109 / 246
#108 浮遊都市ポラリスの秘密⑧
しおりを挟む
「なんだ、鍵はここにあったのか。一平も、知ってたなら早く言えよ。まあ、とにかく、それなら話は早い」
ラルクの言う通りだった。
私たちがここ、ポラリスを訪れたのは、鍵のありかにつながる情報を得るためである。
それが、手がかりどころか、鍵自体がこの地に預けられていたとは。
でも、気になる。
くどいようだけど、なんでこの人、笑ってるわけ?
「だって誰もおいらに聞かなかったじゃないか」
むくれる一平。
まあ。それはそうだ。
誰もそんな重要なんこと、この悪ガキが知ってるだなんて思わなかったのだから。
「あ、いや、失礼しました。なんせ、あまりに古い話だもので」
司政館がようやく笑いを収めた。
「100年前、勇者の一行がこの街を訪れ、鍵を預けた。それはもう、ほとんどレジェンドです。果たして、それが事実かどうかすら、もはやわからない」
「なんだって? じゃ、鍵は行方不明だって言うのかよ?」
「端的に言えば、そういうことです。なにしろ100年も前の事ですからねえ」
「誰か、知っている者はいないのか? その、当時のことを」
「いるとしたら、宿儺のばあさまですかねえ」
「誰だ? その、スクナのばばさんってのは?」
「この街のはずれに、遊郭があります。そこの楼主ですよ。彼女なら、齢100歳を超えているという噂ですから、あるいは…」
「遊郭って、なあに?」
あどけない顔で、ソフィアがたずねた。
「昔のソープランドのこと。売春婦が合法化されてた頃の、殿方の遊び場よ」
時代劇で得た知識を,私は披露した。
もっとも、ソープランドがどういうところなのか、行ったことがないから、詳しくはわからない。
「黄鶴楼は、ショッピングモールを通り抜けた先、街の最深部に位置しています。どうしてもとおっしゃるなら、その足でお訪ねになったらいかがですか? 買い物のついでにでも」
「そうだな」
ラルクが腰を上げた。
「そうさせてもらおう」
「いいね。お買い物もしたいし、ちょうどいいじゃない」
ソフィアがウキウキと言う。
「それなら、あのエレベーターで、もう1階下に降りてください。そこがショッピングモールの入口ですから」
ソゴル・ゲンに礼を言い、再びエレベーターに乗った。
もちろん、ここへ来た時のとは別の、普通のエレベーターである。
着いた先は、なんだか見覚えのある場所だった。
自動ドア。
その脇に買い物用のカート置き場。
左手の角は、サンマルク・カフェ。
「マジですか」
私は思わず目をしばたたいた。
「ここって…ひょっとして」
見覚えがあるも何も。
これは、まぎれもなく、うちの近所にあった、あの…。
「イオンじゃない!」
ラルクの言う通りだった。
私たちがここ、ポラリスを訪れたのは、鍵のありかにつながる情報を得るためである。
それが、手がかりどころか、鍵自体がこの地に預けられていたとは。
でも、気になる。
くどいようだけど、なんでこの人、笑ってるわけ?
「だって誰もおいらに聞かなかったじゃないか」
むくれる一平。
まあ。それはそうだ。
誰もそんな重要なんこと、この悪ガキが知ってるだなんて思わなかったのだから。
「あ、いや、失礼しました。なんせ、あまりに古い話だもので」
司政館がようやく笑いを収めた。
「100年前、勇者の一行がこの街を訪れ、鍵を預けた。それはもう、ほとんどレジェンドです。果たして、それが事実かどうかすら、もはやわからない」
「なんだって? じゃ、鍵は行方不明だって言うのかよ?」
「端的に言えば、そういうことです。なにしろ100年も前の事ですからねえ」
「誰か、知っている者はいないのか? その、当時のことを」
「いるとしたら、宿儺のばあさまですかねえ」
「誰だ? その、スクナのばばさんってのは?」
「この街のはずれに、遊郭があります。そこの楼主ですよ。彼女なら、齢100歳を超えているという噂ですから、あるいは…」
「遊郭って、なあに?」
あどけない顔で、ソフィアがたずねた。
「昔のソープランドのこと。売春婦が合法化されてた頃の、殿方の遊び場よ」
時代劇で得た知識を,私は披露した。
もっとも、ソープランドがどういうところなのか、行ったことがないから、詳しくはわからない。
「黄鶴楼は、ショッピングモールを通り抜けた先、街の最深部に位置しています。どうしてもとおっしゃるなら、その足でお訪ねになったらいかがですか? 買い物のついでにでも」
「そうだな」
ラルクが腰を上げた。
「そうさせてもらおう」
「いいね。お買い物もしたいし、ちょうどいいじゃない」
ソフィアがウキウキと言う。
「それなら、あのエレベーターで、もう1階下に降りてください。そこがショッピングモールの入口ですから」
ソゴル・ゲンに礼を言い、再びエレベーターに乗った。
もちろん、ここへ来た時のとは別の、普通のエレベーターである。
着いた先は、なんだか見覚えのある場所だった。
自動ドア。
その脇に買い物用のカート置き場。
左手の角は、サンマルク・カフェ。
「マジですか」
私は思わず目をしばたたいた。
「ここって…ひょっとして」
見覚えがあるも何も。
これは、まぎれもなく、うちの近所にあった、あの…。
「イオンじゃない!」
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる