異世界転生して謎のリングをアソコに装着したらエロ魔導士になりましたとさ

戸影絵麻

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#189 初子と怪獣大戦争⑯

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「ちょっとラルク、あんた自分が何言ってるのかわかってるの? 初子は怪獣相手のラブドールじゃないんだよ? セクハラ発言もいいとこだってば! そんなこと公の場で口にしたら、大臣ならすぐに罷免だよ!」
 さすがの私も黙っていられず、初子の名誉を守るため、いきり立って反論したが、このとことんインドア派のえせシャーロックホームズみたいなイケメンは、その程度のことでひるむ相手ではない。
「何、俺は戦略をさずけたまでさ。おそらく今の初子のレベルでは、あの獣王に身体能力で勝つことは難しい。そこで寝技に持ち込んで、相手のスキをつくんだ。これは昔から女性にだけ許された特権だ。セクハラだ何だと騒ぐことでもないだろう」
 と、簡単に言い負かされてしまった。
 なるほど、今の初子は木綿のブラとパンティだけという、見るからに防御力の低そうなコスチュームしか身に着けていないのだ。
 前のスク水よりましだみたいなことを女神は言ってたけど、あまり強そうには思えない。
 しかし、よりによって、キングコングなみの巨大ゴリラ相手に寝技とは。
 私はつくづく初子が不憫になった。
「おい! 何をのんびりおしゃべりしてんだよ! 翔子、早くしないと危ないって!」
 ションベンでもちびりそうなのか、股間を両手で押さえて一平がぴょんぴょん飛び跳ねた。
「お願い、翔子、辛いのはわかるけど、ここはラルクの言う通りにして!」
 一平に続いて、ソフィアが必死に訴える。
 私はふううと長いため息をついた。
 美少女戦士ソフィアにまでそうせがまれたら、仕方ない、もうやるしかないだろう。
 天を仰いで、両手を伸ばす。
 別にこんなことしなくてもいいのだが、プリケツ・マンマミーアをはじめ、村人たちも見ているのだ。
 今後のためにも、演出はできるだけ派手なほうがいいだろう。
 そう思ったのだ。
「ファック・ミー!」
 高らかに叫んだ。
 村人たちのざわめきが聞こえたのも一瞬のこと、ふと目を開けると、そこはもう、初子のコクピットの中だった。
 180度展望スクリーンには、いつもの無味乾燥な格納庫の壁が映っている。
 おなじみになり過ぎて、もう、ボルトの頭の数すら空で言えるほどだ。
 左上の矩形の分割画面には、初子の全体像。
 黒髪ショートカット、木綿の下着セットのの初子は、そのサイズを除けば、まんま部室で着換え中のJKである。
 -忙しいですねー
 笑いを含んだ声で、レベル管理の女神が言った。
 -1日に、3体の怪獣と戦うなんてー
 言い忘れてたけど、初子に乗ると、女神の声は、頭の中だけでなく、コクピット内の拡声器を通しても聞こえてくる。
 戦闘の際、私が指示を聞き洩らさないための配慮なのだろう。
「エロ魔導士って、ほんとに損なジョブだよね」
 ハーネスやキャプチャーケーブルを全身に取りつけながら、私はぼやいた。
「だって、これが普通の魔導士なら、ただ呪文を唱えて、ファイア!とか、ブリザド!とかひたすら叫んでればいいわけでしょう? でも、エロ魔導士は、なんていうか、文字通り身体を張らなきゃなんないんだもの。まったくもってナンセンスだよ。こんなの肉体労働じゃない。ジョブに3Kがあるなら、それは絶対エロ魔導士だよ」
 ーまあまあ、落ち着いて。エロ魔導士にはエロ魔導士にしかできないことがあるのです。例えば今度のお相手のあの大猿ですが、通常の黒魔法では、メテオ級の大技でないと仕留められないでしょう。でも、そんな強大な魔法を使ったら、島ごと吹っ飛んでしまいます。ところが、エロ魔導士なら、周囲の環境に損害を与えることなく、すみやかに相手を懐柔することができるのです。これはすごいことだと思いませんか?ー
 世界にやさしいエロ魔導士というわけか。
 まあ、言われてみると、そうかもしれないな。
 なんて、すぐ人の意見に感心してしまうのが私の悪い癖である。
「あ、じゃあ、こういうのはどう? 初子に乗ったまま、召喚獣使うの。確か2匹ぐらいいたよね? ”美尻ボンバー”と、”ローリング69”だっけ?」
 そうだ。その手がある。われながらいい思い付きじゃない。
 召喚獣バトルなら、私も初子も手を汚さないで済むのだから。
 -初子搭乗の際には、召喚獣は使えません。巨大な女が2人も3人もいたら色々やっかいなので、使用不可にしてあるのですー
 ええー? なんてみょうちきりんな理屈なの?
 -時間がありません。準備、いいですか?ー
 女神の声音が、真剣みを帯びたものに変わった。
「しょうがないなあ。いいよ」
 手首を片方ずつ動かし、ケーブルの接続具合を確かめて、私はうなずいた。
 それと同時に、あのBGMが流れ始めた。
 バンダバダバダバダバ…。
 コースゲート、オープン、コースゲート、オープン…。
 初子出動の合図だった。



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