異世界転生して謎のリングをアソコに装着したらエロ魔導士になりましたとさ

戸影絵麻

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#113 浮遊都市ポラリスの秘密⑬

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 私がようやく1階にたどりついた時には、すでにソフィアが少女のひとりと斬り結んでいる最中だった。

 相手の武器は大鎌だ。

 それを頭上でぶんぶん振り回しながら、無言でソフィアに向かっていく。

 顔には仮面をつけ、鴉の羽根みたいな真っ黒なセーラー服を着ている。

 胸元のリボンだけが、血を吸ったように赤い。

「みんな、下がって!」

 大声で叫びながら、大剣で敵の攻撃を跳ね返すソフィア。

 大勢の買い物客たちは、今や逃げるのも忘れて、イベント会場の周囲を大きくぐるりと取り囲んでいる。

 戦士だけあって、ソフィアの動きは俊敏で、打撃も強い。

 が、相手もなかなかのものだった。

 華奢な体つきに似合わぬ馬鹿力で、大鎌を風車のように縦横無尽に振り回す。

 そこに、ふたり目が突っ込んできた。

 同じ服装、同じ髪型だが、武器が違う。

 こっちは1メートルもあろうかという長大な薙刀だ。

 まずい!

 と思った瞬間、少女の足元で何かが跳ね、カンカンと乾いた音を立てた。

 あわてて少女が飛び退り、ステージ上に退却した。

 一平である。
 
 一平が、エスカレーターの途中から、ボウガンで手裏剣を連射しているのだ。

「ナイス一平!」
 
 私は一平に向かって、両手でメガホンをつくり、大声でエールを送った。

 散髪したばかりの一平は、イガ栗頭でまるで田舎の鼻たれ小僧である。

『次郎物語』か『しろばんば』にでも登場しそうな朴訥さだ。

「サンキュー!」

 ソフィアが力で大鎌に打ち勝ち、敵をステージ上に押し戻す。

 さあ、そろそろ私の出番かな。

 言い忘れたが、私もソフィアとおそろいの真紅のマントをつけている。

 ふたりでヴィレッジヴァンガードのコスプレコーナーで買ったのだ。

 そのマントをひるがえすと、私はステージへとつづく花道の入口に仁王立ちになった。

 花道といっても、別にレッドカーペットが敷かれているわけでもなく、ただのパイプ椅子の間の通路だけど。

 真っ赤なビスチェと極小スキャンティに包まれた、スーパーボディをステージ上の3人組に披露する。

 仮面女子3人が、ぎくりとしたように固まった。

「ソフィア、あとは任せて。安全なところまで退避してて」

 私が声をかけると、ひとつうなずいて、ソフィアが駆け戻ってきた。

「気をつけてね、なかなか強いよ、あいつら。でも、いったい、何者なんだと思う?」

「何者って、そりゃ、あの垂れ幕に書いてある通り、黄泉平坂46なんでしょ?」

「でも、そのヨモツヒラサカ46って、何なのよ?」

「わかんないけど、アイドルに化けたテロリストとか?」

「テロリスト? そうなのかなあ。ま、いいや。とにかくまかせた。がんばってね。応援してるから」

 頬にキスをして、軽やかな足取りでソフィアが去っていく。

 それにしても、なんて趣味の悪いネーミングなの?

 今更ながらに感心する。

 元の世界にも、『坂』のつくアイドルグループはいくつもあったけれど、『黄泉平坂』って、黄泉の国に通じる道の名前じゃなかったっけ?

 まあ、でも、彼女たちのまがまがしい雰囲気にぴったりといえば、そうなんだが。

 さてさて、まず、どの魔法から行こうか。

 気を取り直し、私は一歩、前に進み出た。

 注意すべきなのは、ソフィアと互角に戦うあの戦闘能力だ。

 大鎌の少女だけでなく、ほかのふたりも同様の能力を備えていると見るべきだろう。

 ならば、最初はそれを無効化するまでだ。

 多少というか、かなり周りに影響が出るけど、この際、仕方がない。

 お客さんたちも、痛い目に遭うよりは、きっと快感に打ち震えるほうを選ぶに違いないからだ。

 私は両腕を広げ、叫んだ。

「吹けよ! エクスタシー・ハリケーン!」

 たちまちのうちに巻き起こる、桃色の淫風の竜巻。

 最初覚えた時よりも、ずいぶん威力が増しているようだ。
  
 その竜巻の足が、ステージに届こうとした時である。

 突然、3人目の少女が、センターの位置に躍り出た。

 他のふたりと同じ、漆黒のセーラー服に真っ赤なリボンとミニひだスカート。

 頭はツインテールで、鼻から上を隠す黒い仮面を着用している。

 そして、なぜか、両手に黒いコウモリ傘を持っていた。

 は?

 私は呆れた。

 馬鹿じゃない、この子。

 大鎌と薙刀はわかる。

 でも、傘が武器って、それなあに?

 まさか、007のジェームズ・ボンドじゃあるまいし。

 だが。

 今になって思う。

 笑った私が、バカだったのだ。

 その黒いコウモリ傘は、恐るべき威力を秘めていたのである!










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