147 / 246
#146 魔王軍基地潜入計画⑥
しおりを挟む
「3分? カップヌードルかよ」
一平が、バカにするように、鼻の穴をふくらませた。
「さすがに短すぎるな」
ラルクが顎の先を指でなでる。
「せっかく、すごい兵器手に入れたのにね。残念」
と、これはギョーザを頬張っているソフィアだ。
「私のレベルの問題なんだって。MPが増えれば、もっと長い時間動かせるようになるらしいんだけど」
ふかひれスープを口に運びながら、私は言った。
「つまり、翔子のレベルを上げればいいわけか」
「じゃあさ、こうしたらどうだい? 一般参加の酒池肉林乱交パーテ」
ぽか。
ソフィアが一平の頭をこぶしで叩いた。
「だめ。却下」
「じゃ、翔子を黄鶴楼の置き屋で24時間働かせ」
ぽか。
もう一発。
今度は私の一撃である。
「いやです。人権侵害です。ブラック企業じゃあるまいし」
「早くレベルを上げる方法があればいいんだがな。その、性的な方法以外で」
「あることはあるけど」
しぶしぶ私は口を切った。
「何? どんな方法?」
ソフィアが春巻きをかじりながら訊く。
「あの巨人に乗ったまま、戦うこと。敵を1体倒すたびに装備が増えて、経験値とSPも通常の10倍入るんだって」
「それだ」
一平の目がきらめいた。
「何よ?」
「向こうに戻って、敵を探すんだ。ばこーんとレベルが上がりそうな、おっきいやつ」
「でも、魔王軍はまだ、アルカディアまでしか来てないんでしょ? かなり遠いよ?」
「本体はね。でもさ、おいら、うわさに聞いたんだ。サンフローレンスの北、赤海の中の孤島に、魔王の息のかかった秘密基地があるらしいって」
「ひょっとして、あれか?」
一平の言葉に、ラルクが目を上げた。
「別名、怪獣島。巨大生物に支配された、伝説の地獄の孤島」
「そう、それ。怪獣島なら、レベル上げにもってこいじゃね? それに、そこで待ってれば、魔王軍もきっと武器や燃料の補充に立ち寄るんじゃないかな?」
「怪獣島でレベル上げか。いい案かもしれないな」
ふたりで勝手に盛り上がっている。
私はむっとした。
「待ってよ。誰が怪獣と戦うと思ってるの? あんたたちじゃなくって、それ、私でしょ?」
「そんなこと言ったってしょーがねーじゃん。あの巨人には、翔子しか乗れないんだからさ」
一平が言い返してきた、その時である。
「ひひひ、いいこと、聞いちゃった!」
隅のテーブルから、そんな声が聞こえてきて、私はびくっと背をこわばらせた。
振り向くと、トレンチコートにサングラス、鳥打帽をかぶった見るからに怪しいやつが新聞を読んでいる。
「おまえは、アラクネ」
鋭い口調で、ラルクが言った。
「黄鶴楼で、女郎にさせられたんじゃなかったのか?」
アラクネが女郎?
ばあさまとの間で、そういう取り決めになってたの?
「ばーか。そんなへぼなあたいじゃないよ! 今の話、さっそく魔王様にご報告するからね!」
「待て!」
ソフィアが剣を手に取った。
「待たない!」
アラクネが身をひるがえす。
コートを広げたと思ったら、なんとそれが翼になった。
吸血蝙蝠みたいな、黒い大きな翼である。
中華料理店の入り口から夜空に飛び立ったアラクネを見送って、ラルクがつぶやいた。
「まずいな。急ごう。すぐに向こうに戻って、怪獣島を目指すんだ」
「マジですか」
私は我ながら情けない顔になった。
やだよう。
怪獣と戦うなんて。
こう見えても、れっきとした女の子なのに。
怪獣ごっこなんて、好きじゃない!
一平が、バカにするように、鼻の穴をふくらませた。
「さすがに短すぎるな」
ラルクが顎の先を指でなでる。
「せっかく、すごい兵器手に入れたのにね。残念」
と、これはギョーザを頬張っているソフィアだ。
「私のレベルの問題なんだって。MPが増えれば、もっと長い時間動かせるようになるらしいんだけど」
ふかひれスープを口に運びながら、私は言った。
「つまり、翔子のレベルを上げればいいわけか」
「じゃあさ、こうしたらどうだい? 一般参加の酒池肉林乱交パーテ」
ぽか。
ソフィアが一平の頭をこぶしで叩いた。
「だめ。却下」
「じゃ、翔子を黄鶴楼の置き屋で24時間働かせ」
ぽか。
もう一発。
今度は私の一撃である。
「いやです。人権侵害です。ブラック企業じゃあるまいし」
「早くレベルを上げる方法があればいいんだがな。その、性的な方法以外で」
「あることはあるけど」
しぶしぶ私は口を切った。
「何? どんな方法?」
ソフィアが春巻きをかじりながら訊く。
「あの巨人に乗ったまま、戦うこと。敵を1体倒すたびに装備が増えて、経験値とSPも通常の10倍入るんだって」
「それだ」
一平の目がきらめいた。
「何よ?」
「向こうに戻って、敵を探すんだ。ばこーんとレベルが上がりそうな、おっきいやつ」
「でも、魔王軍はまだ、アルカディアまでしか来てないんでしょ? かなり遠いよ?」
「本体はね。でもさ、おいら、うわさに聞いたんだ。サンフローレンスの北、赤海の中の孤島に、魔王の息のかかった秘密基地があるらしいって」
「ひょっとして、あれか?」
一平の言葉に、ラルクが目を上げた。
「別名、怪獣島。巨大生物に支配された、伝説の地獄の孤島」
「そう、それ。怪獣島なら、レベル上げにもってこいじゃね? それに、そこで待ってれば、魔王軍もきっと武器や燃料の補充に立ち寄るんじゃないかな?」
「怪獣島でレベル上げか。いい案かもしれないな」
ふたりで勝手に盛り上がっている。
私はむっとした。
「待ってよ。誰が怪獣と戦うと思ってるの? あんたたちじゃなくって、それ、私でしょ?」
「そんなこと言ったってしょーがねーじゃん。あの巨人には、翔子しか乗れないんだからさ」
一平が言い返してきた、その時である。
「ひひひ、いいこと、聞いちゃった!」
隅のテーブルから、そんな声が聞こえてきて、私はびくっと背をこわばらせた。
振り向くと、トレンチコートにサングラス、鳥打帽をかぶった見るからに怪しいやつが新聞を読んでいる。
「おまえは、アラクネ」
鋭い口調で、ラルクが言った。
「黄鶴楼で、女郎にさせられたんじゃなかったのか?」
アラクネが女郎?
ばあさまとの間で、そういう取り決めになってたの?
「ばーか。そんなへぼなあたいじゃないよ! 今の話、さっそく魔王様にご報告するからね!」
「待て!」
ソフィアが剣を手に取った。
「待たない!」
アラクネが身をひるがえす。
コートを広げたと思ったら、なんとそれが翼になった。
吸血蝙蝠みたいな、黒い大きな翼である。
中華料理店の入り口から夜空に飛び立ったアラクネを見送って、ラルクがつぶやいた。
「まずいな。急ごう。すぐに向こうに戻って、怪獣島を目指すんだ」
「マジですか」
私は我ながら情けない顔になった。
やだよう。
怪獣と戦うなんて。
こう見えても、れっきとした女の子なのに。
怪獣ごっこなんて、好きじゃない!
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる