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#211 暗黒の塔⑤
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ギルドマスター珍墨彩の説明によると、この世界では、ジョブのレベルが60に達すると、それぞれそのジョブに合ったご褒美、すなわち、防具一式と武器一式が冒険者ギルドからもらえるのだという。
ただしそれにはギルドへの申請が必要で、あれよあれよという間にレベル60を突破してしまった私には、今までその機会がなかったというわけだった。
「そんな特典があるなら、もっと早く教えてくれればよかったのに」
ぶつくさ言いながら陳列された装備を眺めていると、
「どう? これ?」
早々と更衣室で着替えたソフィアが、にこにこ顔で声をかけてきた。
「わあ、すごい。なかなかいいんじゃない?」
振り向いて、驚きに私は目を見張った。
今度のソフィアの防具は深紅のビキニアーマーだ。
手足は同じく赤のロンググローブとロンググローブでガードされ、左手の上腕部には小さめの丸い盾までセットされていた。
前より露出度は上がっているけど、美少女アマゾネスみたいでとってもサマになっている。
もっとも、ソフィアみたいな美少女は、何を着ても似合ってしまうのだけど。
「でしょ? 武器もほら、この通り」
ソフィアが背中に背負っているのは、グランディルをひと回り大きくしたような大剣とごつい戦斧、それに長い槍である。
「いいけど、それ、重くない?」
訊いたら、
「だってあたしは戦士だよ。そんなこと言ってたら戦士失格じゃない」
という、至極まっとうな答えが返ってきた。
「そうだね。それに、疲れた時には一平に持たせればいいし」
うなずくと、
「ん? 呼んだ?」
私の声を聞きつけて、やはり着替えを終えた一平がやってきた。
ずいぶんとこざっぱりした格好をしている。
似たものといえば、子供向きの忍者のコスプレだ。
武器は腰に下げたフライパンと短刀。
おかしな組み合わせだけど、なんせジョブが料理人とシーフなのだから、これはまあ、仕方ないのだろう。
「わあ、一平もやっとらしくなったじゃん」
ソフィアが珍しく一平をほめている。
無理もない。
これまでの一平の服装ときたら、まんま終戦直後の戦災孤児みたいだったからだ。
「どうだ、終わったか?」
低いバリトンで話しかけられたので振り向くと、今度はラルクが立っていた。
「へーえ、兄者もけっこう男前だね」
ソフィアの言う通り、今度のラルクは19世紀倫敦の紳士風である。
イメージとしては、そう、あのシャーロックホームズに近い。
武器は分厚い革表紙の本と口にくわえたパイプだそうだ。
本は六法全書かと思ったらそうではなく、なんでも『智慧の書』という哲学書なのだという。
ところどころ未知の言語が使われていて、史上最高に難解なのだけれど、解き明かすとなんと世界のすべてがわかるらしい。
「ここには魔王の弱点も書かれている。いまだかつて解読した者は誰もいないそうだが、できればこの手で挑戦してみたい」
とのことだ。
でも、そんなうまい話、あるかな。
まあ、せいぜいジョブ読書家のスキルに期待しよう。
「それで、みんな準備そろったのか?」
「翔子がまだみたいなの」
私の代わりにソフィアが答えた。
そうなのだ。
実は、私は悩んでいた。
エロ魔導士というのは、どんだけレアなジョブなのか。
数ある防具の中で、エロ魔導士用は今目の前にあるこれしかない。
薄いピンクのスケスケのベビードールに、おそろしくちっちゃなブラとショーツのセットである。
ベビードールというのはミニワンピ型のネグリジェみたいなもので、丈の短さも危険水域を突破しているし、なんといってもこの透け具合。
天の羽衣もかくやって感じじゃないの。
ブラはほとんど乳首だけを隠すニップレスだし、ショーツは当然のことながらまたTバックで、サイドは紐、横幅は3センチあるかどうかといったところだ。
「これ、どう見ても、寝間着って感じなんだけど」
私が渋っていると、口元に意味ありげな笑みを貼りつけた珍墨彩が近づいてきた。
「それがそうでもないのですよ。なにはともあれ、まずは着替えてみてください。お美しいエロ魔導士さま」
ただしそれにはギルドへの申請が必要で、あれよあれよという間にレベル60を突破してしまった私には、今までその機会がなかったというわけだった。
「そんな特典があるなら、もっと早く教えてくれればよかったのに」
ぶつくさ言いながら陳列された装備を眺めていると、
「どう? これ?」
早々と更衣室で着替えたソフィアが、にこにこ顔で声をかけてきた。
「わあ、すごい。なかなかいいんじゃない?」
振り向いて、驚きに私は目を見張った。
今度のソフィアの防具は深紅のビキニアーマーだ。
手足は同じく赤のロンググローブとロンググローブでガードされ、左手の上腕部には小さめの丸い盾までセットされていた。
前より露出度は上がっているけど、美少女アマゾネスみたいでとってもサマになっている。
もっとも、ソフィアみたいな美少女は、何を着ても似合ってしまうのだけど。
「でしょ? 武器もほら、この通り」
ソフィアが背中に背負っているのは、グランディルをひと回り大きくしたような大剣とごつい戦斧、それに長い槍である。
「いいけど、それ、重くない?」
訊いたら、
「だってあたしは戦士だよ。そんなこと言ってたら戦士失格じゃない」
という、至極まっとうな答えが返ってきた。
「そうだね。それに、疲れた時には一平に持たせればいいし」
うなずくと、
「ん? 呼んだ?」
私の声を聞きつけて、やはり着替えを終えた一平がやってきた。
ずいぶんとこざっぱりした格好をしている。
似たものといえば、子供向きの忍者のコスプレだ。
武器は腰に下げたフライパンと短刀。
おかしな組み合わせだけど、なんせジョブが料理人とシーフなのだから、これはまあ、仕方ないのだろう。
「わあ、一平もやっとらしくなったじゃん」
ソフィアが珍しく一平をほめている。
無理もない。
これまでの一平の服装ときたら、まんま終戦直後の戦災孤児みたいだったからだ。
「どうだ、終わったか?」
低いバリトンで話しかけられたので振り向くと、今度はラルクが立っていた。
「へーえ、兄者もけっこう男前だね」
ソフィアの言う通り、今度のラルクは19世紀倫敦の紳士風である。
イメージとしては、そう、あのシャーロックホームズに近い。
武器は分厚い革表紙の本と口にくわえたパイプだそうだ。
本は六法全書かと思ったらそうではなく、なんでも『智慧の書』という哲学書なのだという。
ところどころ未知の言語が使われていて、史上最高に難解なのだけれど、解き明かすとなんと世界のすべてがわかるらしい。
「ここには魔王の弱点も書かれている。いまだかつて解読した者は誰もいないそうだが、できればこの手で挑戦してみたい」
とのことだ。
でも、そんなうまい話、あるかな。
まあ、せいぜいジョブ読書家のスキルに期待しよう。
「それで、みんな準備そろったのか?」
「翔子がまだみたいなの」
私の代わりにソフィアが答えた。
そうなのだ。
実は、私は悩んでいた。
エロ魔導士というのは、どんだけレアなジョブなのか。
数ある防具の中で、エロ魔導士用は今目の前にあるこれしかない。
薄いピンクのスケスケのベビードールに、おそろしくちっちゃなブラとショーツのセットである。
ベビードールというのはミニワンピ型のネグリジェみたいなもので、丈の短さも危険水域を突破しているし、なんといってもこの透け具合。
天の羽衣もかくやって感じじゃないの。
ブラはほとんど乳首だけを隠すニップレスだし、ショーツは当然のことながらまたTバックで、サイドは紐、横幅は3センチあるかどうかといったところだ。
「これ、どう見ても、寝間着って感じなんだけど」
私が渋っていると、口元に意味ありげな笑みを貼りつけた珍墨彩が近づいてきた。
「それがそうでもないのですよ。なにはともあれ、まずは着替えてみてください。お美しいエロ魔導士さま」
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