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#210 暗黒の塔④
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元の世界に戻って距離を稼ぎ、それからこっち側にもう一回転移していきなり敵陣のど真ん中に突撃するー。
なんか、ズルしてるみたいであんまり冒険者らしくない。
そろそろボス戦が近いのだから、これがゲームであれば、勇者なら勇者らしく、正々堂々と正面突破を図るべきなのかもしれない。
でも、初子がメンテで使えない以上、その手で行くのがベストだろうと私も思う。
敵陣までの距離によっては新幹線じゃなくて飛行機に乗ることになるかもしれないけれど、なんなら途中で我が家に寄って旅費を調達することだってできるのだ。
ともあれ、まずはギルドで装備を整え、それから時空魔導士とやらを探さねば。
ギルドは目抜き通りの真ん中あたりにある、しゃれたつくりの店だった。
外見は気のせいかマクドナルドに似ている。
店の横に自転車がいっぱい止まっている様子からしても、もろマックだろう。
自動ドア(!)をくぐると、
「いらっしゃいませー」
さわやかな女店員の声が飛んできた。
目の前にカウンターがあり、客が列を作って順番を待っている。
ただ、ハンバーガーを買っているのではなく、カウンターの受付にある掌紋認証装置みたいなのに手のひらを乗せて、なにか検査でもしているような感じである。
待つほどもなく、先頭のソフィアの番が回ってきた。
「冒険者様ご一行ですね。記録の更新をお願いいたします」
笑顔を振りまいて、店員が言った。
「はいな」
ソフィアがうなずき、左手のブレスレットをはずした。
それを手に持ち、受付のカードリーダーみたいな機械の上にかざした。
ピーヒャララ。
気の抜けた笛みたいな音が鳴った。
「あら、お見事」
店員の眼が丸くなる。
「戦士65、竜騎士34です。レベル60超えですから、ボーナス特典ゲットですね」
続くラルクは、学者70、読書家35.
一平ですら、料理人60、シーフ30になっていた。
不思議といえば不思議である。
専ら敵と戦ったのはこの私なのに、ほとんど何もしていないこの3人のレベルまで上がっているとは。
おそらくパーティというのは、そういうものなのだろう。
で、私はといえば、泣く子も黙るエロ魔導士80、踊り子40の大台だ。
「す、すごいです。私、初めてです。レベル80のエロ魔導士様なんて」
店員の女の子は、感動でつぶらな瞳をうるうるさせている。
褒められて悪い気はしないけど、その”エロ”の部分を大声で言わないでほしかった。
「では、ご一行様、奥でギルドマスターのお目通りを」
カウンターの横板を開き、女の子が私たちを中に招き入れた。
ドアの奥は厨房かと思ったら、体育館みたいな広い空間だった。
すごいのは、左右と正面の壁におびただしい防具や武器の類いがずらりと飾られていることだ。
「これはこれは、勇者の皆様。レベルアップ、おめでとうございます」
椅子から立ち上がり、キラキラの衣装を身に着けたちょび髭の男が歓迎するように両手を広げた。
中国人のマジシャンみたいな、いささかいかがわしい雰囲気のやさ男である。
「私がこのラスカルのギルドマスター、陳墨彩でございます」
男の自己紹介に、
「チンボクサイ? なんだそれ」
ぼそりと一平がつぶやいた。
気持ちはわかるけど、その名前、いちいち口に出して反復するなっての!
なんか、ズルしてるみたいであんまり冒険者らしくない。
そろそろボス戦が近いのだから、これがゲームであれば、勇者なら勇者らしく、正々堂々と正面突破を図るべきなのかもしれない。
でも、初子がメンテで使えない以上、その手で行くのがベストだろうと私も思う。
敵陣までの距離によっては新幹線じゃなくて飛行機に乗ることになるかもしれないけれど、なんなら途中で我が家に寄って旅費を調達することだってできるのだ。
ともあれ、まずはギルドで装備を整え、それから時空魔導士とやらを探さねば。
ギルドは目抜き通りの真ん中あたりにある、しゃれたつくりの店だった。
外見は気のせいかマクドナルドに似ている。
店の横に自転車がいっぱい止まっている様子からしても、もろマックだろう。
自動ドア(!)をくぐると、
「いらっしゃいませー」
さわやかな女店員の声が飛んできた。
目の前にカウンターがあり、客が列を作って順番を待っている。
ただ、ハンバーガーを買っているのではなく、カウンターの受付にある掌紋認証装置みたいなのに手のひらを乗せて、なにか検査でもしているような感じである。
待つほどもなく、先頭のソフィアの番が回ってきた。
「冒険者様ご一行ですね。記録の更新をお願いいたします」
笑顔を振りまいて、店員が言った。
「はいな」
ソフィアがうなずき、左手のブレスレットをはずした。
それを手に持ち、受付のカードリーダーみたいな機械の上にかざした。
ピーヒャララ。
気の抜けた笛みたいな音が鳴った。
「あら、お見事」
店員の眼が丸くなる。
「戦士65、竜騎士34です。レベル60超えですから、ボーナス特典ゲットですね」
続くラルクは、学者70、読書家35.
一平ですら、料理人60、シーフ30になっていた。
不思議といえば不思議である。
専ら敵と戦ったのはこの私なのに、ほとんど何もしていないこの3人のレベルまで上がっているとは。
おそらくパーティというのは、そういうものなのだろう。
で、私はといえば、泣く子も黙るエロ魔導士80、踊り子40の大台だ。
「す、すごいです。私、初めてです。レベル80のエロ魔導士様なんて」
店員の女の子は、感動でつぶらな瞳をうるうるさせている。
褒められて悪い気はしないけど、その”エロ”の部分を大声で言わないでほしかった。
「では、ご一行様、奥でギルドマスターのお目通りを」
カウンターの横板を開き、女の子が私たちを中に招き入れた。
ドアの奥は厨房かと思ったら、体育館みたいな広い空間だった。
すごいのは、左右と正面の壁におびただしい防具や武器の類いがずらりと飾られていることだ。
「これはこれは、勇者の皆様。レベルアップ、おめでとうございます」
椅子から立ち上がり、キラキラの衣装を身に着けたちょび髭の男が歓迎するように両手を広げた。
中国人のマジシャンみたいな、いささかいかがわしい雰囲気のやさ男である。
「私がこのラスカルのギルドマスター、陳墨彩でございます」
男の自己紹介に、
「チンボクサイ? なんだそれ」
ぼそりと一平がつぶやいた。
気持ちはわかるけど、その名前、いちいち口に出して反復するなっての!
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