182 / 246
#181 初子と怪獣大戦争⑧
しおりを挟む
掛け声とともに、乳房がどくんどくんと波打ち始めた。
乳腺を何かが駆け上がってくる感触がして、
ぶちゅうっ。
乳白色の液体が乳頭からほとばしる。
グガ?
目を白黒させるガマギラス。
といっても、昆虫の眼は複眼だから、これはあくまでも比喩である。
ググ、ガガガガ。
何かおかしいぞ、とでも言いたげに、逆三角形の頭をくりくりさせて、初子の乳首から離れていく。
その牙と牙の間は、今さっき飲み込んだ毒入り母乳で真っ白だ。
母乳に含まれた猛毒の効き目がおもてに表れるのに、長くはかからなかった。
ギャアアアアッ!
ぶよぶよのガマの胴体を痙攣させて、怪獣が苦悶の声を上げた。
-翔子、チャンスです! 物理攻撃でとどめを!-
頭の中で女神が叫ぶ。
物理攻撃ったって、フライパンと亀の子だわししかないんですけど。
-初子は足も使えます。ドロップキックでもハイキックでも、何でもやってみればいいでしょうー
マジですか。
プロレスごっこじゃあるまいし。
そんなの、やったことないっつーの!
腹をぴくぴく痙攣させ、苦しげに上半身を揺らしながらも、ガマギラスは向かってくることに決めたようだ。
一対の巨大鎌を振りかざすと、初子めがけて交互に振り下ろしてきた。
が、毒のせいか、さほどスピードはない。
私=初子は、その鎌をフライパンとたわしで難なく受け止めると、
「えーい! これでもくらえ!」
試しに右足を上げ、怪物のカマキリ部分とガマ部分の境目を力任せに蹴りつけた。
意外なことに、初子の前蹴りはおそろしく強烈だった。
ぐにゃりとした手ごたえがあり、
次の瞬間、
ズドドドドーン!
地響きを立てて怪獣が倒れ込む。
-いい感じです! 起動可能時間、残り30秒! もう一発大技を!-
「大技ったって、プロレスの技なんか知らないんだってば!」
-フライング・ヒップドロップはどうでしょう? 飛び上がって、ターゲットの背中にお尻から落下するだけでOKですからー
うーん、それくらいならいけるかな。
-高低差をつけるとなお効果的でしょう。そこの岩の上から飛び降りてみたらいいかもしれませんー
なるほど、右手に崖の一部を成す大きな岩がある。
なんとなく楽しくなってきて、私はほいほいと巨岩の上によじ登った。
見下ろすと、ちょうどいい位置に、怪獣が腹ばいになってうごめいている。
毒がかなり効いているらしく、立ち上がるのもおぼつかない感じである。
「行くよ! これでもくらええ! フライング・ヒップドロップ!」
狙いをつけて、ジャンプした。
空中で太腿を抱え、尻を下に突き出した。
そのまま、石つぶてのように落下する。
ぐしゃ。
ケーキかプリンの上にでも落っこちたかのような感じだった。
ガマギラスの胴体は、蛙仕様だから上半身に比べて柔らかい。
それが初子の体重で、見事につぶれてしまったのだ。
-時間です。帰還の合図をー
コクピットのなかで尻もちをついた私に、女神が言った。
見ると、画面の中のカウントダウンが一桁台になっている。
「ファック・ユー!」
勝利のサインに中指を突き立てて、私は叫んだ。
やった!
胸の底から、自信みたいなものがこみあげてくる。
ようやく、初子と一体化できた気がした。
なんだか、久しぶりに、いい気分だった。
乳腺を何かが駆け上がってくる感触がして、
ぶちゅうっ。
乳白色の液体が乳頭からほとばしる。
グガ?
目を白黒させるガマギラス。
といっても、昆虫の眼は複眼だから、これはあくまでも比喩である。
ググ、ガガガガ。
何かおかしいぞ、とでも言いたげに、逆三角形の頭をくりくりさせて、初子の乳首から離れていく。
その牙と牙の間は、今さっき飲み込んだ毒入り母乳で真っ白だ。
母乳に含まれた猛毒の効き目がおもてに表れるのに、長くはかからなかった。
ギャアアアアッ!
ぶよぶよのガマの胴体を痙攣させて、怪獣が苦悶の声を上げた。
-翔子、チャンスです! 物理攻撃でとどめを!-
頭の中で女神が叫ぶ。
物理攻撃ったって、フライパンと亀の子だわししかないんですけど。
-初子は足も使えます。ドロップキックでもハイキックでも、何でもやってみればいいでしょうー
マジですか。
プロレスごっこじゃあるまいし。
そんなの、やったことないっつーの!
腹をぴくぴく痙攣させ、苦しげに上半身を揺らしながらも、ガマギラスは向かってくることに決めたようだ。
一対の巨大鎌を振りかざすと、初子めがけて交互に振り下ろしてきた。
が、毒のせいか、さほどスピードはない。
私=初子は、その鎌をフライパンとたわしで難なく受け止めると、
「えーい! これでもくらえ!」
試しに右足を上げ、怪物のカマキリ部分とガマ部分の境目を力任せに蹴りつけた。
意外なことに、初子の前蹴りはおそろしく強烈だった。
ぐにゃりとした手ごたえがあり、
次の瞬間、
ズドドドドーン!
地響きを立てて怪獣が倒れ込む。
-いい感じです! 起動可能時間、残り30秒! もう一発大技を!-
「大技ったって、プロレスの技なんか知らないんだってば!」
-フライング・ヒップドロップはどうでしょう? 飛び上がって、ターゲットの背中にお尻から落下するだけでOKですからー
うーん、それくらいならいけるかな。
-高低差をつけるとなお効果的でしょう。そこの岩の上から飛び降りてみたらいいかもしれませんー
なるほど、右手に崖の一部を成す大きな岩がある。
なんとなく楽しくなってきて、私はほいほいと巨岩の上によじ登った。
見下ろすと、ちょうどいい位置に、怪獣が腹ばいになってうごめいている。
毒がかなり効いているらしく、立ち上がるのもおぼつかない感じである。
「行くよ! これでもくらええ! フライング・ヒップドロップ!」
狙いをつけて、ジャンプした。
空中で太腿を抱え、尻を下に突き出した。
そのまま、石つぶてのように落下する。
ぐしゃ。
ケーキかプリンの上にでも落っこちたかのような感じだった。
ガマギラスの胴体は、蛙仕様だから上半身に比べて柔らかい。
それが初子の体重で、見事につぶれてしまったのだ。
-時間です。帰還の合図をー
コクピットのなかで尻もちをついた私に、女神が言った。
見ると、画面の中のカウントダウンが一桁台になっている。
「ファック・ユー!」
勝利のサインに中指を突き立てて、私は叫んだ。
やった!
胸の底から、自信みたいなものがこみあげてくる。
ようやく、初子と一体化できた気がした。
なんだか、久しぶりに、いい気分だった。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる