178 / 246
#177 初子と怪獣大戦争④
しおりを挟む
分割画面の中の初子は、右手に亀の子だわし、左手にフライパンを持っている。
「あのさ、どう見てもあれ、亀の子だわしとフライパンにしか、見えないんだけど」
そう突っ込んでやると、
-ええ、確かにあれは、亀の子だわしとフライパンですー
消え入りそうな声音で、女神が答えた。
「亀の子だわしとフライパンって、台所用品だよね? そんなものが、武器になるのかな?」
同じ台所用品でも、肉切包丁とか果物ナイフならまだわかる。
なぜ、たわしとフライパンなのだろう?
-さあー
女神が首をかしげるさまが、目に見えるようだった。
-何事も、使いようだと思うんですけどー
「じゃあ、その使い方を教えてよ」
むっとして言い返すと、私の手の中にも同じ品物が出現した。
-初子と同調しやすいように、レプリカも用意しておきました。それでなんとか感じをつかんでいただけたらとー
何がレプリカだ。
これ、本物の亀の子だわしとフライパンじゃないの。
ー時間がありません。そろそろ出動をー
早く追い出したくてたまらないように、せかせかと女神が言った。
「負けたらあんたのせいだからね」
釘を刺しておいて、例の決め台詞を高らかに叫んだ。
「ファック・ミー!」
がくん。
振動とともに、初子の機体が沈み始める。
バンダバダバダバという荘厳なBGMが鳴り響き、
-コースゲート、オープンー
-コースゲート、オープンー
イケメン男性っぽいアナウンスがそれにかぶさった。
正直、この瞬間は、けっこうどきどきする。
アドレナリンが頭の中を駆け巡り、ドーパミンが奔流となってありとあらゆる神経から放出される気分なのだ。
ふいに足元に穴が開き、まっしぐらに初子が落ちた。
さんさんと降り注ぐ南国の日光が、スクリーンに爆発する。
地響きとともに、次の瞬間、私=初子は砂浜に立っていた。
エメラルドグリーンの海と真っ青な空を背景に、2頭の怪獣が争い合っている。
キシェエエエエッ!
ピーヒョロヒョロヒョロ!
キシェーのほうが、ガマキラスで、ピーヒョロがクモモンガの鳴き声のようだ。
「初子、ファイト!」
「がんばれえ! 初子ぉ!」
かすかな声援に、ふと足元を見ると、一平とソフィアが元気よく手を振っていた。
これじゃ、まるで部活の練習試合じゃないの。
ひとつ大きくうなずいてみせ、私は亀の子だわしとフライパンを両手に構えた。
さあて。
どうする?
その時である。
2頭の怪獣が、そろってこっちを向いた。
キシェーッ!
ピョロロロロロ!
鳴き声が1オクターブ高くなる。
「ちょっと、やばいよ! もう見つかっちゃったよ! まだ心の準備、できてないのに!」
叫んだけど、女神はもう答えてくれなかった。
「あのさ、どう見てもあれ、亀の子だわしとフライパンにしか、見えないんだけど」
そう突っ込んでやると、
-ええ、確かにあれは、亀の子だわしとフライパンですー
消え入りそうな声音で、女神が答えた。
「亀の子だわしとフライパンって、台所用品だよね? そんなものが、武器になるのかな?」
同じ台所用品でも、肉切包丁とか果物ナイフならまだわかる。
なぜ、たわしとフライパンなのだろう?
-さあー
女神が首をかしげるさまが、目に見えるようだった。
-何事も、使いようだと思うんですけどー
「じゃあ、その使い方を教えてよ」
むっとして言い返すと、私の手の中にも同じ品物が出現した。
-初子と同調しやすいように、レプリカも用意しておきました。それでなんとか感じをつかんでいただけたらとー
何がレプリカだ。
これ、本物の亀の子だわしとフライパンじゃないの。
ー時間がありません。そろそろ出動をー
早く追い出したくてたまらないように、せかせかと女神が言った。
「負けたらあんたのせいだからね」
釘を刺しておいて、例の決め台詞を高らかに叫んだ。
「ファック・ミー!」
がくん。
振動とともに、初子の機体が沈み始める。
バンダバダバダバという荘厳なBGMが鳴り響き、
-コースゲート、オープンー
-コースゲート、オープンー
イケメン男性っぽいアナウンスがそれにかぶさった。
正直、この瞬間は、けっこうどきどきする。
アドレナリンが頭の中を駆け巡り、ドーパミンが奔流となってありとあらゆる神経から放出される気分なのだ。
ふいに足元に穴が開き、まっしぐらに初子が落ちた。
さんさんと降り注ぐ南国の日光が、スクリーンに爆発する。
地響きとともに、次の瞬間、私=初子は砂浜に立っていた。
エメラルドグリーンの海と真っ青な空を背景に、2頭の怪獣が争い合っている。
キシェエエエエッ!
ピーヒョロヒョロヒョロ!
キシェーのほうが、ガマキラスで、ピーヒョロがクモモンガの鳴き声のようだ。
「初子、ファイト!」
「がんばれえ! 初子ぉ!」
かすかな声援に、ふと足元を見ると、一平とソフィアが元気よく手を振っていた。
これじゃ、まるで部活の練習試合じゃないの。
ひとつ大きくうなずいてみせ、私は亀の子だわしとフライパンを両手に構えた。
さあて。
どうする?
その時である。
2頭の怪獣が、そろってこっちを向いた。
キシェーッ!
ピョロロロロロ!
鳴き声が1オクターブ高くなる。
「ちょっと、やばいよ! もう見つかっちゃったよ! まだ心の準備、できてないのに!」
叫んだけど、女神はもう答えてくれなかった。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる