50 / 246
#49 謎の遺跡
しおりを挟む
結局その日は、ラルクが持ってきた塩で更に縮んだスライムを、パンにはさんで食べて寝た。
食塩を振ったスライムは、イカの塩辛みたいで悪くなかったが、なにぶん量が多すぎて気持ち悪くなった。
翌朝目を覚ますと、ソフィアはすでに戦闘服に着替えていて、ラルクは荷造りの真っ最中だった。
「これからどうするの? まさか歩くんじゃ?」
寝ぼけまなこで訊くと、
「そのまさかだ。密林には砂エイもいないし、馬車も人力車もないからな」
という、にべもない返事がラルクから帰ってきた。
「ああ、ワープ装置がほしい」
嘆いてみたが、どうにもならない。
朝食は、きのうのスライムの残りで、今度はスープの具にされていた。
スープの具になったスライムは、おすましに入っている「ふ」みたいで、何の味もしなかった。
まだ塩辛の方がましか。
そう思いつつ、味気ないスープをすすった。
ラルクにテントを背負わせ、私とソフィアで小物を分担して、出発した。
正直、セーラー服で密林を歩くのは辛かった。
世界全体が湿っぽく、蚊だのアブだのが半端なくそこらを飛んでいるので、気を許すとすぐに刺されてしまうのだ。
MPが無駄だけど、しかたなく、愛液ローションの魔法を発動して全身の皮膚をガードし、私は難をしのぐことにした。
もうひとつ、やっかいなのは肩こりだった。
巨乳に生まれ変わって初めてわかったのだが、乳というものは意外に重い。
バスト90越えともなると、おそらく片方の乳房だけで1キログラムはあるに違いない。
つまり、私は2キロの米袋を首から下げて歩いているようなもので、時間が経つと肩が凝って仕方ないのだ。
ふうふう言いながら歩いていると、
「翔子、辛そうだね。荷物持とうか」
そう、ソフィアが優しく声をかけてくれた。
が、重いのは荷物ではなく乳房なので、やんわりと辞退した。
まさかおっぱいを持ってもらうわけにもいかないからだ。
幸いにも私に輪をかけてラルクはひ弱だった。
おかげで1時間ごとに休憩をとることができ、行軍は死ぬほどつらいというほどではなくなった。
夕方近くまで歩いた時である。
開けた空き地を見つけて、私たちは小躍りした。
そろそろ野営の準備にかからねば、と思っていたところだったからである。
が、偵察に出かけたラルクが青い顔をして戻ってきた。
「様子がおかしい。変な遺跡みたいなものがある」
「遺跡? こんなジャングルの中に?」
木陰から覗いてみると、確かに広場の中央に高い塔のようなものがそびえ立っていた。
ピラミッドをもっと急角度にしたような、そう、元の世界にあったパラソルチョコみたいな感じである。
「遺跡というより、蟻塚みたいだね」
ソフィアが言った。
「これが蟻塚なら、どんだけでかいアリなのよ?」
私が素朴な疑問を口にした時である。
「あれがそうじゃないか?」
ラルクが声を潜めて、左方向を顎でしゃくってみせた。
見ると、密林から何か出てくるところだった。
二息歩行の生き物だ。
パッと見、ガスマスクをつけた人間みたいに見える。
「なんでガスマスク? 天然ガスでも掘ってるのかしら?」
私の感想に、
「ガスマスクじゃないっぽいよ」
と、ソフィアが異論を唱えた。
「あれは、ああいう顔なんだよ。つまり、アリ人間だね」
「げ、アリ人間?」
なるほど。
ゴーグルに見えたのは、複眼だったというわけか。
黒いゴムのボディスーツに見えるのは、キチン質に覆われた外骨格というわけだろう。
「逃げたほうがいいね」
私が言った時である。
「もう、遅い」
背後を振り向いて、ラルクが答えた。
「どうやら囲まれてしまったらしい」
「マジか」
私は落胆せざるを得なかった。
いったい、いつになったら、平和が訪れるのだろう。
