制服の胸のここには

戸影絵麻

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#20 四神獣 

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 透き通った壁の奥に格納された四体の神獣…。
 それはある意味、心を揺さぶられる荘厳な眺めだった。
「すごい…」
 僕は感動で声を震わせた。
「しかも、よく見ると、これ、四体とも、ロボットですね…」
 そうなのだ。
 玄武は灰色の亀。
 青龍は青い竜。
 白虎は白い虎。
 朱雀は赤い鳥。
 この四体の巨獣はそれぞれ名前通りの姿形をしているが、どれもメタリックな質感を醸し出しているのである。
「さよう。君たちはこの神獣ロボットに乗って戦う戦士というわけなのだよ」
 校長の口調に戻ったカエルくんが言った。
「乗って戦う? うわ、なんかアニメの巨大ロボットものみたいですね」
「まあそうだが…。しかし、これは現実なのだよ」
 アニメにたとえられ、カエルくんは不服そうだ。
 聞こえよがしに僕に向かって舌打ちすると、
「君たち二人はマルドック人のDNAを受け継ぐ者。四神獣を操作できるのは、もはや君たちしかいないんだ」
「バカバカしい」
 水を差したのは氷室基子である。
「ロボットなら、遠隔操作すればいいじゃない。なにもあんなものに乗らなくても。現代の技術ならそんなの朝飯前のはずでしょ」
「いや、あれをつくったのは、そもそも現代の人類ではなく…。それに、最終兵器には悪用を防ぐためにも遺伝子キーを使用するのが最適解なのだ。DNA認証で動くようにすれば、クローンでも作らない限り、敵が利用することは不可能だからね」
「なんかワクワクしてきた」
 僕は少女漫画の主人公のように目をキラキラ輝かせた。
 グレーな日常に、一筋の光が差し込んできた気分だった。
 体育館でいじめられた挙句、情けないことに絶頂に達してしまい、精を漏らしてしまったクズのようなこの身…。
 そんな僕でも、人にできないことができる。
 しかもそれは、あんなすごいロボットを操縦して怪獣と闘い、人類を守るという大役なのだ。
「なんだかうれしそうね、金田君。なんなら、あなたひとりでやりなさいよ」
 僕のウキウキした気分を読み取ったのか、突き放すような口調で基子が言った。
「悪いけど、私にはそんな幼稚な趣味はないの。第一、その手のアニメやゲーム、くだらないから嫌いだし」
 僕に向けた切れ長の目に、人を見下すような冷徹な光が宿っている。
「いやいや、それは困る」
 口をはさんできたのは、カエルくんだった。
「四神獣は操縦者が二人そろわないと作動しない。これは悪用を防ぐための措置であるとともに、人間の精神力を二乗することによってパワーを増幅するための仕掛けなのだ。基子ちゃん、あれらを動かすには、どうしても君の協力が必要なのだよ」
「嫌だと言ったら?」
 氷室基子が冷たく言い放った。
「なんで私が、よりによってこの変態クズ野郎と一緒に、馬鹿げたロボットなんかに乗らなきゃならないの?」
 怒りに蒼白になったその表情は、断固とした拒否を現していた。
 
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