制服の胸のここには

戸影絵麻

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#2 予感

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 すぐ後ろで派手な音が響き渡った。
「悪い悪い、俺、足が長いもんでさ」
 高尾公親のふざけたせりふに続き、どっと上がる笑い声。
 振り向いたのは条件反射のようなものだった。
 視界に入ってきたのは、机と机の間の通路に這いつくばった痩せた少年の姿である。
 金田猛。
 クラス一の弄られっ子だ。
 日課のように高尾たちクラスカーストの頂にいる者たちの餌食になっている。
 意図せず、目が合った。
 顔を上げた猛は負け犬の目をしていた。
 基子はこの卑屈な目が大嫌いだった。
 金田猛は完全に名前負けしていると思う。
 視線を逸らそうとした瞬間、金田猛が右手に紙切れを握っているのが見えた。
 何かのメモのようだ。
 女性っぽい達筆で、数行、文章が書かれている。
 その末尾に己の名前を認めて、基子は眉をひそめた。
 ー授業後 体育館ー
 猛があわてて紙切れを握りつぶすまでの数秒のうちに、断片的な情報を読み取った。
 頭の回転の速い基子には、それだけで十分だった。
 無意識に、太いため息が口をついて出た。
 まったくもって、面倒な。
 いじめなら、見えないところでやってくれればいいものを。
 きょうは6時半からふぁみろうとデートだって言うのに。
「こ、こっちこそ、ごめん」
 その時猛のお追従が聴こえてきて、基子はマジで吐きそうになった。
 
 
 
 
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