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#184 初子と怪獣大戦争⑪
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チャカポコチャカポコ…。
なんだろう?
この心浮き立つような、アフリカン・パーカッション的なリズムは…?
それに、この匂い。
なんだか濃厚なスープでも煮ているような、そんなかぐわしい香りである。
でも、その中に血の匂いが混じりこんでいるような気がするのは、なぜだろう。
「うーん」
目を開けると、まず周囲を囲む高い木の柵が視界に飛び込んできた。
児童公園くらいの、円形の広場に私はいた。
丈高い木製の柵に沿って、棕櫚の葉で屋根を葺いた背の低い住居が並んでいる。
ついうっかり、
「きゃ」
と声を上げてしまったのは、私を取り囲む男たちの恰好があまりに異様だったからだ。
裸の身体全体に金色の塗料を塗り、誰もが股間から湾曲した象牙そっくりの牙を生やしているのだ。
チャカポコ太鼓を叩いているのは、その男たちだった。
広場の中央には火が炊かれており、その上に風呂桶ほどもある大きな鍋がかけられている。
血なまぐさい匂いの元は、その周辺に散乱した血まみれの毛皮や骨である。
どうやらこの人たち、現在、食事の準備中、といったところらしい。
それはそうと、身動きしようにも指一本動かせないのは、身体を太い柱みたいなものに縛りつけられているからだ。
後ろ手に回した両手首に、植物の蔓が痛いほど巻きついていて、私を柱につなぎとめているのである。
「気がついた?」
声がしたので振り向くと、右隣にソフィアが居た。
私と同じく、柱に手首を縛られ、両足をしどけなく地面に投げ出している。
「どうも、あたしたち、島の原住民の人たちに捕まっちゃったみたい」
首だけを曲げ、私の耳もとでソフィアがささやいた。
やっぱり、と思う。
さっきのチクッとした痛みは、ラルクの言うように、吹き矢によるものだったのだ。
「あんまり歓迎されていないのは確かだな」
そのラルクの声が、左側から聞こえてきた。
見ると、ラルクも私たちと状況は同じで、少し離れた柱に一平と一緒に縛られていた。
「え? おいらたちを歓迎してくれてるんじゃないの? あれ、おもてなしのためのごちそうだろ?」
煮え立つ鍋を眺めながら、一平が言う。
「おめでたい子ね」
呆れたように言い返すソフィア。
「あれはあたしたちに食べさせる料理じゃないよ。逆に、あたしたちが食材なんだってば!」
「えー! マジかよ」
一平が悲痛な声を出す。
「ソフィアの言う通りだ。俺たちを客扱いするなら、普通吹き矢なんて使わないだろうし、第一こんなふうに縛ったりしない」
「だよねえ」
私はため息をついた。
このチャカポコいう音楽は、祭りのBGMみたいなものなのだろう。
4人分の新鮮な人肉を調達できたお祝いに、この人たち、村じゅうでパーティでも開くつもりなのに違いない。
「どうする? 武器も防具も取り上げられちゃってるよ」
苦渋に満ちた声で、ソフィアンが兄に訊く。
なるほど、隣のソフィアの恰好は、あの青みがかった銀色のアーマーではなく、極細の鎖を編んでつくったアンダーウェア一枚きりなのだ。
ちなみに私は初めから露出度が高いので、赤のビスチェと同色のスケスケTバックスキャンティのままである。
「ここはまた、翔子に頼るしかないだろう」
のんびりと私のほうに目を向けて、ラルクが言った。
「おあつらえ向きに、今度の相手は人間の裸族だ。まさにエロ魔法の出番じゃないか?」
「同感同感」
にたりと笑ってソフィアがうなずいた。
「あの人たちがつけてるあのゾウの牙みたいなのってさ、中が空洞になってるいわばおチンぽサックなんだよね。翔子なら、彼らのおちんちんに、色々してあげられることがあるんじゃない?」
やれやれ。
私としては、肩をすくめるしかない。
ったくこの兄妹ったら、ほんとに人づかいが荒いんだから。
この人数相手にエロ魔法使ったら、またレベルが上がっちゃうじゃないの!
