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#33 サポジョブを装備せよ
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「こっちじゃ」
裸のまま、老人に導かれて更に店の奥に入ると、カラオケボックスみたいなのが2つ並んで立っていた。
「向かって左が魔法系、右がアタッカー系になっておる」
左側の箱の中に入ると、正面の壁にずらりとパネルが並んでいた。
そのひとつひとつに、幼稚園児が描いたようなへたくそな絵と、ジョブの名前が書いてある。
日本語ではないけれど、なんて書いてあるかわかるから不思議である。
「一番上に、『メイン』と『サポ』というパネルがあるだろう。その『サポ』のほうに、手を触れなさい」
ボックスの外から、店主が言った。
「『メイン』はジョブチェンジの時だけだから、決して触れてはならぬ。メインジョブを変えるとなると、DNAゲノムをすべて編集し直さねばならぬから、時間もかかるしめんどうだからな」
うは。
私はちょっと驚いた。
こんな中世っぽい世界で、まさか分子生物学用語を聞くとは思ってもみなかったからだ。
ともあれこれは、こっそり白魔導士にチェンジする、などといういたずら心を起こすなということなのだろう。
「『サポ』のパネルに触れたら、あとは簡単だ、自分のつけたいジョブを選んで、またそのパネルに触ればいい」
『踊り子』を探すと、すぐに見つかった。
ピンクのブタかと思ったら、描いてあるのはどうやら裸の女のようだ。
やっぱり。
手を伸ばしたものの、いささかためらった。
どう考えても、このイラストが表しているのは、かっこよく踊るダンサーではなく、ストリッパーの方だろう。
が、今更迷っても仕方なかった。
ええい! ままよ!
思い切って、ピンクの豚に指を触れた。
とたんに、天井から虹色の光が降りてきて、スポットライトのように私の全身をつつみ込んだ。
その間、10秒ほどだったろうか。
別に、痛くもかゆくもなかった。
光が消えると、
「完了じゃ」
また声がした。
「ふたりとも、出てきなさい」
カラオケボックスから出ると、白髭の老人と裸のソフィアが私を待っていた。
一流のアスリートを連想させる、引き締まったソフィアの裸身に目を当てる。
サポートジョブをつけたからといって、別段、外見に変化はないようだ。
ソフィアの全身がほんのり桜色に染まっているのは、先ほどのエア・クンニの名残りに違いない。
「どうしたら、サポがついたってわかるんですか?」
老店主に向かって、ソフィアがたずねた。
「なんにも実感わかないから、なんか詐欺みたい」
「詐欺とは失礼な」
老人が白い眉を吊り上げた。
「いずれ、戦いになって、その時が来たらわかるじゃろうて。嘘だと思ったら、ブレスレットでステータスを確かめてみるがよい」
そうだった。
私はソフィアにならって、例のリング以外にただひとつだけ身に着けていた左手のブレスレットの画面を、指でそっとなぞってみた。
ステータス表示が現れた。
メインジョブ:エロ魔導士
の項目の下に、ちゃんと、
サポートジョブ:踊り子
と出ていた。
「やったね」
ソフィアが破顔した。
「待ちに待ったサポジョブ竜騎士ゲット! あー、やっと一人前になれた気分」
「そうだね」
うなずきながら、私は深いため息をついた。
「でも、私はなんだか、前よりもっとエロくなった気分だよ」
#
裸のまま、老人に導かれて更に店の奥に入ると、カラオケボックスみたいなのが2つ並んで立っていた。
「向かって左が魔法系、右がアタッカー系になっておる」
左側の箱の中に入ると、正面の壁にずらりとパネルが並んでいた。
そのひとつひとつに、幼稚園児が描いたようなへたくそな絵と、ジョブの名前が書いてある。
日本語ではないけれど、なんて書いてあるかわかるから不思議である。
「一番上に、『メイン』と『サポ』というパネルがあるだろう。その『サポ』のほうに、手を触れなさい」
ボックスの外から、店主が言った。
「『メイン』はジョブチェンジの時だけだから、決して触れてはならぬ。メインジョブを変えるとなると、DNAゲノムをすべて編集し直さねばならぬから、時間もかかるしめんどうだからな」
うは。
私はちょっと驚いた。
こんな中世っぽい世界で、まさか分子生物学用語を聞くとは思ってもみなかったからだ。
ともあれこれは、こっそり白魔導士にチェンジする、などといういたずら心を起こすなということなのだろう。
「『サポ』のパネルに触れたら、あとは簡単だ、自分のつけたいジョブを選んで、またそのパネルに触ればいい」
『踊り子』を探すと、すぐに見つかった。
ピンクのブタかと思ったら、描いてあるのはどうやら裸の女のようだ。
やっぱり。
手を伸ばしたものの、いささかためらった。
どう考えても、このイラストが表しているのは、かっこよく踊るダンサーではなく、ストリッパーの方だろう。
が、今更迷っても仕方なかった。
ええい! ままよ!
思い切って、ピンクの豚に指を触れた。
とたんに、天井から虹色の光が降りてきて、スポットライトのように私の全身をつつみ込んだ。
その間、10秒ほどだったろうか。
別に、痛くもかゆくもなかった。
光が消えると、
「完了じゃ」
また声がした。
「ふたりとも、出てきなさい」
カラオケボックスから出ると、白髭の老人と裸のソフィアが私を待っていた。
一流のアスリートを連想させる、引き締まったソフィアの裸身に目を当てる。
サポートジョブをつけたからといって、別段、外見に変化はないようだ。
ソフィアの全身がほんのり桜色に染まっているのは、先ほどのエア・クンニの名残りに違いない。
「どうしたら、サポがついたってわかるんですか?」
老店主に向かって、ソフィアがたずねた。
「なんにも実感わかないから、なんか詐欺みたい」
「詐欺とは失礼な」
老人が白い眉を吊り上げた。
「いずれ、戦いになって、その時が来たらわかるじゃろうて。嘘だと思ったら、ブレスレットでステータスを確かめてみるがよい」
そうだった。
私はソフィアにならって、例のリング以外にただひとつだけ身に着けていた左手のブレスレットの画面を、指でそっとなぞってみた。
ステータス表示が現れた。
メインジョブ:エロ魔導士
の項目の下に、ちゃんと、
サポートジョブ:踊り子
と出ていた。
「やったね」
ソフィアが破顔した。
「待ちに待ったサポジョブ竜騎士ゲット! あー、やっと一人前になれた気分」
「そうだね」
うなずきながら、私は深いため息をついた。
「でも、私はなんだか、前よりもっとエロくなった気分だよ」
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