125 / 246
#124 幻界のミューズ④
しおりを挟む
私はジェットコースターが嫌いである。
小学校低学年の時、両親に連れられて行った近くの遊園地で、生まれて初めてジェットコースターなるものに乗り、恐怖のあまりおしっこをちびったことがあるからだ。
だから大学生になった今でも、あの有名なネズミキャラのテーマパークは嫌いだし、なんでみんながこぞってそんなぶっそうなところへ行きたがるのか、全く理解できないでいる。
だが、ソフィアの”ドラゴン・ジャンプ”は、そのジェットコースターの恐怖をはるかに上回るものだった。
軽く膝を曲げて跳躍しただけなのに、ソフィアは垂直にロケットみたく飛び上がった。
それは以前テレビで見たスペースシャトルの打ち上げにそっくりで、
「あわわわわわ、死ぬ!」
絶対宇宙飛行士にはなれないな、頭の片隅でちらとそんなことを思いながら、私はソフィアの体に必死でしがみついた。
「翔子、準備はいい? もうすぐおばけ蟹の真上だよ」
風切り音に負けじと、私の右の耳に口をつけてソフィアが怒鳴る。
見ると、ぐーんと迫ってきた蟹ロボットの鋏をかいくぐり、私たちは早くも怪物の頭上に達しようとしていた。
「なんならあたしがこのまま攻撃してもいいけれど」
ソフィアの提案に、私はかぶりを振った。
「だ、大丈夫。後は任せて」
あっという間に逆向きの放物線の頂点に達すると、今度は身体がすごい勢いで落下し始めるのがわかった。
下方に目をやると、蟹の甲羅の後頭部?あたりに透明ガラスで覆われたコクピットみたいなものがあり、その中であのアラクネが操縦桿を握っている。
トレードマークの黒のボンテージふう衣装に仮面をつけたアラクネは、不思議なものでも見るように操縦席の中から私たちを見あげていた。
急がねばならなかった。
このままでは私たちふたりとも、蟹の甲羅に激突してしまう。
「ソフィア、後ろから私を支えて」
「こう?」
うなずいて、私を抱えたまま、ソフィアが背後に回る。
ソフィアの腕の中で身体をずらし、両腕を自由にする。
「はうっ!」
思わずあえいでしまったのは、ソフィアの両手が私のおっぱいをわしづかみにしてきたからだ。
確かにそこが一番出っ張ってるから、持ちやすいには違いないのだろうけど、
「あん、やだ。そこは、だめ」
どさくさにまぎれ、乳首を指ではさんでコリコリするのは、やめてほしい。
だが、今はそんなことにかまっている場合ではないのだ。
両腕を斜め下に伸ばし、コクピットに狙いを定めると、気を落ちつけて、私は叫んだ。
「くらえ! 天・誅・バ・イ・ブ!」
忘れていたエロ魔法というのは、これだった。
天誅バイブ。
いわば、乳首ミサイルの極太バージョンである。
しかも、これはバイブだから、爆発しない。
その機能と言えば、ただ対象に”穴”を掘るだけだ。
コンマ1秒遅れて、目の前におぞましい物体が実体化した。
男根そのものの形状をした、赤紫色の大人のおもちゃである。
ごつごつと筋張った海綿体が鎧のように表面を覆い、先端ではその名の通りカメのあたまそっくりの亀頭が真っ赤に膨れ上がっている。
もちろん、おもちゃといっても長さは1メートル近くあり、こんなのいったい誰が使うの? と言いたくなるほどのキングサイズである。
その特大バイブの底部、ちょうど男性の睾丸に当たるところに、一対のブースターがついていた。
「ひゃはっ! でっかーい! ふっとーい! きっもち、よさそーっ!」
ソフィアが心なしかうれしそうな声を上げた時、そのブースターが点火した。
紅蓮の炎を噴き出し、
ビュン!
と、やにわにバイブが速度を増した。
まっしぐらにコクピット向かって突っ込んでいく。
「カニの上に着地して!」
私の叫びに、
「あいよ!」
ソフィアが、青果市場のおかみさんみたいな、威勢のいい返事を返してくる。
次の攻撃に備えて、私は腰からウィップを抜き、両手に構えた。
そして、心に強く念じた。
アラクネのやつ、今度こそ、この手でとっつかまえてやる!
