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#105 浮遊都市ポラリスの秘密⑤
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「どうする?」
隣に立つラルクに向かって、私は言った。
「ミサイルで撃ち落とす? あと一発くらいなら、発射できるけど」
右の乳房をブラから出そうとすると、
「やめとけ」
迷惑そうな顔で、ラルクがおしとどめた。
「そんなことをしたら、ポラリス全体を敵に回すことになる。これはおそらく、この都市のセキュリティ・システムのひとつだろう。都市の中枢のメインコンピュータにつながっているに違いない」
セキュリティ・システムだの、コンピューターだの、ラルクはさすが、サポ”読書家”である。
外界にはないもののことまで、よく知っているようだ。
「わかったから。静かにして」
ソフィアがうんざりしたように、浣腸型警報機に話しかけている。
「あたしたちは、ミルナの村から来た冒険者。決してあやしいものじゃない」
「これでどうかな」
ラルクが近寄り、浣腸の腹のあたりに見えるスリットに、例のIDカードを差し込んだ。
ぴたりとわめき声が収まった。
「認証シマシタ」
ロボット浣腸が言った。
「ゴ案内シマス。シバラクオ待チクダサイ」
「案内するって、どこへだよ?」
けんか腰で食ってかかるのは、一平だ。
おおかた、腹でも減っていて機嫌が悪いのだろう。
それにしても、フクロウみたいにその肩にとまったコボちゃん、幽霊のくせに鼻から風船を出して寝てるのはどういうこと?
「市街ニ入ルニハ、厳重ナ身体検査ガ必要ナノデス。コレカラアナタタチヲ、疫病予防せんたーニゴ案内シマス」
浣腸ロボットが、キイキイ声でそこまで言った時である。
カチャカチャ音がして、またおかしな物体が現れた。
どうやら乗り物らしい。
ひと昔前のデパートの屋上でよく見かけた、幼児向けの電車に似ている。
が、もっと似ているものはというと、それはムカデだった。
「これに乗れっていうの?」
ソフィアが心底、いやそうな声を出した。
私も同感だった。
あーあ、便所コオロギの次は、ムカデかよ。
むちゃくちゃ乗り心地、悪そうだし。
それに、身体検査って、何?
いやな予感がする。
ふと、管制室で死んでいたエレベーター係の男の姿が、頭の隅をよぎった。
大丈夫だろうか。
ひょっとして、これは罠だったりしないだろうか。
が、ラルクは不安のそぶりも見せなかった。
「こんなところにいつまでも突っ立っていても、仕方ないだろう。俺は行くぞ」
そう言うなり、さっさとムカデ型電車に乗り込んでいく。
「あ、待ってよ、兄者」
ソフィアが後に続いた。
「市街とやらには食いもんもあるんだな」
ぶつくさ言いながら、その後ろに乗り込む一平。
「まずシャワー浴びたいよ。それから着替え」
私は一平の更に後ろに回ると、腰の高さの跳ね戸を引いて、狭い座席にかさばる尻をねじこませた。
ぷぴー。
ムカデが警笛を鳴らすと、おびただしい金属の足をガシャガシャ動かして、超低速で走り始めた。
隣に立つラルクに向かって、私は言った。
「ミサイルで撃ち落とす? あと一発くらいなら、発射できるけど」
右の乳房をブラから出そうとすると、
「やめとけ」
迷惑そうな顔で、ラルクがおしとどめた。
「そんなことをしたら、ポラリス全体を敵に回すことになる。これはおそらく、この都市のセキュリティ・システムのひとつだろう。都市の中枢のメインコンピュータにつながっているに違いない」
セキュリティ・システムだの、コンピューターだの、ラルクはさすが、サポ”読書家”である。
外界にはないもののことまで、よく知っているようだ。
「わかったから。静かにして」
ソフィアがうんざりしたように、浣腸型警報機に話しかけている。
「あたしたちは、ミルナの村から来た冒険者。決してあやしいものじゃない」
「これでどうかな」
ラルクが近寄り、浣腸の腹のあたりに見えるスリットに、例のIDカードを差し込んだ。
ぴたりとわめき声が収まった。
「認証シマシタ」
ロボット浣腸が言った。
「ゴ案内シマス。シバラクオ待チクダサイ」
「案内するって、どこへだよ?」
けんか腰で食ってかかるのは、一平だ。
おおかた、腹でも減っていて機嫌が悪いのだろう。
それにしても、フクロウみたいにその肩にとまったコボちゃん、幽霊のくせに鼻から風船を出して寝てるのはどういうこと?
「市街ニ入ルニハ、厳重ナ身体検査ガ必要ナノデス。コレカラアナタタチヲ、疫病予防せんたーニゴ案内シマス」
浣腸ロボットが、キイキイ声でそこまで言った時である。
カチャカチャ音がして、またおかしな物体が現れた。
どうやら乗り物らしい。
ひと昔前のデパートの屋上でよく見かけた、幼児向けの電車に似ている。
が、もっと似ているものはというと、それはムカデだった。
「これに乗れっていうの?」
ソフィアが心底、いやそうな声を出した。
私も同感だった。
あーあ、便所コオロギの次は、ムカデかよ。
むちゃくちゃ乗り心地、悪そうだし。
それに、身体検査って、何?
いやな予感がする。
ふと、管制室で死んでいたエレベーター係の男の姿が、頭の隅をよぎった。
大丈夫だろうか。
ひょっとして、これは罠だったりしないだろうか。
が、ラルクは不安のそぶりも見せなかった。
「こんなところにいつまでも突っ立っていても、仕方ないだろう。俺は行くぞ」
そう言うなり、さっさとムカデ型電車に乗り込んでいく。
「あ、待ってよ、兄者」
ソフィアが後に続いた。
「市街とやらには食いもんもあるんだな」
ぶつくさ言いながら、その後ろに乗り込む一平。
「まずシャワー浴びたいよ。それから着替え」
私は一平の更に後ろに回ると、腰の高さの跳ね戸を引いて、狭い座席にかさばる尻をねじこませた。
ぷぴー。
ムカデが警笛を鳴らすと、おびただしい金属の足をガシャガシャ動かして、超低速で走り始めた。
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