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#77 たったひとつの冴えたやり方
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「どうするの? 外には出られないよ?」
ソフィアの顔には怯えの色が浮かんでいる。
それはおそらく、私も同様だったはずだ。
空を埋め尽くす人面鳥の大群。
そんな中にのこのこ出て行ったら、間違いなく命はない。
「誰も外に出るとは言っていない」
ラルクはなぜか、余裕の表情だ。
他の3人がビビッて今にもちびりそうなのに、ひとりだけ泰然自若の構えである。
「いいか、考えてもみろ。この遺跡、何だと思う?」
「古墳じゃないの? つまり、古代の王とか豪族のお墓」
元居た世界の石舞台古墳を思い出して、私は言った。
屋根の代わりに乗っかった巨大な一枚岩といい、この構造物をつくるのにはおそらく大人数の人手がかかっているはずだ。
こんな奇妙な形のものが、自然にできたとはとても考えられない。
「そうだ。かつてこの地を支配していた権力者の墳墓。それに間違いない」
「だったらどうなんだ? ここが墓だとして、それがどうしておいらたちのプラスになるってんだ?」
一平が馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「墓というからには、玄室がある。玄室からは、複数の隧道が伸びていて、別の場所につながっている可能性が高いんだ」
「玄室?」
「棺桶の置いてある部屋だよ。見ての通り、ここには何もない。ならば、地下に別の隠し部屋があるはずだろう? 肝心のお棺のない墓なんて、意味ないからな」
「つまり、この空間のどこかに、その玄室に降りる隧道の入口があるってことだね?」
私の指摘に、重々しくラルクがうなずいた。
「その通り。たぶん、この奥だ。ほら、あそこに石が積み重なっている部分があるだろう。たぶん、あの石をどかせば、トンネルが現れるんじゃないかな」
なるほど、ラルクの言う通りだった。
私たちのいる空間は、奥に行くほど天井が低くなっていて、突き当りは丸い石の山である。
あれは地下へのトンネルの入り口を隠すためのカモフラージュだというわけか。
「ってことは、その玄室とやらに行けば、王様のお宝が手に入るかもしれないってことだな」
一平がひくひく鼻をうごめかした。
またよからぬことを企んでいるに違いない。
「やめてよ。私たちは泥棒に入ったんじゃないんだから。そんなことして、呪われたらどうするの?」
目を怒らせて、一平をにらむソフィア。
「呪い? ぶは、ありえねー」
一平が笑い出した。
「そんなもん、あるわけねーよ。 だいたい、この墓、できてから何百年何千年って経ってるわけだろ? もし呪いなんてものが存在したとしても、とっくの昔に消えちまってるさ」
「それはどうかな。とにかく、ここは神聖な場所であることは間違いない。ソフィアの言う通り、あまり悪さはしないほうがいいだろう」
「あ、この石、動くよ」
突き当りまで這って行って、試しに丸石に手をかけてみた私は、思わず叫んでいた。
石はどれもぐらぐらして、簡単に取り除けられそうだ。
これは本当に、地下トンネルの入口かも。
「よっしゃ。おいらも手伝うよ。早くしないと化け物どもが入ってくる。急ごうぜ」
一平が隣にやってきた。
「じゃ、私は入り口を見張ってる。入ってくるやつがいたらこのグランディルであの世に送ってやるわ」
狭い空間で大剣を構えながら、ソフィアが言った。
確かに、気のせいか、外の鳴き声は近づいてきているようだ。
これは、一刻の猶予もないかも。
「じゃ、みんながんばってくれ。私はもうひと眠りすることにしよう。トンネルが現れたら、起こしててくれればいい」
隅に丸くなると、ラルクがすやすや寝息を立て始めた。
ありえないやつ。
あきれてものが言えないとはこのことだ。
肝が据わっているのか無神経なのか。
あるいは単なる馬鹿なのか。
ふつう、この場面で二度寝するかな?
ソフィアの顔には怯えの色が浮かんでいる。
それはおそらく、私も同様だったはずだ。
空を埋め尽くす人面鳥の大群。
そんな中にのこのこ出て行ったら、間違いなく命はない。
「誰も外に出るとは言っていない」
ラルクはなぜか、余裕の表情だ。
他の3人がビビッて今にもちびりそうなのに、ひとりだけ泰然自若の構えである。
「いいか、考えてもみろ。この遺跡、何だと思う?」
「古墳じゃないの? つまり、古代の王とか豪族のお墓」
元居た世界の石舞台古墳を思い出して、私は言った。
屋根の代わりに乗っかった巨大な一枚岩といい、この構造物をつくるのにはおそらく大人数の人手がかかっているはずだ。
こんな奇妙な形のものが、自然にできたとはとても考えられない。
「そうだ。かつてこの地を支配していた権力者の墳墓。それに間違いない」
「だったらどうなんだ? ここが墓だとして、それがどうしておいらたちのプラスになるってんだ?」
一平が馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「墓というからには、玄室がある。玄室からは、複数の隧道が伸びていて、別の場所につながっている可能性が高いんだ」
「玄室?」
「棺桶の置いてある部屋だよ。見ての通り、ここには何もない。ならば、地下に別の隠し部屋があるはずだろう? 肝心のお棺のない墓なんて、意味ないからな」
「つまり、この空間のどこかに、その玄室に降りる隧道の入口があるってことだね?」
私の指摘に、重々しくラルクがうなずいた。
「その通り。たぶん、この奥だ。ほら、あそこに石が積み重なっている部分があるだろう。たぶん、あの石をどかせば、トンネルが現れるんじゃないかな」
なるほど、ラルクの言う通りだった。
私たちのいる空間は、奥に行くほど天井が低くなっていて、突き当りは丸い石の山である。
あれは地下へのトンネルの入り口を隠すためのカモフラージュだというわけか。
「ってことは、その玄室とやらに行けば、王様のお宝が手に入るかもしれないってことだな」
一平がひくひく鼻をうごめかした。
またよからぬことを企んでいるに違いない。
「やめてよ。私たちは泥棒に入ったんじゃないんだから。そんなことして、呪われたらどうするの?」
目を怒らせて、一平をにらむソフィア。
「呪い? ぶは、ありえねー」
一平が笑い出した。
「そんなもん、あるわけねーよ。 だいたい、この墓、できてから何百年何千年って経ってるわけだろ? もし呪いなんてものが存在したとしても、とっくの昔に消えちまってるさ」
「それはどうかな。とにかく、ここは神聖な場所であることは間違いない。ソフィアの言う通り、あまり悪さはしないほうがいいだろう」
「あ、この石、動くよ」
突き当りまで這って行って、試しに丸石に手をかけてみた私は、思わず叫んでいた。
石はどれもぐらぐらして、簡単に取り除けられそうだ。
これは本当に、地下トンネルの入口かも。
「よっしゃ。おいらも手伝うよ。早くしないと化け物どもが入ってくる。急ごうぜ」
一平が隣にやってきた。
「じゃ、私は入り口を見張ってる。入ってくるやつがいたらこのグランディルであの世に送ってやるわ」
狭い空間で大剣を構えながら、ソフィアが言った。
確かに、気のせいか、外の鳴き声は近づいてきているようだ。
これは、一刻の猶予もないかも。
「じゃ、みんながんばってくれ。私はもうひと眠りすることにしよう。トンネルが現れたら、起こしててくれればいい」
隅に丸くなると、ラルクがすやすや寝息を立て始めた。
ありえないやつ。
あきれてものが言えないとはこのことだ。
肝が据わっているのか無神経なのか。
あるいは単なる馬鹿なのか。
ふつう、この場面で二度寝するかな?
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