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#35 オアシス21
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砂エイの乗り心地は、快適だった。
驚くほど揺れが少なく、まるで新幹線のグリーン車みたいに静かなのである。
しかもテントは3連式になっていて、ひとりひとりに個室が割り当てられていた。
ラクダにつながれた狭い馬車の中で、3人膝を突き合わせて旅するさまを想像していただけに、これは予想外の驚きであるといえた。
私はラルクをちょっぴり見直した。
ものぐさな性格がプラス方向に働くこともあるという、ひとつの良い見本だろう。
ただ、困るのは、砂漠というのはどこを見ても、ずっと同じ景色が続いているだけ、という点である。
テントの窓から景色を眺めてみても、そこにあるのは延々と広がる黄土色の砂の海。
そしてぎらぎら光る空。
それだけなのだ。
丸一日飛んでいると、さすがに退屈になってきた。
暇つぶしにゲームをしようにも、ここにはスマホも3DSもない。
仕方なく、操縦席を覗いてみることにした。
先頭にあるラルクのテントがそのまま操縦席につながっていて、カーテンをかき分けて顔を出すと、エイの頭の上のコクピットでラルクがあぐらをかいていた。
操縦桿らしきものも舵輪らしきものも何もなく、ラルクはただ腕組みしてじっと座っているだけである。
「これって自動操縦なの?」
私が訊くと、
「わ! びっくりした!」
ラルクが新興宗教のインチキ教祖の空中浮遊みたいな感じで、座ったままぴょんと数センチ飛び上がった。
「な、なんだ、エロ魔導士か。そのでかパイで私を誘惑しようとしても、そうはいかんぞ」
「このくそ暑いのに、誰がそんなこと」
私が隣に大きなお尻をねじ込ませると、
「や、やめろ! 私はだまされんぞ! おまえのおまんことアナルは罠だ! 誰がセックスなどしてやるもんか」
私がトロルを倒す時使った”ヴァギナカッター”と”アナルシュレッダー”。
あのエログロシーンが、この優男の中にトラウマを植えつけたに違いない。
「だから、違いますって」
私はため息をついた。
「退屈だから、話を聞きに来ただけですよ」
「なんだ、そうか。それならそうと、早く言え」
こほんとわざとらしい咳払いをして、居住まいを正すラルク。
「ちなみにこの砂エイは何もしなくても目的地に飛んでいく。イルカ並みに賢いから、人間の言葉がわかるのだ」
ていうか、それを私は訊きたかっただけなんだって。
「ふーん、それで、餌はどうするの? もう1日以上飛び続けてるけど、おなか空かないのかしら?」
「餌はこの砂漠に済む砂ヤドカリや砂モグリだ。こいつは3日に一度食事をするから、あさってには一度捕食のために着陸する。ちょうどいいオアシスがあるから、我々もそこで休憩を取る予定さ」
「オアシス21だね!」
さっとカーテンが開いて、顔をのぞかせたのはソフィアである。
「やったね! 翔子! オアシス21にはね、大きな流水プールがあるんだよ! ねえ、ラルク、備品で頼んだ私たちの水着、忘れてないよね?」
流水プール?
水着?
砂漠なのに?
ていうか、その前に、私たち、魔王を倒す冒険の最中じゃなかったの?
「もちろん買ってあるさ。恥を忍んでね。村で一番エロいのを用意しておいたから、楽しみにしてろ」
「わあ! さっすが兄者! バトル以外ではほんと、頼りになるね!」
ソフィアのへんてこな誉め方に、思わず私はぷっと吹き出した。
確かにこのイケメン、いちばん向いているのは雑用係。
そう思ったからである。
驚くほど揺れが少なく、まるで新幹線のグリーン車みたいに静かなのである。
しかもテントは3連式になっていて、ひとりひとりに個室が割り当てられていた。
ラクダにつながれた狭い馬車の中で、3人膝を突き合わせて旅するさまを想像していただけに、これは予想外の驚きであるといえた。
私はラルクをちょっぴり見直した。
ものぐさな性格がプラス方向に働くこともあるという、ひとつの良い見本だろう。
ただ、困るのは、砂漠というのはどこを見ても、ずっと同じ景色が続いているだけ、という点である。
テントの窓から景色を眺めてみても、そこにあるのは延々と広がる黄土色の砂の海。
そしてぎらぎら光る空。
それだけなのだ。
丸一日飛んでいると、さすがに退屈になってきた。
暇つぶしにゲームをしようにも、ここにはスマホも3DSもない。
仕方なく、操縦席を覗いてみることにした。
先頭にあるラルクのテントがそのまま操縦席につながっていて、カーテンをかき分けて顔を出すと、エイの頭の上のコクピットでラルクがあぐらをかいていた。
操縦桿らしきものも舵輪らしきものも何もなく、ラルクはただ腕組みしてじっと座っているだけである。
「これって自動操縦なの?」
私が訊くと、
「わ! びっくりした!」
ラルクが新興宗教のインチキ教祖の空中浮遊みたいな感じで、座ったままぴょんと数センチ飛び上がった。
「な、なんだ、エロ魔導士か。そのでかパイで私を誘惑しようとしても、そうはいかんぞ」
「このくそ暑いのに、誰がそんなこと」
私が隣に大きなお尻をねじ込ませると、
「や、やめろ! 私はだまされんぞ! おまえのおまんことアナルは罠だ! 誰がセックスなどしてやるもんか」
私がトロルを倒す時使った”ヴァギナカッター”と”アナルシュレッダー”。
あのエログロシーンが、この優男の中にトラウマを植えつけたに違いない。
「だから、違いますって」
私はため息をついた。
「退屈だから、話を聞きに来ただけですよ」
「なんだ、そうか。それならそうと、早く言え」
こほんとわざとらしい咳払いをして、居住まいを正すラルク。
「ちなみにこの砂エイは何もしなくても目的地に飛んでいく。イルカ並みに賢いから、人間の言葉がわかるのだ」
ていうか、それを私は訊きたかっただけなんだって。
「ふーん、それで、餌はどうするの? もう1日以上飛び続けてるけど、おなか空かないのかしら?」
「餌はこの砂漠に済む砂ヤドカリや砂モグリだ。こいつは3日に一度食事をするから、あさってには一度捕食のために着陸する。ちょうどいいオアシスがあるから、我々もそこで休憩を取る予定さ」
「オアシス21だね!」
さっとカーテンが開いて、顔をのぞかせたのはソフィアである。
「やったね! 翔子! オアシス21にはね、大きな流水プールがあるんだよ! ねえ、ラルク、備品で頼んだ私たちの水着、忘れてないよね?」
流水プール?
水着?
砂漠なのに?
ていうか、その前に、私たち、魔王を倒す冒険の最中じゃなかったの?
「もちろん買ってあるさ。恥を忍んでね。村で一番エロいのを用意しておいたから、楽しみにしてろ」
「わあ! さっすが兄者! バトル以外ではほんと、頼りになるね!」
ソフィアのへんてこな誉め方に、思わず私はぷっと吹き出した。
確かにこのイケメン、いちばん向いているのは雑用係。
そう思ったからである。
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