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#110 浮遊都市ポラリスの秘密⑩
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一平とラルクは、2階のUNIQLOで服を買った。
ただ、この店、カタカナ表記では、『ユニクロ』ではなく、『ウニクロ』というらしい。
へんなの。
寿司のネタじゃあるまいし。
この分だと、『UNY(ユニー)』はきっと、『ウニー』になっているに違いない。
まあ、もっともそれは、ユニーもここに進出していれば、の話だけど。
買ったのは、一平が、半そでシャツと半ズボン、そしてウィンドパーカー。
ラルクが、ベージュのトレンチコートである。
「あんた、ようやくマシな格好になったわね。そうしてみると、私の元いた世界の小学生と変わらないよ」
着換えて出てきた一平を見て、私は少し褒めてやることにした。
「できればそのぼさぼさ頭も、なんとかしたほうがいいと思うけど」
「そうかな」
一平が、満更でもなさそうに、ライオンのタテガミみたいに伸び放題の頭をぼりぼり掻いた。
フケが飛び散り、右肩のコボちゃんが露骨に嫌な顔をする。
「この上のフロアに確か15分でカットしてくれる床屋さんがあったから、私たちがお買い物してる間に行ってきなよ」
ついでにアドバイスしてやると、
「散髪なんて、おいら、生まれて初めてだな」
一平はにやにやと、何やらうれしそうだ。
「そうだ、翔子。おいらがいい男に変身したら、一回でいいから、その巨乳おっぱい触らせてくれない?」
案の定、調子に乗って、そんなくだらないことを言い出した。
「100年早い」
私は一平の頭をこづいた。
「早くラルクと一緒に床屋さん、行っといで」
「いい案だ。俺もついでにカットしてもらうことにするか」
コートを着て、シャーロックホームズみたいになったラルクが、髪に手をやった。
ラルクはソフィアと同じ金髪なんだけど、見ると確かにカールした髪の毛の先が肩のあたりまで伸びている。
「じゃ、兄者、カード貸してよ。あたしたち、先にお買い物済ませて、床屋さんまであとでもってくからさ」
ソフィアが言って、ラルクからIDカードを受け取った。
なんせ、カードは1枚しかないから、買い物のたびにこまめに受け渡しが必要なのだ。
3階までは一緒に上がり、エスカレーターの下り口でふたりと別れた。
「あ、あそこね!」
ソフィアが弾んだ声を上げ、ランジェリーショップを指さした。
店先には、色とりどりの下着をつけたマネキンが、さまざまにしなをつくったポーズで並んでいる。
「わあ、素敵。あたし、一度でいいから、こんなのつけてみたかったんだ」
セクシーな下着をつけたマネキンの間を歩き回り、ソフィアは品定めに余念がない。
あれこれ迷った挙句、山のようにランジェリーを抱えて戻ってきた。
「え。これ、みんな買うの?」
「うん。翔子もつけていいからね」
「下着をシェアするなんて聞いたことないよ」
どの道、サイズが合いそうにないので、私は私でLLサイズのブラとショーツを自分用に見繕うことにした。
戦闘服に何を選ぶにしろ、アンダーウェアはやはり必要だろう。
試着するのも面倒なので、一番大きいサイズのをいくつか適当に選んでレジに持って行こうとした時である。
「翔子、いいもん見つけたよ!」
奥のカーテンの陰から顔を出して、ソフィアが声をかけてきた。
まるでアダルトビデオのコーナーみたいに、そこだけなぜかカーテンで仕切られているのだ。
「なあに? いいものって」
「来て来て! これなら翔子にぴったりだよ! 素材も丈夫そうだから、戦闘服にもいいと思う!」
こんなところに、戦闘服が?
半信半疑で、私はカーテンをくぐった。
「うは」
周囲を見回して、私は思わず唾を呑み込んだ。
そこは、店頭に並ぶ商品とは明らかに一線を画した、アダルトランジェリーコーナーだった。
照明は薄暗く、あたりには異様なムードが漂っている。
目を凝らしてみると、マネキンが身に着けているのは、想像を絶するような形状のものばかりだった。
面積が極端に狭いものや、透けすぎて着けても最早裸と変わらないもの、女性用なのになぜか股間にスリットが入っているものなど、その種類は実にさまざまだ。
中にはどうやって装着するのか、さっぱり見当のつかない変わった形状のものまであった。
どうみても、複雑に絡み合った、ただのヒモなんだけど。
「これ。どう? セクシーで、むちゃかっこいい」
その中で、ソフィアが得意そうに指さしているのは、真紅の革製の胴着と、それとセットになったちっちゃな紐パン、そしてガーターベルトと赤いストッキングである。
「これのどこが戦闘服なのよ」
私は憮然とした。
「これじゃまるっきし、SMクラブの女王サマじゃないの」
「だからいいんだってば」
ソフィアが熱心に説得にかかる。
「アラクネを思い出して。彼女は黒のボンテージ衣装だったでしょ? 錬金術師が黒ならエロ魔導士は、絶対に赤よ。ね、これにしようよ。あたし、これ着た翔子に早く抱かれてみたい」
とろんとした目になっているのは、また欲情している証拠だろう。
「はいはい。わかりました」
私は降参のポーズをしてみせた。
言い出したら聞かないのが、ソフィアである。
元お姫様候補だから、こればかりは仕方がない。
「やったあ! じゃ、さっそく着替えてきてね!」
