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#80 異形たち
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どこかのコンサートホールくらいもある、薄暗い空間。
そこに、奇妙なものが整列していた。
等身大の人形である。
人形といっても、粘土を焼いてつくった埴輪みたいなものだ。
それが、列を成して、はるかかなたまで整然と並んでいるのだった。
その数、何千体とあるだろうか。
格好はさまざまだ。
が、よく見ると、武器を手にした男の像がほとんどだった。
つまり、これは全部、兵士なのだ。
墓の主を守る、兵士たちの大軍団なのである。
「へ、へんなもんがいっぱいある。なんだよ? あれ」
私の隣で身を起こした一平が言った。
「兵馬俑だと思う。たぶん」
「へいばよう? なんだそれ?」
私の言葉にゲジゲジ眉をひそめて一平が訊き返す。
「私の居た世界にも、これと同じようなものがあるの。中国って国のね、始皇帝って王様のお墓には、何千っていう数の兵士や馬の人形がおさめられていて、王様を今でも守ってるんだって」
確か、西安だったと思う。
兵馬俑は観光スポットにもなっていて、一般公開もされていたはずだ。
しかも一か所ではなく、数か所に分かれていたはず。
「よく知ってるな。確かにこれは兵馬俑だ。翔子、ただのエロ魔導士かと思っていたが、見直したぞ」
ラルクが褒めてくれたけど、別にうれしくもなんともない。
兵馬俑なんて、中学校の歴史の教科書に写真入りで出ているからだ。
「なんでもいいけど、なんだか無茶やばそうな雰囲気だよね」
ソフィアがぞくっと身を震わせた。
隙なく大剣グランディルを構えているのは、さすが戦士というべきだろう。
「別に恐れることはない。ここにあるのはすべて泥人形だ。泥人形が動くはずないからな」
ラルクはひょうひょうとした足取りで石段を降りていく。
「とにかく、別の出口を探してみよう。うまくいけば、須弥山に近い側の隧道が見つかるかもしれん」
仕方なく、私たちも後に従うことにした。
いくら気持ち悪くても、ラルクの言う通り、ここを抜けないことにはらちが明かないのだから仕方がない。
4人縦に並んで、人形に挟まれた中央の通路を歩いた。
あえて真ん中を選んだのは、そこが一番広い道だったからである。
どういう仕組みなのか、人形たちの間には等間隔でぼうっと光る光源があり、そのため足元は薄明るい。
この世界特有のエネルギー源、例の魔輝石が使ってあるのかもしれない。
列は、今度はラルクが先頭、次が私、その後ろが一平、しんがりがソフィアという順だった。
鬱陶しいのは、一平が、まるで車間距離を取らず、私のお尻にぴったりくっついてくること。
その半ズボンの前が硬くなっていて、ときどき尻の肉に当たるのが嫌すぎる。
「ちょっと、そんなにくっつかないでよ! 歩きにくくてしょうがないでしょ!」
「だってここ、おっかないんだもん」
「なに急に幼児返りしてるのよ。ちんぽこ勃ててるくせに!」
「だって翔子、身体中からいい匂いがするんだもん」
くっそー、早くお風呂に入りてえー。
このガキに体臭嗅がれるのはもうまっぴらだ。
と、ラルクが突如として足を止めた。
「棺桶だ」
厳かな声でつぶやいた。
「おそらくこの墳墓の王のものに間違いないだろう」
「マジですか」
ラルクの肩越しに前方をのぞき込む。
確かにあった。
かなりでかい。
前方後円墳みたいな形をしている。
凝った金細工で縁どられた、特大の棺桶である。
その蓋の上に乗っているのは、剣だろうか。
「すっげー! お宝みっけ!」
一平が歓声を上げた。
瞬間、嫌な予感がした。
そして、予感は当たった。
「いっただきィ!」
私とラルクの脇をすり抜け、一平が前に飛び出したのだ。
そこに、奇妙なものが整列していた。
等身大の人形である。
人形といっても、粘土を焼いてつくった埴輪みたいなものだ。
それが、列を成して、はるかかなたまで整然と並んでいるのだった。
その数、何千体とあるだろうか。
格好はさまざまだ。
が、よく見ると、武器を手にした男の像がほとんどだった。
つまり、これは全部、兵士なのだ。
墓の主を守る、兵士たちの大軍団なのである。
「へ、へんなもんがいっぱいある。なんだよ? あれ」
私の隣で身を起こした一平が言った。
「兵馬俑だと思う。たぶん」
「へいばよう? なんだそれ?」
私の言葉にゲジゲジ眉をひそめて一平が訊き返す。
「私の居た世界にも、これと同じようなものがあるの。中国って国のね、始皇帝って王様のお墓には、何千っていう数の兵士や馬の人形がおさめられていて、王様を今でも守ってるんだって」
確か、西安だったと思う。
兵馬俑は観光スポットにもなっていて、一般公開もされていたはずだ。
しかも一か所ではなく、数か所に分かれていたはず。
「よく知ってるな。確かにこれは兵馬俑だ。翔子、ただのエロ魔導士かと思っていたが、見直したぞ」
ラルクが褒めてくれたけど、別にうれしくもなんともない。
兵馬俑なんて、中学校の歴史の教科書に写真入りで出ているからだ。
「なんでもいいけど、なんだか無茶やばそうな雰囲気だよね」
ソフィアがぞくっと身を震わせた。
隙なく大剣グランディルを構えているのは、さすが戦士というべきだろう。
「別に恐れることはない。ここにあるのはすべて泥人形だ。泥人形が動くはずないからな」
ラルクはひょうひょうとした足取りで石段を降りていく。
「とにかく、別の出口を探してみよう。うまくいけば、須弥山に近い側の隧道が見つかるかもしれん」
仕方なく、私たちも後に従うことにした。
いくら気持ち悪くても、ラルクの言う通り、ここを抜けないことにはらちが明かないのだから仕方がない。
4人縦に並んで、人形に挟まれた中央の通路を歩いた。
あえて真ん中を選んだのは、そこが一番広い道だったからである。
どういう仕組みなのか、人形たちの間には等間隔でぼうっと光る光源があり、そのため足元は薄明るい。
この世界特有のエネルギー源、例の魔輝石が使ってあるのかもしれない。
列は、今度はラルクが先頭、次が私、その後ろが一平、しんがりがソフィアという順だった。
鬱陶しいのは、一平が、まるで車間距離を取らず、私のお尻にぴったりくっついてくること。
その半ズボンの前が硬くなっていて、ときどき尻の肉に当たるのが嫌すぎる。
「ちょっと、そんなにくっつかないでよ! 歩きにくくてしょうがないでしょ!」
「だってここ、おっかないんだもん」
「なに急に幼児返りしてるのよ。ちんぽこ勃ててるくせに!」
「だって翔子、身体中からいい匂いがするんだもん」
くっそー、早くお風呂に入りてえー。
このガキに体臭嗅がれるのはもうまっぴらだ。
と、ラルクが突如として足を止めた。
「棺桶だ」
厳かな声でつぶやいた。
「おそらくこの墳墓の王のものに間違いないだろう」
「マジですか」
ラルクの肩越しに前方をのぞき込む。
確かにあった。
かなりでかい。
前方後円墳みたいな形をしている。
凝った金細工で縁どられた、特大の棺桶である。
その蓋の上に乗っているのは、剣だろうか。
「すっげー! お宝みっけ!」
一平が歓声を上げた。
瞬間、嫌な予感がした。
そして、予感は当たった。
「いっただきィ!」
私とラルクの脇をすり抜け、一平が前に飛び出したのだ。
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