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#38 発動! サポートジョブ
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振動が近づいてくる。
彼方の空は、怪物の噴き上げる砂塵で、墨を流したように暗い。
進行速度は時速15キロくらいだろうか。
身体が大きくて砂に半分もぐっているせいか、タコの怪物の歩みは意外とゆっくりだ。
しかし、のんびりしてはいられない。
「早く行って」
ソフィアが私の背を推した。
「私、テントに戻って装備を取ってくる。翔子はその間にレベル上げを」
「俺も行こう。テントが心配だ。砂エイが戻ってきたら、すぐに飛べるようにしておく必要があるからな」
適当な理由をつけて、ラルクも行ってしまった。
しかたない。
ひとり取り残された私は、観光客やら行商人やらがひしめく、ひと際大きな建物に向かうことにした。
建物といってもそれは、ヤシの木やシュロの葉でつくった掘立小屋みたいな代物で、他の屋台と比べて多少ましという程度である。
速攻で組み立てた海の家とでも言おうか。
「こんにちは」
ヤシの葉っぱでつくったカーテンをかき分けて中に入ると、私はせいいっぱい明るく声をかけた。
なんだおまえは?
ってな感じで、20人ほど集まった男女が一斉に私のほうを見る。
「ちょっとお願いがあるんですけど」
思い切ってそう切り出すと、この海の家の主人らしき太った中年女が、ぎょろりとした団栗まなこで、いぶかしげに睨んできた。
「こんな大変な時にお願いだって? あんた、気は確かかい?」
「待て。その格好は」
横から口をはさんだのは、頭にターバンを巻いたインド人みたいな黒い男である。
「この女、噂のあのエロ魔導士だぞ」
エロ魔導士?
なんだって?
初めて見た!
すごい乳だな。
でかい。
でかすぎる。
太腿ムチムチだし。
脚も長いし。
いいケツしてるねえ。
あの水着見ろよ。
なんか色々はみ出てるぞ。
はあ、確かにエロいわ。
た、たまらん。
や、やりてえ。
おらもだ。
たちまち、あちこちから声が上がり始めた。
「そ、そんな、宮廷直属の魔導士であるエロ魔導士が、なんでここに…?」
太った女主人が、信じられないといったふうに目を見開いた。
「えーっと、細かいことはまた後で」
私は高校の時一度だけ出場した弁論大会のことを思い出しながら、下腹に力を込めて言った。
「みなさんに、レベル上げを手伝ってほしいんです。あの怪物を倒すためには、あと「1」、レベルを上げなきゃならないんです」
そう。
レベル32になれば、遠隔攻撃である『乳首ミサイル』が使えるのだ。
「手伝うって、どうすりゃいいんだい?」
おかみさんが訊く。
「私を、その、気持ちよくさせてほしいんです」
首の付け根まで赤くなって、私は言った。
「はあ?」
目を剥くおかみさん。
「体に触ったり、揉んだり、舐めたり、色々してほしいんです」
私の言葉に、会場のざわめきが大きくなる。
「あんた、変態かい?」
「いや、違うな」
横からまたあのターバン男が口をはさんだ。
「エロ魔導士の経験値は、戦闘ではなく、性体験で増えると聞いたことがある。この娘はおそらくそれを言っているのだろう」
「しかし、すぐそこに魔物が迫ってるってのに、そんな気になれる男がいるかねえ」
疑わしげに一同を見渡すおかみさん。
「しかたありません」
勝手に言葉が口をついて出た。
頭の中で、音楽が鳴り始めていた。
「見ててください。私がその気にさせてみせますから」
意思にかかわらず、手足が動き始める。
ん?
なに?
このフラダンスみたいな動きは?
「お、踊り子だ」
誰かがつぶやくのが聞こえてきた。
「この女、サポに踊り子、つけてるぞ」
彼方の空は、怪物の噴き上げる砂塵で、墨を流したように暗い。
進行速度は時速15キロくらいだろうか。
身体が大きくて砂に半分もぐっているせいか、タコの怪物の歩みは意外とゆっくりだ。
しかし、のんびりしてはいられない。
「早く行って」
ソフィアが私の背を推した。
「私、テントに戻って装備を取ってくる。翔子はその間にレベル上げを」
「俺も行こう。テントが心配だ。砂エイが戻ってきたら、すぐに飛べるようにしておく必要があるからな」
適当な理由をつけて、ラルクも行ってしまった。
しかたない。
ひとり取り残された私は、観光客やら行商人やらがひしめく、ひと際大きな建物に向かうことにした。
建物といってもそれは、ヤシの木やシュロの葉でつくった掘立小屋みたいな代物で、他の屋台と比べて多少ましという程度である。
速攻で組み立てた海の家とでも言おうか。
「こんにちは」
ヤシの葉っぱでつくったカーテンをかき分けて中に入ると、私はせいいっぱい明るく声をかけた。
なんだおまえは?
ってな感じで、20人ほど集まった男女が一斉に私のほうを見る。
「ちょっとお願いがあるんですけど」
思い切ってそう切り出すと、この海の家の主人らしき太った中年女が、ぎょろりとした団栗まなこで、いぶかしげに睨んできた。
「こんな大変な時にお願いだって? あんた、気は確かかい?」
「待て。その格好は」
横から口をはさんだのは、頭にターバンを巻いたインド人みたいな黒い男である。
「この女、噂のあのエロ魔導士だぞ」
エロ魔導士?
なんだって?
初めて見た!
すごい乳だな。
でかい。
でかすぎる。
太腿ムチムチだし。
脚も長いし。
いいケツしてるねえ。
あの水着見ろよ。
なんか色々はみ出てるぞ。
はあ、確かにエロいわ。
た、たまらん。
や、やりてえ。
おらもだ。
たちまち、あちこちから声が上がり始めた。
「そ、そんな、宮廷直属の魔導士であるエロ魔導士が、なんでここに…?」
太った女主人が、信じられないといったふうに目を見開いた。
「えーっと、細かいことはまた後で」
私は高校の時一度だけ出場した弁論大会のことを思い出しながら、下腹に力を込めて言った。
「みなさんに、レベル上げを手伝ってほしいんです。あの怪物を倒すためには、あと「1」、レベルを上げなきゃならないんです」
そう。
レベル32になれば、遠隔攻撃である『乳首ミサイル』が使えるのだ。
「手伝うって、どうすりゃいいんだい?」
おかみさんが訊く。
「私を、その、気持ちよくさせてほしいんです」
首の付け根まで赤くなって、私は言った。
「はあ?」
目を剥くおかみさん。
「体に触ったり、揉んだり、舐めたり、色々してほしいんです」
私の言葉に、会場のざわめきが大きくなる。
「あんた、変態かい?」
「いや、違うな」
横からまたあのターバン男が口をはさんだ。
「エロ魔導士の経験値は、戦闘ではなく、性体験で増えると聞いたことがある。この娘はおそらくそれを言っているのだろう」
「しかし、すぐそこに魔物が迫ってるってのに、そんな気になれる男がいるかねえ」
疑わしげに一同を見渡すおかみさん。
「しかたありません」
勝手に言葉が口をついて出た。
頭の中で、音楽が鳴り始めていた。
「見ててください。私がその気にさせてみせますから」
意思にかかわらず、手足が動き始める。
ん?
なに?
このフラダンスみたいな動きは?
「お、踊り子だ」
誰かがつぶやくのが聞こえてきた。
「この女、サポに踊り子、つけてるぞ」
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