欣喜雀躍するソフィア。
肩で大きくため息をつき、私は言った。
「言っとくけど、猥褻物陳列罪でケーサツにつかまったら、もう、ソフィアのせいだからね」
ただ、この店、カタカナ表記では、『ユニクロ』ではなく、『ウニクロ』というらしい。
へんなの。
寿司のネタじゃあるまいし。
この分だと、『UNY(ユニー)』はきっと、『ウニー』になっているに違いない。
まあ、もっともそれは、ユニーもここに進出していれば、の話だけど。
買ったのは、一平が、半そでシャツと半ズボン、そしてウィンドパーカー。
ラルクが、ベージュのトレンチコートである。
「あんた、ようやくマシな格好になったわね。そうしてみると、私の元いた世界の小学生と変わらないよ」
着換えて出てきた一平を見て、私は少し褒めてやることにした。
「できればそのぼさぼさ頭も、なんとかしたほうがいいと思うけど」
「そうかな」
一平が、満更でもなさそうに、ライオンのタテガミみたいに伸び放題の頭をぼりぼり掻いた。
フケが飛び散り、右肩のコボちゃんが露骨に嫌な顔をする。
「この上のフロアに確か15分でカットしてくれる床屋さんがあったから、私たちがお買い物してる間に行ってきなよ」
ついでにアドバイスしてやると、
「散髪なんて、おいら、生まれて初めてだな」
一平はにやにやと、何やらうれしそうだ。
「そうだ、翔子。おいらがいい男に変身したら、一回でいいから、その巨乳おっぱい触らせてくれない?」
案の定、調子に乗って、そんなくだらないことを言い出した。
「100年早い」
私は一平の頭をこづいた。
「早くラルクと一緒に床屋さん、行っといで」
「いい案だ。俺もついでにカットしてもらうことにするか」
コートを着て、シャーロックホームズみたいになったラルクが、髪に手をやった。
ラルクはソフィアと同じ金髪なんだけど、見ると確かにカールした髪の毛の先が肩のあたりまで伸びている。
「じゃ、兄者、カード貸してよ。あたしたち、先にお買い物済ませて、床屋さんまであとでもってくからさ」
ソフィアが言って、ラルクからIDカードを受け取った。
なんせ、カードは1枚しかないから、買い物のたびにこまめに受け渡しが必要なのだ。
3階までは一緒に上がり、エスカレーターの下り口でふたりと別れた。
「あ、あそこね!」
ソフィアが弾んだ声を上げ、ランジェリーショップを指さした。
店先には、色とりどりの下着をつけたマネキンが、さまざまにしなをつくったポーズで並んでいる。
「わあ、素敵。あたし、一度でいいから、こんなのつけてみたかったんだ」
セクシーな下着をつけたマネキンの間を歩き回り、ソフィアは品定めに余念がない。
あれこれ迷った挙句、山のようにランジェリーを抱えて戻ってきた。
「え。これ、みんな買うの?」
「うん。翔子もつけていいからね」
「下着をシェアするなんて聞いたことないよ」
どの道、サイズが合いそうにないので、私は私でLLサイズのブラとショーツを自分用に見繕うことにした。
戦闘服に何を選ぶにしろ、アンダーウェアはやはり必要だろう。
試着するのも面倒なので、一番大きいサイズのをいくつか適当に選んでレジに持って行こうとした時である。
「翔子、いいもん見つけたよ!」
奥のカーテンの陰から顔を出して、ソフィアが声をかけてきた。
まるでアダルトビデオのコーナーみたいに、そこだけなぜかカーテンで仕切られているのだ。
「なあに? いいものって」
「来て来て! これなら翔子にぴったりだよ! 素材も丈夫そうだから、戦闘服にもいいと思う!」
こんなところに、戦闘服が?
半信半疑で、私はカーテンをくぐった。
「うは」
周囲を見回して、私は思わず唾を呑み込んだ。
そこは、店頭に並ぶ商品とは明らかに一線を画した、アダルトランジェリーコーナーだった。
照明は薄暗く、あたりには異様なムードが漂っている。
目を凝らしてみると、マネキンが身に着けているのは、想像を絶するような形状のものばかりだった。
面積が極端に狭いものや、透けすぎて着けても最早裸と変わらないもの、女性用なのになぜか股間にスリットが入っているものなど、その種類は実にさまざまだ。
中にはどうやって装着するのか、さっぱり見当のつかない変わった形状のものまであった。
どうみても、複雑に絡み合った、ただのヒモなんだけど。
「これ。どう? セクシーで、むちゃかっこいい」
その中で、ソフィアが得意そうに指さしているのは、真紅の革製の胴着と、それとセットになったちっちゃな紐パン、そしてガーターベルトと赤いストッキングである。
「これのどこが戦闘服なのよ」
私は憮然とした。
「これじゃまるっきし、SMクラブの女王サマじゃないの」
「だからいいんだってば」
ソフィアが熱心に説得にかかる。
「アラクネを思い出して。彼女は黒のボンテージ衣装だったでしょ? 錬金術師が黒ならエロ魔導士は、絶対に赤よ。ね、これにしようよ。あたし、これ着た翔子に早く抱かれてみたい」
とろんとした目になっているのは、また欲情している証拠だろう。
「はいはい。わかりました」
私は降参のポーズをしてみせた。
言い出したら聞かないのが、ソフィアである。
元お姫様候補だから、こればかりは仕方がない。
「やったあ! じゃ、さっそく着替えてきてね!」
欣喜雀躍するソフィア。
肩で大きくため息をつき、私は言った。
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