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#218 暗黒の塔⑫
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「情報提供料?」
私は絶句した。
まったくもって、とんでもないガキである。
いったいどんな教育を受けてきたのか。
親の顔が見たいとはこのことだ。
『走れメロス』の台詞ではないけれど、ものも言いたくなくなった。
「あいにく現金の持ち合わせはないな。カードならあるが」
あの万能プレミアムカードをかざして、ラルクが言った。
こっちの世界でも、向こうの世界でも使える便利なアレである。
「カードはだめでちゅ。あたちは未成年でちゅから、口座が開けませぬ」
高杉花は取りつく島もない。
「物々交換でもいいんだな」
一平がポケットから何かをつかみ出す。
「なら、これでどうだ」
手のひらの上に乗っているのは、半ば溶けかけた飴玉である。
「なんでちゅか? こりは?」
「見りゃわかるだろ? おいらがさっきまで舐めてたのど飴だよ」
花の顔が赤くなり、ひとまわり大きく膨張する。
怒ったらしい。
「あなたは時空魔導士を愚弄する気でちゅか」
「てへ。やっぱダメか」
一平が舌を出す。
「ソフィアはどうだ? 何か持ってるか?」
「何かって言われても…」
もぞもぞしながらソフィアが取り出したのは、銀紙に包んだ板チョコである。
ただし、半分しかなく、ご丁寧にも本人の歯型が刻み込まれている。
「チョコは好物でちゅ。でも、食べかけは問題外でちゅ」
むっとしたように、花が言う。
「美少女の歯型つきなのに?」
ってソフィア、幼児にそれは効かないと思うよ。
「翔子は? エッチなグッズ、色々持ってんだろ?」
からかうように一平が突っ込みを入れてくる。
「コンドーム1グロス」
憮然として、私は言い返した。
「初子のコクピットに行けば、とって来れるけど」
「幼児にコンドームは不要でちゅ。まだニンシンしにゃいから」
予想通り、花があっさり却下した。
「どいつもこいつも使えんな」
ラルクがため息をつく。
「仕方ない。これをやろう」
そうため息をついて差し出したのは、どこかで見たことのあるシロモノだった。
「なんだそれ? 眼鏡か?」
一平が訊いた。
「にしては、ちょっとごつくない?」
と、これはソフィア。
「あ、ひょっとして」
思い出した。
でも、なんでこんなものを?
まさかあの時、赤福餅やういろうと一緒に…。
「小さい字でもよく見える、名付けてハズキルーペだ。こんなこともあろうかと、この前あっちに行った時、名古屋駅とやらで買っておいたのだ」
私は呆れた。
こんなこともあろうかって、ラルクそれ、いったいどんな予知能力なのよ?
私は絶句した。
まったくもって、とんでもないガキである。
いったいどんな教育を受けてきたのか。
親の顔が見たいとはこのことだ。
『走れメロス』の台詞ではないけれど、ものも言いたくなくなった。
「あいにく現金の持ち合わせはないな。カードならあるが」
あの万能プレミアムカードをかざして、ラルクが言った。
こっちの世界でも、向こうの世界でも使える便利なアレである。
「カードはだめでちゅ。あたちは未成年でちゅから、口座が開けませぬ」
高杉花は取りつく島もない。
「物々交換でもいいんだな」
一平がポケットから何かをつかみ出す。
「なら、これでどうだ」
手のひらの上に乗っているのは、半ば溶けかけた飴玉である。
「なんでちゅか? こりは?」
「見りゃわかるだろ? おいらがさっきまで舐めてたのど飴だよ」
花の顔が赤くなり、ひとまわり大きく膨張する。
怒ったらしい。
「あなたは時空魔導士を愚弄する気でちゅか」
「てへ。やっぱダメか」
一平が舌を出す。
「ソフィアはどうだ? 何か持ってるか?」
「何かって言われても…」
もぞもぞしながらソフィアが取り出したのは、銀紙に包んだ板チョコである。
ただし、半分しかなく、ご丁寧にも本人の歯型が刻み込まれている。
「チョコは好物でちゅ。でも、食べかけは問題外でちゅ」
むっとしたように、花が言う。
「美少女の歯型つきなのに?」
ってソフィア、幼児にそれは効かないと思うよ。
「翔子は? エッチなグッズ、色々持ってんだろ?」
からかうように一平が突っ込みを入れてくる。
「コンドーム1グロス」
憮然として、私は言い返した。
「初子のコクピットに行けば、とって来れるけど」
「幼児にコンドームは不要でちゅ。まだニンシンしにゃいから」
予想通り、花があっさり却下した。
「どいつもこいつも使えんな」
ラルクがため息をつく。
「仕方ない。これをやろう」
そうため息をついて差し出したのは、どこかで見たことのあるシロモノだった。
「なんだそれ? 眼鏡か?」
一平が訊いた。
「にしては、ちょっとごつくない?」
と、これはソフィア。
「あ、ひょっとして」
思い出した。
でも、なんでこんなものを?
まさかあの時、赤福餅やういろうと一緒に…。
「小さい字でもよく見える、名付けてハズキルーペだ。こんなこともあろうかと、この前あっちに行った時、名古屋駅とやらで買っておいたのだ」
私は呆れた。
こんなこともあろうかって、ラルクそれ、いったいどんな予知能力なのよ?
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