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#59 名状しがたいやつら
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私の太腿に貼りついたのは、ひしゃげた包茎の陰茎みたいな、茶色の気味の悪い生き物だった。
「気をつけろ! そいつは一度吸いついたら満腹になるまで離れない!」
ラルクの声をかき消すように草むらがざわめき、びゅんびゅんと茶色いやつが私めがけて飛んでくる。
「くう、こうなったら、愛液ローション!」
MPの残量が心もとなかったが、イチかバチか、やってみた。
とたんに全身の毛穴から透明な体液が噴き出して、肌という肌を覆い尽くしていく。
助かった。
まだ少しはMPが残っていたようだ。
一張羅のセーラー服が多少汚れるが、仕方がない、
先端の丸い口で太腿に食いつきかけていたチンコみたいなやつが、ローションに流されてつるんと落ちていく。
小型ミサイルの群れみたいに一斉に飛びかかってきた他のやつも、みんなそうだった。
私の肌に歯を立てる前に、パラパラと地面に落ちていってしまうのだ。
「ね、なんなのよ、こいつら? なんで私にだけ飛びついてくるの?」
なおも道端から飛んでくるキモイやつらを片手ではたき落としながら、私は叫んだ。
「わからないか? そいつらはヒルの一種だ。ああして草に偽装して、ゆらゆら揺れながら、獲物が通りかかるのを今か今かと待ち構えているのさ。一度腹いっぱい血を吸ったら、半年は飲まず食わずで生きられるというタフな生き物だ」
「ヒルって、あの、血を吸うナメクジみたいなの? あれって田んぼや沼に居るんじゃなかったの?」
「ヤマビルの類は完全な陸棲さ。木の上から落ちてくるタイプもいるから注意しろ」
「でも、なんで私なの? ラルクやソフィアはどうして平気なわけ?」
「やつらは嫌煙家なんでね。喫煙者である俺は襲わない。ソフィアは露出度が高そうに見えるが、手足はほぼ透明なストッキングでガードしている。生足で二酸化炭素をさかんに放出してるのは。おまえだけというわけさ」
そうだった。
蚊にしろ何にしろ、吸血生物は人間の排出する二酸化炭素に引き寄せられてくると聞いたことがある。
愛液ローションで遅まきながら防御を固めたものの、道の両側に延々と続くヤマビルの群生の間を駆け抜けるのは、正直気持ちのいいものではなかった。
更にキモイのは、ラルクの言うように木の上から落ちてくるやつで、これが胸の谷間に挟まるともう大変だった。
ローション効果でじきに下に滑り落ちるのはいいのだが、その先が私のセーラー服の中なのである。
しぶといやつは、腰のところからスカートの中まで入り込んでくるのだ。
一匹などはパンティの中までもぐりこんできて、私は危うく馬上で卒倒するところだった。
疾走する便所コオロギの上でそんなふうに四苦八苦していると、先を駆けていたソフィアが声をかけてきた。
「もうすぐ森が切れるよ! 翔子、頑張って!」
「気をつけろ! そいつは一度吸いついたら満腹になるまで離れない!」
ラルクの声をかき消すように草むらがざわめき、びゅんびゅんと茶色いやつが私めがけて飛んでくる。
「くう、こうなったら、愛液ローション!」
MPの残量が心もとなかったが、イチかバチか、やってみた。
とたんに全身の毛穴から透明な体液が噴き出して、肌という肌を覆い尽くしていく。
助かった。
まだ少しはMPが残っていたようだ。
一張羅のセーラー服が多少汚れるが、仕方がない、
先端の丸い口で太腿に食いつきかけていたチンコみたいなやつが、ローションに流されてつるんと落ちていく。
小型ミサイルの群れみたいに一斉に飛びかかってきた他のやつも、みんなそうだった。
私の肌に歯を立てる前に、パラパラと地面に落ちていってしまうのだ。
「ね、なんなのよ、こいつら? なんで私にだけ飛びついてくるの?」
なおも道端から飛んでくるキモイやつらを片手ではたき落としながら、私は叫んだ。
「わからないか? そいつらはヒルの一種だ。ああして草に偽装して、ゆらゆら揺れながら、獲物が通りかかるのを今か今かと待ち構えているのさ。一度腹いっぱい血を吸ったら、半年は飲まず食わずで生きられるというタフな生き物だ」
「ヒルって、あの、血を吸うナメクジみたいなの? あれって田んぼや沼に居るんじゃなかったの?」
「ヤマビルの類は完全な陸棲さ。木の上から落ちてくるタイプもいるから注意しろ」
「でも、なんで私なの? ラルクやソフィアはどうして平気なわけ?」
「やつらは嫌煙家なんでね。喫煙者である俺は襲わない。ソフィアは露出度が高そうに見えるが、手足はほぼ透明なストッキングでガードしている。生足で二酸化炭素をさかんに放出してるのは。おまえだけというわけさ」
そうだった。
蚊にしろ何にしろ、吸血生物は人間の排出する二酸化炭素に引き寄せられてくると聞いたことがある。
愛液ローションで遅まきながら防御を固めたものの、道の両側に延々と続くヤマビルの群生の間を駆け抜けるのは、正直気持ちのいいものではなかった。
更にキモイのは、ラルクの言うように木の上から落ちてくるやつで、これが胸の谷間に挟まるともう大変だった。
ローション効果でじきに下に滑り落ちるのはいいのだが、その先が私のセーラー服の中なのである。
しぶといやつは、腰のところからスカートの中まで入り込んでくるのだ。
一匹などはパンティの中までもぐりこんできて、私は危うく馬上で卒倒するところだった。
疾走する便所コオロギの上でそんなふうに四苦八苦していると、先を駆けていたソフィアが声をかけてきた。
「もうすぐ森が切れるよ! 翔子、頑張って!」
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