なんだろう?
この心浮き立つような、アフリカン・パーカッション的なリズムは…?
それに、この匂い。
なんだか濃厚なスープでも煮ているような、そんなかぐわしい香りである。
でも、その中に血の匂いが混じりこんでいるような気がするのは、なぜだろう。
「うーん」
目を開けると、まず周囲を囲む高い木の柵が視界に飛び込んできた。
児童公園くらいの、円形の広場に私はいた。
丈高い木製の柵に沿って、棕櫚の葉で屋根を葺いた背の低い住居が並んでいる。
ついうっかり、
「きゃ」
と声を上げてしまったのは、私を取り囲む男たちの恰好があまりに異様だったからだ。
裸の身体全体に金色の塗料を塗り、誰もが股間から湾曲した象牙そっくりの牙を生やしているのだ。
チャカポコ太鼓を叩いているのは、その男たちだった。
広場の中央には火が炊かれており、その上に風呂桶ほどもある大きな鍋がかけられている。
血なまぐさい匂いの元は、その周辺に散乱した血まみれの毛皮や骨である。
どうやらこの人たち、現在、食事の準備中、といったところらしい。
それはそうと、身動きしようにも指一本動かせないのは、身体を太い柱みたいなものに縛りつけられているからだ。
後ろ手に回した両手首に、植物の蔓が痛いほど巻きついていて、私を柱につなぎとめているのである。
「気がついた?」
声がしたので振り向くと、右隣にソフィアが居た。
私と同じく、柱に手首を縛られ、両足をしどけなく地面に投げ出している。
「どうも、あたしたち、島の原住民の人たちに捕まっちゃったみたい」
首だけを曲げ、私の耳もとでソフィアがささやいた。
やっぱり、と思う。
さっきのチクッとした痛みは、ラルクの言うように、吹き矢によるものだったのだ。
「あんまり歓迎されていないのは確かだな」
そのラルクの声が、左側から聞こえてきた。
見ると、ラルクも私たちと状況は同じで、少し離れた柱に一平と一緒に縛られていた。
「え? おいらたちを歓迎してくれてるんじゃないの? あれ、おもてなしのためのごちそうだろ?」
煮え立つ鍋を眺めながら、一平が言う。
「おめでたい子ね」
呆れたように言い返すソフィア。
「あれはあたしたちに食べさせる料理じゃないよ。逆に、あたしたちが食材なんだってば!」
「えー! マジかよ」
一平が悲痛な声を出す。
「ソフィアの言う通りだ。俺たちを客扱いするなら、普通吹き矢なんて使わないだろうし、第一こんなふうに縛ったりしない」
「だよねえ」
私はため息をついた。
このチャカポコいう音楽は、祭りのBGMみたいなものなのだろう。
4人分の新鮮な人肉を調達できたお祝いに、この人たち、村じゅうでパーティでも開くつもりなのに違いない。
「どうする? 武器も防具も取り上げられちゃってるよ」
苦渋に満ちた声で、ソフィアンが兄に訊く。
なるほど、隣のソフィアの恰好は、あの青みがかった銀色のアーマーではなく、極細の鎖を編んでつくったアンダーウェア一枚きりなのだ。
ちなみに私は初めから露出度が高いので、赤のビスチェと同色のスケスケTバックスキャンティのままである。
「ここはまた、翔子に頼るしかないだろう」
のんびりと私のほうに目を向けて、ラルクが言った。
「おあつらえ向きに、今度の相手は人間の裸族だ。まさにエロ魔法の出番じゃないか?」
「同感同感」
にたりと笑ってソフィアがうなずいた。
「あの人たちがつけてるあのゾウの牙みたいなのってさ、中が空洞になってるいわばおチンぽサックなんだよね。翔子なら、彼らのおちんちんに、色々してあげられることがあるんじゃない?」
やれやれ。
私としては、肩をすくめるしかない。
ったくこの兄妹ったら、ほんとに人づかいが荒いんだから。
この人数相手にエロ魔法使ったら、またレベルが上がっちゃうじゃないの!
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