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#83 棺の中
しおりを挟む「何にもいないじゃん!」
棺の中を覗き込んだ一平が、素っ頓狂な声を上げた。
「え?」
私は目を見開いた。
「だって、今、包帯だらけの手みたいなものが…・」
そう、たしかに見えた気がしたのだ。
「だって、ほら」
手招きされ、おそるおそるのぞき込んでみると、ほんとだ、空っぽじゃない。
棺はかなり豪勢なもので、中は厚いビロードで覆われている。
でも、それだけなのだ。
「まあ、いい。誰の墓かわからんし、関わり合って呪われたりしたら事だ。先を急ごう」
ラルクが言った。
「だね。こんな気味の悪いとこ、早く出ようよ」
と、これはソフィア。
行く手を見ると、私の分身の作った通路がまっすぐに開口部へ向かって伸びている。
分身自体はすでに消えていたが、あの巨大な尻は十分務めを果たしてくれたようだ。
埴輪のアーミーたちは潰され、大半がただの破片と化してしまっている。
が、油断は禁物だった。
後ろの半分は、まだ残っているのだ。
ザクッ、ザクッと床を踏みしめる音が接近してくる。
早く逃げないと、また取り囲まれてしまう。
「MPもう、残り少ないから、もう私に頼ってもだめだよ」
ブラの中に乳房を押し込みながら、私は言った。
乳首は元に戻っているが、熱は引いていない。
おっぱいが、燃えるように熱いのだ。
「わかってる。でも、翔子、よくがんばったよ。後は私がみんなを守るから」
ラルクを先頭に、ソフィアをしんがりにして、開口部に向かって走り出す。
即席の通路を走り抜け、壁をよじ登ると、穴に飛び込んだ。
こっちは四角くて、かなり広い。
十分立って歩けそうである。
しかも壁がレンガ造りで、ちゃんとしたトンネルという感じ。
まっすぐに伸びるトンネルを30分ほど行くと、いきなり出口に出た。
まばゆい陽光が差し込んでいる。
その向こうに見えるのは、ん? 何だろう?
「げ」
ラルクの脇をすり抜け、先に出口に着いた一平が奇妙な声を上げた。
「まずいとこに出ちゃったかも」
「ん? どうしてだ? 正面に見えるのは須弥山だろう? バッチリの近道じゃないか?」
ラルクが一平の肩越しに外をのぞく。
「だからまずいって言ってんだよ」
一平が振り向いた。
「前に言っただろ? 須弥山のふもとの湿地帯は、帝国の支配下なんだ」
「帝国?」
ソフィアが柳眉を逆立てる。
「ああ、腸詰帝国だよ。どうやらここは、腸詰帝国の基地の真ん前らしい」
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