ふとそう思ったからだった。
食塩を振ったスライムは、イカの塩辛みたいで悪くなかったが、なにぶん量が多すぎて気持ち悪くなった。
翌朝目を覚ますと、ソフィアはすでに戦闘服に着替えていて、ラルクは荷造りの真っ最中だった。
「これからどうするの? まさか歩くんじゃ?」
寝ぼけまなこで訊くと、
「そのまさかだ。密林には砂エイもいないし、馬車も人力車もないからな」
という、にべもない返事がラルクから帰ってきた。
「ああ、ワープ装置がほしい」
嘆いてみたが、どうにもならない。
朝食は、きのうのスライムの残りで、今度はスープの具にされていた。
スープの具になったスライムは、おすましに入っている「ふ」みたいで、何の味もしなかった。
まだ塩辛の方がましか。
そう思いつつ、味気ないスープをすすった。
ラルクにテントを背負わせ、私とソフィアで小物を分担して、出発した。
正直、セーラー服で密林を歩くのは辛かった。
世界全体が湿っぽく、蚊だのアブだのが半端なくそこらを飛んでいるので、気を許すとすぐに刺されてしまうのだ。
MPが無駄だけど、しかたなく、愛液ローションの魔法を発動して全身の皮膚をガードし、私は難をしのぐことにした。
もうひとつ、やっかいなのは肩こりだった。
巨乳に生まれ変わって初めてわかったのだが、乳というものは意外に重い。
バスト90越えともなると、おそらく片方の乳房だけで1キログラムはあるに違いない。
つまり、私は2キロの米袋を首から下げて歩いているようなもので、時間が経つと肩が凝って仕方ないのだ。
ふうふう言いながら歩いていると、
「翔子、辛そうだね。荷物持とうか」
そう、ソフィアが優しく声をかけてくれた。
が、重いのは荷物ではなく乳房なので、やんわりと辞退した。
まさかおっぱいを持ってもらうわけにもいかないからだ。
幸いにも私に輪をかけてラルクはひ弱だった。
おかげで1時間ごとに休憩をとることができ、行軍は死ぬほどつらいというほどではなくなった。
夕方近くまで歩いた時である。
開けた空き地を見つけて、私たちは小躍りした。
そろそろ野営の準備にかからねば、と思っていたところだったからである。
が、偵察に出かけたラルクが青い顔をして戻ってきた。
「様子がおかしい。変な遺跡みたいなものがある」
「遺跡? こんなジャングルの中に?」
木陰から覗いてみると、確かに広場の中央に高い塔のようなものがそびえ立っていた。
ピラミッドをもっと急角度にしたような、そう、元の世界にあったパラソルチョコみたいな感じである。
「遺跡というより、蟻塚みたいだね」
ソフィアが言った。
「これが蟻塚なら、どんだけでかいアリなのよ?」
私が素朴な疑問を口にした時である。
「あれがそうじゃないか?」
ラルクが声を潜めて、左方向を顎でしゃくってみせた。
見ると、密林から何か出てくるところだった。
二息歩行の生き物だ。
パッと見、ガスマスクをつけた人間みたいに見える。
「なんでガスマスク? 天然ガスでも掘ってるのかしら?」
私の感想に、
「ガスマスクじゃないっぽいよ」
と、ソフィアが異論を唱えた。
「あれは、ああいう顔なんだよ。つまり、アリ人間だね」
「げ、アリ人間?」
なるほど。
ゴーグルに見えたのは、複眼だったというわけか。
黒いゴムのボディスーツに見えるのは、キチン質に覆われた外骨格というわけだろう。
「逃げたほうがいいね」
私が言った時である。
「もう、遅い」
背後を振り向いて、ラルクが答えた。
「どうやら囲まれてしまったらしい」
「マジか」
私は落胆せざるを得なかった。
いったい、いつになったら、平和が訪れるのだろう。
ふとそう思ったからだった。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる