、玄武で出撃するのが最適解だよ!」
「亀ねえ…」
僕は首をひねった。
僕としては、朱雀で空を飛びたい気分だったのだ。
現に、壁面からうっすらと透けて見える朱雀の赤いシルエットは、翼を休めた火の鳥のようでめちゃかっこいい。
「亀の何が悪いの? うちにもケヅメリクガメの太郎がいるけど、亀は絶対に人を裏切らない」
そのつぶやきを耳ざとく聞きつけて、基子がきつい目で僕を睨んだ。
僕は首をすくめた。
僕ときたら、さっきから彼女に睨まれてばっかりだ。
こんな僕でも、もっと優しい目で見てもらえる日が、いつか来るのだろうか。
「では、準備をしますので、おふたりは玄武のほうへ」
カエルくんが言い、黒々とした影のほうへぴょんぴょんと跳ねていく。
「…?」
僕は「どうする?」と目顔で基子にたずねてみた。
「1回だけだよ」
僕には見向きもせず、カエルくんの背中に向かって基子が叫んだ。
「緊急事態だから、今回だけは協力してあげる。でも次はナシだからね!」
僕はポカンと口を開けて氷室基子の横顔を見た。
凛々しいその横顔は地下伽藍の謎めいた微光に照らされて美しく輝いている。
あんなに拒否ってたのに、突然何を?
カエルくんも同じ思いらしく、茫然とした表情で地面から基子を見上げている。
「あれよあれ」
基子が指さしたのは、四神獣の中でもひときわ黒々と立ちはだかる巨岩のような影だった。
「玄武、ですか…?」
基子の視線を追ったカエルくんの大きな目に、次第に理解の色が浮かび上がった。
「なるほど、そうか…。玄武は亀だ。あの炭素カーボン製の甲羅なら、鉄の数十倍固いから、トウテツのドリル攻撃にもびくともしない。しかも、玄武のくちばしはダイヤモンドですらかみ砕く強度とパワーを秘めている。うん! 言われてみればそうだ。この場合、玄武で出撃するのが最適解だよ!」
「亀ねえ…」
僕は首をひねった。
僕としては、朱雀で空を飛びたい気分だったのだ。
現に、壁面からうっすらと透けて見える朱雀の赤いシルエットは、翼を休めた火の鳥のようでめちゃかっこいい。
「亀の何が悪いの? うちにもケヅメリクガメの太郎がいるけど、亀は絶対に人を裏切らない」
そのつぶやきを耳ざとく聞きつけて、基子がきつい目で僕を睨んだ。
僕は首をすくめた。
僕ときたら、さっきから彼女に睨まれてばっかりだ。
こんな僕でも、もっと優しい目で見てもらえる日が、いつか来るのだろうか。
「では、準備をしますので、おふたりは玄武のほうへ」
カエルくんが言い、黒々とした影のほうへぴょんぴょんと跳ねていく。
「…?」
僕は「どうする?」と目顔で基子にたずねてみた。
「1回だけだよ」
僕には見向きもせず、カエルくんの背中に向かって基子が叫んだ。
「緊急事態だから、今回だけは協力してあげる。でも次はナシだからね!」
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