小学校低学年の時、両親に連れられて行った近くの遊園地で、生まれて初めてジェットコースターなるものに乗り、恐怖のあまりおしっこをちびったことがあるからだ。
だから大学生になった今でも、あの有名なネズミキャラのテーマパークは嫌いだし、なんでみんながこぞってそんなぶっそうなところへ行きたがるのか、全く理解できないでいる。
だが、ソフィアの”ドラゴン・ジャンプ”は、そのジェットコースターの恐怖をはるかに上回るものだった。
軽く膝を曲げて跳躍しただけなのに、ソフィアは垂直にロケットみたく飛び上がった。
それは以前テレビで見たスペースシャトルの打ち上げにそっくりで、
「あわわわわわ、死ぬ!」
絶対宇宙飛行士にはなれないな、頭の片隅でちらとそんなことを思いながら、私はソフィアの体に必死でしがみついた。
「翔子、準備はいい? もうすぐおばけ蟹の真上だよ」
風切り音に負けじと、私の右の耳に口をつけてソフィアが怒鳴る。
見ると、ぐーんと迫ってきた蟹ロボットの鋏をかいくぐり、私たちは早くも怪物の頭上に達しようとしていた。
「なんならあたしがこのまま攻撃してもいいけれど」
ソフィアの提案に、私はかぶりを振った。
「だ、大丈夫。後は任せて」
あっという間に逆向きの放物線の頂点に達すると、今度は身体がすごい勢いで落下し始めるのがわかった。
下方に目をやると、蟹の甲羅の後頭部?あたりに透明ガラスで覆われたコクピットみたいなものがあり、その中であのアラクネが操縦桿を握っている。
トレードマークの黒のボンテージふう衣装に仮面をつけたアラクネは、不思議なものでも見るように操縦席の中から私たちを見あげていた。
急がねばならなかった。
このままでは私たちふたりとも、蟹の甲羅に激突してしまう。
「ソフィア、後ろから私を支えて」
「こう?」
うなずいて、私を抱えたまま、ソフィアが背後に回る。
ソフィアの腕の中で身体をずらし、両腕を自由にする。
「はうっ!」
思わずあえいでしまったのは、ソフィアの両手が私のおっぱいをわしづかみにしてきたからだ。
確かにそこが一番出っ張ってるから、持ちやすいには違いないのだろうけど、
「あん、やだ。そこは、だめ」
どさくさにまぎれ、乳首を指ではさんでコリコリするのは、やめてほしい。
だが、今はそんなことにかまっている場合ではないのだ。
両腕を斜め下に伸ばし、コクピットに狙いを定めると、気を落ちつけて、私は叫んだ。
「くらえ! 天・誅・バ・イ・ブ!」
忘れていたエロ魔法というのは、これだった。
天誅バイブ。
いわば、乳首ミサイルの極太バージョンである。
しかも、これはバイブだから、爆発しない。
その機能と言えば、ただ対象に”穴”を掘るだけだ。
コンマ1秒遅れて、目の前におぞましい物体が実体化した。
男根そのものの形状をした、赤紫色の大人のおもちゃである。
ごつごつと筋張った海綿体が鎧のように表面を覆い、先端ではその名の通りカメのあたまそっくりの亀頭が真っ赤に膨れ上がっている。
もちろん、おもちゃといっても長さは1メートル近くあり、こんなのいったい誰が使うの? と言いたくなるほどのキングサイズである。
その特大バイブの底部、ちょうど男性の睾丸に当たるところに、一対のブースターがついていた。
「ひゃはっ! でっかーい! ふっとーい! きっもち、よさそーっ!」
ソフィアが心なしかうれしそうな声を上げた時、そのブースターが点火した。
紅蓮の炎を噴き出し、
ビュン!
と、やにわにバイブが速度を増した。
まっしぐらにコクピット向かって突っ込んでいく。
「カニの上に着地して!」
私の叫びに、
「あいよ!」
ソフィアが、青果市場のおかみさんみたいな、威勢のいい返事を返してくる。
次の攻撃に備えて、私は腰からウィップを抜き、両手に構えた。
そして、心に強く念じた。
アラクネのやつ、今度こそ、この手でとっつかまえてやる!
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる